第百五十九話 ロキVSカルラ
――グレードⅠ ――ブラッドオブサクリファイス 一回戦第四試合 カルラ対ロキ
開始から30秒……
両者動かず
「(な、なんだ……。血の海なんて嘘なのか? 殺気どころか戦闘の意志を全く感じない。これじゃあ一般人に攻撃するみたいで手が出せない……)」
戸惑うロキ。
すると……
「あなた……」
「え!?」
「投降しなさい」
「な、何をいきなり……」
「あなた、ヒューマライズではないですね?」
「なっ……!!」
「心配ないです。このブーイングの中で私たちの会話なんて誰にも聞こえない」
「……そうだ……、と言ったら?」
「私は第一試合の彼の様に器用ではありません」
「答えになってない。……それに、あの残虐なやり方が器用?」
「残虐? 見ていなかったのですか? 彼は手を切り、足を切り……などといたぶりながらあのような勝ち方をしたのではないですよ? 開始と同時に瞬きをする一瞬で終わらせたのです」
「なっ……! いや、だったとしてもあそこまでする必要は……」
「あそこまで損傷が激しければ、たとえグレードⅠに出場できる程の個体であろうと再構築される事は無いでしょう。あの敗者は焼却処分となり、ここで終わりです」
「……何が言いたい?」
「私達は、体が動く限り殺戮を繰り返さねばならない……。人の快楽の為……、見世物の為に。あのカームという者は、そんな運命を背負わされた者を解放した」
「なっ……、お前……」
「私も想いは同じ……ですが、彼のように器用にはできません。あなたが、ヒューマライズでないのなら投降を……」
「……お前の気持ちは分かった。……でも降参はしない」
「……私は加減ができません。命令には逆らえませんので。……死にますよ?」
「やってみな!」
そう言うと相手の懐に飛び込むロキ。その瞬間、ブーイングが歓声に変わる。
「おおおっっーーーーと!!! 長い沈黙でしたが、R-6選手が飛び出したぁぁぁ!!」
ワァァァァ――
ザシュッ!! ザシュッ!! ザシュッ!!
飛び込んだ先で、複数の斬撃を喰らうロキ。
「っく!!」
「痛みで声を上げてしまえば、あなたが人間だとばれてしまいますよ? わざわざヒューマライズのフリなんてして、事情がお有りなのでしょう?」
「へへっ。初めて見たよこんな技」
「ステルストラップ。私の周りには無数の見えない罠が仕掛けてあります。斬る、抉る、捩じる、挽く、削る、千切る……触れればたちまち罠に引き寄せられ、修復不能な損傷を受ける……、はずですが……」
「ああ、危なかったよ。気づかずに突っ込んじゃったし。……でも、なんとかちょっと痛いくらいで済んだかな」
「あなた……相当……」
「今度は俺の番だ! 流燕楼斬空……からの~、砕破鑼心撃!!」
「おおーーーっと!! ダメージを受け、一度距離を取り直したR-6選手が今度は目にも止まらぬスピードで突進し、強烈な一撃を放ったぁぁぁーーー! 衝突の衝撃で二人の姿が見えません!! し、しかしこれは、さすがのカルラ選手も万事きゅ……」
シュー……――
砂煙が晴れる。
「い、いえ、これはすごい!! カルラ選手、あの強烈な一撃をダメージを追いながらも何とか受け止めています!!! あの細い腕のどこにこんな力がぁぁぁーーー?」
「へへっ! 罠だけじゃないじゃん!」
「なめないで下さい。私だって、グレードⅠの闘士です」
そして、そこから互いの得意技を交えた技の応酬と接近戦で激しくぶつかり合う二人。その力は拮抗し会場は大いに盛り上がる。
「(な、なんだろう? この気持ちは……。私、今、戦う事を楽しいと感じているのか……)」
しかし、その時は訪れた……。
「……カ、カルラ選手立ち上がれません!! 激しい長期戦を征したのは……、R‐6選手だーー!!」
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