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第十五話  契約成立

 これまでの経緯を何も知らないレンに唐突に破棄の話を申し出たロキ。

 しかし、レンは驚く事も無く、それを聞き入れた。


「分かりました。……最後に、至らぬ点ばかりでご迷惑をお掛けし、怪我まで負わせる結果になり、すいませんでした」


「……」


「では、破棄の取り決めについて説明します」


「頼む」


「始めに、破棄の宣告を意味する行動を考えてください。その次にそれを私に伝えて下さい。それを伝えた瞬間、次に主人がその行動をとったら破棄という事にります」


 ごくっ……


「直ぐに破棄をするつもりであれば、右手を上げるなど簡単な条件を、逆に破棄を最終手段としてお考えならば、普段絶対しないような行動、もしくは複数の手順を踏む動きにするのが一般的です。また、破棄は主の死とも連動します。この条件と重複する為、破棄の宣告を“主人の死”とする事はできません」


「……分かった。少し考える時間をくれ」


「それともう一点、“譲渡”というシステムがあります。これは、(あるじ)が亡くなる前に予め後継者を立て、3人で新たな取り決めを行う事で、主の死後、主の権利を受け渡すというものです。ただし、血族限定で一度だけという条件になります」


「ああ、覚えておく」


「では、決まりましたら声を掛けて下さい」


「了解」


 数分後、ロキは決心した表情でレンに歩み寄った。そして、


「……それでは、お手を」


「え? こ、こうか?」


 レンのリードに合わせて差し出された左手に右手を合わせるロキ。


「政府の名の下、ここに(あるじ)ロキと従者レンは契約により結ばれる」


 儀式めいた空気に少し緊張し始めるロキ。


「……では取り決めを」


「え?……えっと?」


「破棄の条件です」


「あ、ああ、……レン、お前を破棄する時……、それは、“100日後、俺がレンの戦闘力を超えていなかった場合”だ」


「……条件を確認。契約成立です」


 二人は手を下ろした。


「ふー!」


「……あの、ロキ?」


「ん?」


「今の条件では直ぐには私を破棄できませんが……」


「俺、お前を破棄するなんて言ったか?」


「……でも、私のでせいでロキに怪我をさせてしまいました。それは十分破棄の理由になり得ます……」


「怪我をしたのはお前の責任じゃない。それどころか、お前は俺を助けてくれたじゃないか。そんなお前を破棄する理由なんてどこにある?」


「は、はあ」


「これで俺が100日以内にレンを超える事さえできれば俺が死なない限りお前の破棄も無い。俺が死ぬまでとことん付き合ってもらうからな」


「では、あと100日間お世話になります」


「ずこっ、なんだよ100日ってー!」


「だって、ロキが私の戦闘力を超えるなど無理ですもん」


「なっ! うーー、レンの早とちりをからかうつもりだったのに、これじゃ、いつもと一緒じゃんかー!」


「ですね」


「で、ですね? お、お前な……」


「はっはっはっ!」


 仲の良い二人を微笑ましく見守る吾郎。そして、ロキの取り決めにもロキらしい優しさと覚悟を感じていた。

 ともあれ、ロキとレンの間に破棄の取り決めが成立した。


「レン、それと明日から暫くここでお世話になる事になった。俺、ゴローじいに稽古を付けてもらえる事になったんだ。勝手に決めてしまったけどよかったかな?」


「あ、はい。私は問題ありません」


「それじゃあゴローじい改めて、暫くお世話になります。よろしくお願いします」


「私からも。不束者ですがよろしくお願いします」


「いやいや、ワシが言い出した事じゃ。それにロキ君、ワシの稽古は厳しいぞ。覚悟することじゃ」


「はい!! 頑張ります!!」


 そう言うと、ロキは風呂の方へ向かった。


「(ソアラ、生きててよかった。そして、本当によい(あるじ)に巡り合ったな)」


 こうして、夜は暮れていった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


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