第百五十八話 闘賭博グレードⅠ
――クインズコート
「一ヶ月あっという間でしたね」
「ああ、どうやら今回ファン投票でグレードⅠに出られるのはわしの弟子の中ではお主だけの様じゃ。まあ、第一関門突破といったところかの」
「はい。あとはここで優勝するだけですね」
「ここからが問題じゃ。グレードⅠとはグローサの隊員が出場するほどの大会じゃ。……まあ、幸い今回は出場は無いようじゃが、油断はするな」
そしてファンファーレと共に幕開けとなった――
MCにスポットライトが当てられ静かなトーンから始まる。
「待ちに待ったこの瞬間……。異次元の実力者たちによる頂上決戦……。さあ、刮目せよ……。ここまで生きて辿り着いた兵達の生き様……そして、死に様を……。グレードⅠ! ブラッドオブサクリファイス・イン・クインズコートォォォ!!! 実況は、私、イリア・リーナスが担当します」
ワァァァァァーーーー
「な、なんだこの異常な空気は……。これがグレードⅠか……。会場も今までの倍以上の広さだ」
会場の空気に圧倒されるロキを他所に、選手紹介が始まった。
「選手、入場!……まず、エントリーナンバー1は、今大会唯一の女性型ヒューマライズ。細い手足から繰り出されるとは思えない程の破壊力でどれだけの血の海を作った事か。容姿端麗×残酷無比……鮮血の魔女、カルラ・ロゼッタァァ!」
「うおーーー、カルラ―!!」
「エントリーナンバー2、過去グレードⅠ出場回数は驚異の8回、その強さはもはや説明不要。悲願の初優勝を狙う無冠の帝王……、クマダ・モトキィィ!」
「モトキー!! 特務隊以外ならお前が最強だーーー!!」
――
次々と登場する選手たち。そしていよいよ……
「続きまして、エントリーナンバー7、ノーダメージ&一撃必殺の完封優勝で鮮烈デビュー。僅かひと月でグレードⅡまでも征し絶賛人気上昇中の大型ルーキー……、アァァール-シィィクス!」
「大型ルーキー!! 期待してるぜー! このままグレードⅠも取っちまえー!!」
「そして、エントリーナンバー8、現在、特務隊グローサ入隊試験にて最終選考まで進出を果たした注目選手、特務隊の出場が無い今大会では優勝が最も期待される大本命……、カァァーム・サイレェェンス!」
「カームーーー!! 俺はお前に全てを賭けるぞー!」
「以上、8名で争われる今大会! 果たして優勝の栄冠は誰の手に!」
一旦控室に戻ったロキ。控室は一人一人に用意されおり、出場者以外にはセコンド一名の入室が許可されている。
「レイチェルさん、抽選結果貰ってきました。今回は第四試合。相手は、カルラって子みたいです」
「ここからは、グレードⅡとは違う。格段にレベルが上がるぞ。相手が女だからと油断すれば首を狩られる可能性もある。心して挑め」
「はい!」
ワァァァーーー……――
一瞬、控室まで届くような大きな歓声が上がった。
「な、なんだ!?」
観客席まで駆け付けるロキとレイチェル。……すると、競技場の真ん中に両手足を切断された上、心臓を貫かれ、頭部額から上を切断された死体……そして血の海という悲惨な光景が広がっていた……。そして、観客たちのボルテージも最高に高まっていた。ロキにとって、それはとてつもなく異常な空気でしかなかった。
「な……、あそこまで徹底しなくても……。それに、この人達、誰一人としてこの光景を疑問に思っていない。……嘘だろ?」
「何だい? 怖気づいたか?」
「いえ……、でも今日まで戦った試合でここまでする奴はいなかったです」
「それは、たまたまじゃ。グレードⅢやⅡでもこのくらいの事をする奴らはおる。得てしてそういう圧倒的な実力者がグレードⅠまで辿り着く。……が、スマートではないな。わしもあまり好ましいとは思うとらん」
「……やったのは、カームとかって奴ですね」
「相手もグレードⅠまで辿り着いた強者だった。それを、ここまで圧倒したんじゃ。相当手練れじゃな」
「ええ……」
不機嫌そうなロキ。
「……何じゃ、怒っておるのか?」
「……だって、あんまりじゃないですか」
「……相手はヒューマライズじゃ。傷みを感じなければ感情も無い。足りなくなったらまた生産される」
「レイチェルさん! あなたまでそんな事っ!!」
「せめて役目を果たしたと……、思ってやれ……」
「ぐっ……、すいませんでした」
――そして、試合は進み、一回戦第四試合……。ロキの出番がやってきた。
「さあ、一回戦もいよいよ最終試合です! まずは、イーストゲート。今大会唯一の女性型ヒューマライズの登場! 鮮血の魔女……、カルラ・ロゼッターー!!」
ワァァァーーー
「そしてぇぇーー、ウェストゲートから、期待の大型ルーキー……、R-6ー!!」
ワァァァーーー
「それではぁぁーー、第四試合……、始めぇぇぇーー!!」
――
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