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第百四十四話  生き残れ

 二回目の朝食後、ロキは訓練メニューを手渡され、指示にある場所に来ていた。


「はぁはぁ……裏山の頂上の広場って……ここだよな。5分っで向かえって……なんとか来れたけど、全速力だ……。はぁ……それにしても、特訓メニュー、“生き残れ”って雑だな」


 文句を言っていると上空から無数の槍が降ってきた。


「うわっ! ちょっ……」


 頭上の警戒は吾郎との修行で身に着けているロキは、それらの落下点を先読みし躱していく。

 しかし、躱しきった先、背後に強い殺気を感じる。


「この気配、魔獣?」


 しかし、姿が見えない。


「くっ! 気配はあるのに……、何処っ……ぐふっ!!」


 姿を確認できないまま腹部に強い打撃を受け、上空へ弾き飛ばされるロキ。更に槍が降り注ぐ。


「っく!!」


 空中で体をひねり躱すロキ。躱しきれなかった二本を上手く掴み取り、殺気のする場所目がけて投げつける。すると、何もいない場所で槍が弾かれた。

「やっぱり……。この魔獣、隠れているとか動きが早くて追えないんじゃない。透明なんだ。だったら……――」



 ――夕暮れ


「はぁはぁ……、なんとか生き残ったぞ……。あいつ強かったな。視覚情報をシャットアウトしても攻撃躱すのギリギリだった……。攻撃も重いし……。最後、殺気を消して去っていったけど……何者なんだ? 気配は魔獣だったけど、人のような意志もあったみたいだったし……。戻ったらレイチェルさんに聞くか」


 そしてロキは、レイチェルの下に戻った。



 ――


「ただいま戻り……いっった!」


 扉を開けた瞬間、顔面にボールを投げつけられ、喰らうロキ。


「な、何するんですか!?」


「アホ! 油断するな。鋭利な物だったら死んでおるぞ。避けろ」


「そんな! 無警戒な状態で無茶ですよ!」


「稽古を付けろと言ったのはお主じゃろ? これも稽古じゃよ。文句を言っておる時間があったら早よ飯作れ。わしは腹が減っておる」


「は、はい……(くぅぅ~~ババア……)」


 痛いところを突かれ、言い返せないロキは、苛立ちながらも夕食の支度に入った。


「くっそー、あのばあさん、こっちが何も言えないからっていい気になりやがって……。そうだ、だったらこっちだって……」


 リビングで寛いでいるレイチェルを横目に何やら企むロキ。そして、気配を消し、レイチェルの背後からボールを投げつけた。


「(くらえっ!)」


 パシッ!


 しかし、あっさり受け止められた。


「え? (うそだろ? あんな無警戒の状態で気配の無い所からの攻撃を見抜いた?)」


「なんじゃ。いい度胸じゃのう」


「す、すいません!! お姉さま! お許しを!」


「ふんっ。ガキの考えそうな事じゃ。いちいち咎めん。……じゃが折角じゃ、明日から訓練を厳しくしてやろう。今日は、甘やかし過ぎた」


「えー! 今日のメニューでも必死……」


「何じゃ、弱音か?」


「うっ……、いえ。……そういえば、あの透明な魔獣、一体何なんですか?」


「魔獣じゃとぉ!!」


「え? なんで怒ってるんですか?」


「あれはわしの分身じゃ。お主、わしを魔獣だとでも言うのか?」


「そ、そんな事言ってないですって……(いや、魔獣なんかより怖いって……)」


 慌てふためくばかりのロキ。しかし、ふとレイチェルのまるで統一感のない術式に疑問を抱く。


「ていうかレイチェルさん。今更ですが、あなたの術式ってチートですよね? 大怪我を一瞬で再生したり、透明人間の分身を作ったり、それにハザマまで作るなんて……。一体どんな力を使ったらそんな事が……」


「チートじゃあ無いさ。そう感じるのは、お主が宇宙の理をほんの僅かしか知らず、自らが知りうる範囲でしか物事を捉えられていないだけじゃ。わしが起こしている事は紛れもない現実じゃ。それに、吾郎やマルクスだって似たような事をするじゃろ?」


「そ、そうですけど、ゴローじいはありとあらゆるものの流れを利用するっていった感じの術式で、マルクスさんは光を利用する感じの術式です……。二人とも超人的な事をしてますが、あなたのは、それとも異色な感じです。言ってしまえば、不思議としか言い表せない」


「なるほど。頑なにルールや統一性が無いと納得いかんようじゃの。まあ、分かり易いように話しても納得出来んじゃろうが、わしは、人が“時間”ないし“時空”などと呼ぶ事象を掴んだり離したりする事が出来る。足を生やしたのも、生えていた時間を掴んできて、失った足の場所で離した。分身も数秒前の自分を掴んできて離した。ハザマは異なる時間の異なる場所を繋ぎ合わせた結果できた時間の流れが違う空間。わし専用のソートリオールまでの近道じゃ。暇つぶしに複雑に繋ぎ過ぎた結果、ああも広くなった。まあ、細かい特性まで話すと長くなる。ここまで話してやっただけでもありがたく思え」


「す、すごい……。で、でもボールを受け止められたのは……? 戦闘能力の高さは血の力だとしても……」


「ボール? バカか。あんなのは、初歩じゃ。気配など消そうが空間の歪みで分かる。ふいを突かれようが、寝ていようが関係無い。その様子じゃと、お主、吾郎のところで流布は身についていないようじゃな」


「……はい。正直、技も鑼心撃一つを覚えるので精一杯でした」


「なるほどな。じゃったら、ここでは吾郎のところで身に着けれなかった事全てを体得してもらう。どうやらお主の血は奴と同じ特性を持つようじゃしな。わしは、お主を殺すつもりでやるからそのつもりでな」


「は、はい!(くぅぅー、もしかしてとんでもない人に修行を頼んでしまったか?……いや、でもこのくらい乗り越えられない様じゃ、結局政府に立ち向かっても殺されるのが落ちだ。乗り越えなきゃな)」


 ロキの修行は続く――



ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


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