第百四十六話 第二部ソートリオール幹部集会 その1
――そして午後
早々に会議室で待機していたソフィアの下に、バジリスクがやってきた。
「おお、ソフィア! お前グローサクビになったんじゃなかったんか?」
「うっさいバジ! クビにはされてないわ。実戦禁止なだけよ」
「ははっ! 暴れらんねー任務しか無いなんて可哀そうにな」
「ふん! あんたも調子ん乗って暴れまわってると、それこそクビ切れられるわよ。なんでこんな単細胞バカがこの座に居られるのか未だに不思議よ」
「なんだとっ……」
「なに? 殺すわよ?」
「……っち! ガキはどいつもこいつも……」
言い争っていると、そこにリゼルグが現れた。
「よう! お嬢、ジャネクスからあのヒューマライズを託されたんだとな」
「あ! それ僕も聞いた。楽しそうじゃん!」
その後ろにアルージャも。
「いちいちいいわよ。あんたらも時朗見習いなさいよ」
「うわっ! 相変わらず気配もなく座ってる……」
続々と現れる隊長たち。斑鳩とリュシオルも席に着く。
そして、
__コッコッ……
「皆、揃っておるようじゃな」
最後にジャネクサスが席に着き、定例会が始まった。
「改めて先日の作戦、ご苦労じゃった。皆の働きもあり、対象の破棄及び奪還という形で作戦を終えられた。感謝する。深手を負った者もそろそろ傷も癒えた頃と思うが、どうじゃ?」
「ああ、このひと月は実戦任務も無かったからな。すっかり元に戻りましたぜ」
「何よりじゃ。アルージャ、偵察班からの報告は?」
「ジュヴェルビークの動きに特に変わった様子は無いよ」
「うむ、ご苦労」
「なあ、ジャネクス。例のオーナーだった坊主はどうなんだ? 斑鳩の姉さんが取り逃がしたとか。なんなら俺が始末してこようか? 体も鈍ってるしよ」
「多少力を持っていたようじゃが、育成師ほどでもない。もはや一人では何もできんじゃろう。ただの一般人じゃ。それに、レイチェルが絡んでおる。奴の居場所は特定できん。わざわざ探すほどの事でもなかろう。構わずともよい」
「……取り逃がしたのは、そういう事か。あのばーさんが絡んでるなら、勘弁だ」
「この先は、カルマに集中すればよい。お主らも奴と対峙した事で改めて実感したじゃろう。その脅威を」
「ああ、バケモンだぜ、あれは。……で、奪還したヒューマライズで対抗すると……。ホントにあんなバケモンじみた力があるのかよ。あいつに」
レンの力に疑問を抱くバジリスクに斑鳩が答える。
「私は実際、破棄直前に尋常じゃない程の力を発揮したヤツと対峙した。あの力は、間違いなく私達が数で挑んでもどうにもならない程のものだった。過去、式神吾郎の時に発揮した力も同様だ。……カルマとの大きな違いは、その力を制御出来ていない点だ」
斑鳩の報告にジャネクサスが入る。
「その課題を現在、ソフィアに任せておる。ソフィア、現状はどうじゃ?」
「あの子、中々のセンスの持ち主よ。最初は、実戦投入されている一般的な戦闘特化型にも劣る程の力しか無かったけど、一ヶ月でショコラやオランジュと同じ訓練内容をするまでになったわ」
「それは重畳。以降も良きに計らえ。期待しておる」
「うん! 任せといてよ」
「ほう。嬢ちゃん、やっぱり育成師の資質があるんじゃないかい? ショコラもオランジュも俺らの部下たちじゃ太刀打ちできないほどの実力だしな。いっそ育成師なんて当てにせず、この先は嬢ちゃんに託したらどうだい?」
「……わ、私はレンとショコラとオランジュだけで手一杯。他のヒューマライズまで見てられないわ。……それに、あの子たちが特別なだけで、私に育成師の力があるとは……」
「おや? いつになく自信が無さそうじゃないかい?」
「っ! 何が言いたいの!?」
「マルクスの件だ」
「っ!!」
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