第百三十七話 三人目の育成師
――とある小さな島
「おい、いつまでも腐ってんじゃないよ。いい加減顔を上げたらどうなんだい」
「…………」
「はあ……、こりゃ叩き起こすしかないかね」
そう言うとレイチェルはロキを蹴り飛ばした。
ドガっ!!
「ごはっごはっ……」
「どうだい? 目、覚めたかい?」
「……殺してくれ」
「は?」
「もう俺が死のうがレンが破棄される事は無い。……あいつはもう、いないんだから」
「誰がお前のような奴の頼みなど聞くさね? やっと口を開いたかと思えば、バカな事抜かしおって」
「……もう、生きる気力が無い」
「情っけないねえ。ヒューマライズの一体や二体また買えばいいじゃろうに」
「なんだと!! お前に何が分かる!!」
「おや、元気出て来たじゃないかい。だが、年長者に“お前”は失礼じゃぞ」
「……すいません」
「いやに素直になったの」
「……あの、あなたは?」
「わしは、“レイチェル・フィルエーテル”。いわゆる育成師という奴じゃ」
「あなたが、レイチェルさん?」
「そうじゃ? さっきぶっ飛ばされた蹴りの威力で育成師だって事くらい察しはつくじゃろ? お主、吾郎に会っとるんじゃろ?」
「え? 何でそれを?」
「その首から下げておる護符から奴の力を僅かに感じる」
「……そうか。もうこのお守りには、ほどんど力が残ってないんだ……」
「それにしても、随分と様子が変わったねぇ。数ヶ月前に現れた時はもっと目つきも悪くて生意気な感じだったが」
「え? 俺、レイチェルさんに会ってるんですか?」
「は? いきなり現れて、ハザマへの侵入方法を教えろだのってほざいてたじゃないか。驚いたさ。わしがハザマに干渉できる事など政府の奴らでも知らん事を、何故こんなガキが……ってな」
「……俺、そんな事を……」
「なんだい? 記憶喪失とか抜かすのかい?」
「……はい」
「ぷっ! あはははっ! まあ、いいんじゃないかい? クソ生意気な坊主に仕置きをするつもりで連れて来たんじゃが、覚えていないなら水に流してやろう」
「……」
「……ったく。破棄したのはお主じゃろう? 自分で破棄しといてなんじゃ、その情けない顔は」
「そんな! 俺は破棄なんかしてない!」
「破棄の条件は?」
「……ある時点から100日以内に俺がレンの戦闘力を超えれなかった場合……。でも、その条件はクリアして俺はレンの力を超えました!」
「それ以降、一度もそのヒューマライズに戦闘力を抜かれていないのかい?」
「……レンが、レヴェイになった瞬間、とんでもない力を出していました。……でも、100日以内の制限で条件はクリアしたんだ! だったらもう、破棄は成立しないはずだ!」
「そんな制限付きの条件で破棄を無効になどできんわ。(……なるほど、話の流れから可能性は高いと思っていたが、あのバカでかい力の主は、こやつのヒューマライズだった訳か)」
「そんな……」
「よほど情が移っていたようだね。稀に見るバカだ」
「あんたって人は! まるで政府の連中と同じ考えなんですね!」
「心外だね。わしは政府の考えなどに浸ってはおらんよ。奴らなど、ただのビジネスパートナーにすぎん。仕事に見合う報酬さえもらえれば、それでいい。そもそも争いごとは疲れるから好きじゃぁない。長生きの秘訣じゃ」
「長生きって……、あんた俺と10歳も年離れてないだろ? そういうのは、ばあさんとかが言うセリフだ。まあ、しゃべり方は、ばあさんみたいだけど」
「おおっ! 嬉しい事言ってくれるじゃないかい!……でもわしは、ばあさんじゃよ」
「は?」
「ピチピチの126歳じゃ!」
「ひゃ……ひゃくぅぅ!!?」
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