第百四十八話 地獄の瞑想
トントントン……――
「むっ……」
ヒュン……ヒュン……
パシッ!
夕食の支度をしているロキ。背後から飛んでくるフォークやナイフを躱し、頭上から落下してくるボールを受け止めた。
「ふー……」
「ダメじゃダメじゃ! 気配を頼っておるわ! 気を張り過ぎじゃ。もっと気を抜け」
「そ、そんな事言ったって、あなたと居て警戒を解くなんて無理ですよ! 死にます」
「そりゃそうじゃ、殺すつもりでやっとるんじゃから」
「いや、だから警戒解いたら死ぬって言いてるんですよ!」
「こりゃ起きとる時は無理じゃな。寝込みを襲うとするかの」
「違う意味で怖いからやめて下さい!」
修行が始まって一ヶ月程が経過していた。昼間の修行もどんどん難度が上がる中、ボロボロになりながらも何とかクリアしてきたロキ。着実に実力は上がっているものの、未だ流布の体得には至っていなかった。
「アホ! お前など相手にせぬわ!……しかしわしは本気じゃ。嫌じゃったら、寝ずに過ごすか寝ながら避けるか選択せい!」
「くぅぅ……、むちゃくちゃなババア……」
「なんじゃ!! 聞こえとるぞ!」
「じゃあ、なんかコツとか教えて下さいよ!」
「それが人にモノを頼む時の態度か、クソガキ!」
「すんません! 教えて下さい、お姉さま!」
「十日分の飯を作れ」
「は?」
「今日食わん分は、小分けして冷凍しておけよ」
「……いや、意味がよく……。それが、コツなんですか?」
「たわけっ! それはわしの飯を作り置きせよという話じゃ。今からお前には、200時間の瞑想をしてもらう」
「に、200時間の瞑想!?……ご飯は? トイレは?」
「200時間くらい食わずとも死にはせん。飲まず食わずで出るもんも無いじゃろ?」
「……。(選択の余地はなさそうだな……)」
「とっとと支度せい」
「はい!! (あー、もうやけくそだー!)」
こうしてロキは、200時間の瞑想という地獄のような修行に入るのだった。
――二時間後
「ふー……。レイチェルさん、十日分の食事の準備できました」
「ご苦労。では、お主は瞑想に入れ。寝ても構わん。要は無心で200時間を過ごす事が目的じゃ」
「はい。……では、失礼して」
そう言ってロキは、部屋の隅で座禅を組んで目を閉じた。
その様子を確認したレイチェルは、食事を摂り始めた。
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