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第百四十五話  あいつの気持ち……

「勝負あり! 勝者、オランジュ!」


「はぁはぁ……、オランジュさん、ありがとうございます」


「ご苦労様、オランジュ。で、どう?」


「はい、今日からレンも俺らと同じメニューで良いかと思います」


「聞いたわね、レン。今日からあなたも訓練レベル10で行くわよ」


「はい、ソフィア様」


 ソフィアがジャネクサスにレンの戦闘指南を命じられてから一ヶ月。レンはかなり腕を上げていた。


「じゃあ、今日は色々忙しいから、あとは任せたわ」


 この日のソフィアは、午前中に税の徴収、そして午後からは幹部報告会が予定されていた。


「……さてと。……マルクスとは暫くぶりになるわね」



 ――そして


「マルクス、徴税に来たわ」


「ソフィア! 暫くだったね」


「私も色々と忙しいのよ」


「……ねえ、ソフィア。……レンさんの事だけど……、彼女は今……」


「は? 何言ってるの? レンは破棄されたの。分かるでしょ?……もうレンじゃない」


「分かっている……。でも……」


「……完全処分にはなってない。それ以上は言えない」


「すまない。君の立場も分かっていて」


「じゃあ、私も質問するよ。……ジュヴェルビークは?」


「ああ、徐々に日常を取り戻してる。レンさんの事も受け入れている。それがレンさんの為でもある」


「こどおには?」


「こどおに?」


「あいつよ! レンの主だった子供みたいなお兄さん。破棄の時、死んでないって事は聞いてる」


「ああ、ロキ君。なるほど“こどおに”ね。また、面白い仇名を付けたもんだ」


「で、どうしてるの?」


「分からない。あの日以来会えていない。聞いているのはレイチェルさんの所に居るって事くらいだけど」


「え? あいつ、おばあちゃんの所にいるの?」


「そうか、君はレイチェルさんと面識があったね」


「まあね、色々と教わったから」


「彼女の居場所、分かったりしないかい? できれば、ロキ君の無事を確かめたい」


「マルクスも知っているでしょ? おばあちゃんの拠点が何処にあるかは謎だって事。私も昔は何度も連れて行ってもらってたけど、あの場所にはおばあちゃんとでないと行く事はできない」


「そうか……。しかし、意外だったよ。キミがロキ君の心配をするなんて」


「心配? 心配なんてするわけないじゃん!……ただ、あいつ……、ノアに似てるんだよ。あんたには言うけどさ」


「……そうか。キミも感じてたか」


「うん……。あの感じはノアだ。……気というか」


「キミには話すとしようか……。ノアが行方を晦ます直前、彼女は僕の下を訪れ、少年が一人僕を頼ってジュヴェルビークに現れると言い残して行ったんだ」


「それって……」


「ああ、ロキ君だ」


「じ、じゃあ、あいつの記憶が戻ったらノアが何処に居るか分かるって事!?」


「おそらくは」


「…………そう。……随分と話が反れたわね。頂くものも頂いたし、そろそろ帰るわ」


 そう言って振りかるソフィア。


 しかし、マルクスが呼び止める。


「……ソフィア!」


「何?」


「キミがもし、この先ずっとノアに会えないとしたら?」


「は? 何が言いたいの!! ノアが死んだとでもっ……」


「……今、キミが想ったのと同じくらい、ロキ君はレンさんに想いを抱いている。……分かるかい?」


「っ!!!……だったら?」


「ここからは僕の個人的な意見だ。僕は、ジュヴェルビークのみんなが好きだ。彼らだって僕らと同じように生きている」


「でも……、ジュヴェルビークの悪魔たちは危険因子。今は穏やかに暮らしていても、奴らは人を凌駕する力を持っている事実は紛れもない。パパは、争いの因子を摘もうとしているの」


「キミのお父さんは、すごい人だ。彼が世界を統治して以来、戦争は無くなった。世界の多くの人々が満ち足りた生活を送れている」


「じゃあ……っ」


「けど、僕は見ていられないんだ。大好きな友人たちが世界から排除されようとしている姿を。彼らは悪魔なんかじゃないよ。希望だ。とっても優しい“心”を持った未来の担い手なんだよ」


「……マルクス、あんた何言ってるか分かってる? そんなのパパの耳に入ったら……」


「いや……、それ以前に先日の抗争で僕は君たち政府に抗ってカルマたちと共に戦った。今こうしてまだ生かされてはいるけど、あの時僕は既に覚悟している。命を懸けてこの意思を貫き通すよ」


「……そ」


 そのまま再び振り返ったソフィアは、上空へと消え去った。


「……嫌な思いをさせてすまないソフィア。でも……、キミもまた、希望なんだ……」



 ――


「なんなのよ、マルクスの奴!…………こどおにの気持ち……か。ううん、そもそもあいつが弱いからレンを守れなかったんじゃない。そうよ、あいつの気持ちなんか知った事じゃないわ」

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


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