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第百五十話  容疑と均衡

 ――その翌日、ソートリオールにレイチェルの姿があった。


「通せ」


「はっ!」


 ジャネクサスに通されるレイチェル。


「……久しいな」


「ひと月前にも来たんじゃがね。あんたの姿も無いし、随分と騒がしかったのでな。……まあ、今日はついでに弟子の入れ替えも兼ねておる」


 そう言って待機空間から十人ほどのヒューマライズを呼ぶレイチェル。


「それはご苦労じゃ。……ほう、相変わらずの仕事ぶりじゃの。長く使えそうな仕上がりじゃ」


「当然じゃ。手は抜かん。……で、話をひと月前に戻す」


「“報酬額を上げろ”……」


「ふん、分かっているなら話は早い。マルクスや吾郎がサボりおった穴埋めもしてやっておる。当然の権利じゃろう?」


「いいだろう。毎5億プラスでどうじゃ?」


「ほう……、気前がいいじゃないか」


「ただしこちらの質問にも答えてもらう」


「面倒な駆け引きを……。まあ、よいわ。何じゃ?」


「お主が連れ去った少年……。目的を話せ」


「税金対策じゃ。使用人としてヒューマライズを所有すれば無駄な税金が掛かるじゃろ? だから人間を使用人として働かせておるんじゃよ」


「あの少年は、ニアを所有していながら抗おうとした。それ相応の罰を受けるに値する」


「なら一生わしの下で使用人として自由を奪ってやろう。それで十分じゃろう?」


「……お主に別の目的が無ければな」


「えらく疑ってくれるねぇ。根拠でもあるのかい?」


「ハザマじゃよ」


「ハザマ?」


「ふん、とぼけずとも良いわ。お主ほどの者がその存在を知らぬはずが無かろう。……わしがそこで管理しておった赤髪のヒューマライズがあるタイミングで消えた事にも気づいておるんじゃろう。初めはジュヴェルビークの企てと疑ったが、よもや何の由縁もない少年がその主になっているとは……。じゃが、主でなくなった今、もはやただの少年じゃ。お主を敵にしてまで追う気は無いが、目的次第で話は変わる」


「そんなにべらべらと情報を話してもいいのかい?……まあ、よいわ。ひと月前にここを訪れた時に、カルマ並みのバカでかい力を感じたよ。その後、それが消滅した。それがお前さんの言う赤髪のヒューマライズなのじゃろうな。……で、その主だったのがあの少年だと。心得たよ」


「白を切れば、より怪しくもなるぞ?」


「ふっ、……つまりお主は、わしがあの少年を使って赤髪のヒューマライズを盗んだと。……そして、奪還された今、再び少年を手元に置き、次の手を目論んでいると?」


「そうであってほしくないと思っておるがな」


「おもしろい仮説じゃな。……確かにわしが現れたタイミングも絶妙としか言いようがないしな。しかし、こうも疑いを掛けられては、あれはわしにとっても事故でしかないタイミングじゃよ。あくまで目的は報酬の交渉だったんじゃからな。お主も知っておるじゃろう? わしの性格を。利益が見込めぬ事はせぬ。その仮説が正しい場合、わしの利益は何じゃ? あの力を得て世界を牛耳ようと目論んでいるとでも言う気か?」


「…………」


「お主とは違う。わしは、世界のトップなど面倒じゃ。そんな力になど興味はない。わしを疑いたければ、勝手にせい。ただし、危害が及ぶのであればわしにも出方というものがあるぞ?」


「……分かった。疑った事を詫びよう」


「では、用は済んだ」


 そう言ってレイチェルは振り返り、立ち去った。


「(……口調、体温、視線、態度……感じ取れるもの全てにおいて動揺の欠片も見せぬとは……。相変わらず人形じみた奴じゃ……。レイチェル……奴だけは計り知れん)」

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