第百三十二話 潜入! ソートリオール その3
二人は谷の方角へ走った。時折ロキが谷の位置を確認する事で、今度は慎重に進んだ。
やがて、二人は谷の前まで辿り着いた。
「……ロキ君、……底、見えないけど、どうする? 橋とかも掛かってないみたいだし」
「……トトニス、向こう岸まで飛べそうか?」
「え?……うん、それしか渡る方法なさそうだもんね。やってみるよ」
「よし! なら、一斉に跳ぼう!」
そして二人は、幅20メートル以上はあろうかという谷をジャンプで渡る。
しかし……
「わっ! なんだ!?」
「え!? ちょっ……」
「うわぁぁぁぁ――」
突然大きな重力に押しつぶされるかのように体が重くなり、二人はそのまま谷底へ落ちてしまった。
――
「いてて……。トトニス、大丈夫か?」
「……うん、大丈夫。でもあんな底も見えないような深い谷に落ちて、この程度のダメージっておかしくない?」
「ああ……、確かに。……でも上を見ても真っ暗だ。どうなってるんだ」
「あっ! ねえ、ロキ君! あっちの方……、光が見えない? もしかして出口?」
「本当だ! よし、行ってみよう!」
光の方へ急ぐ二人。やがて辿り着いた先には、ただ光の膜があるのみ。その先を確認する事はできない。しかし、他に手立ての無い二人に選択の余地は無かった。
「……よし、入ってみよう」
「うん」
光の膜へ足を踏み入れると、その先は中枢塔の廊下だった。
「やった! 戻って来られた」
しかし、その喜びも束の間だった……
「おっと……、大事な人質を何処に連れて行く気だ?」
現れたのは、一番隊の夕凪新だった。どうやら、部屋の中の二人の動きは彼によって操作されていたようだ。
「まずいっ! 見つかった。……トトニスっ!」
ロキはトトニスの手を引き、全速力でレンの下に向かう。
「ピエージェ・ド・アラーニャ!!」
新が、二人の目前に光の蜘蛛の巣を展開する。
「くっ!! なんだこれ!」
絡まるロキ。
「くくくっ! よく考えたらお前を捕らえられれば人質などどうでもいい。……いや、ここで殺っちまえば、破棄成立じゃね?」
身動きの取れないロキにトドメをさそうとする新。
するとトトニスがロキを庇うように新の前に立ち塞がった。
「なんだ? 無駄死にでもする気か?」
「だったとしても黙って見てられる訳ないでしょ!」
「トトニスっ!! ダメだっ!! 逃げろ!!」
「うんうん。泣ける展開だねぇ。でも俺そういうの……、一っっ番キライなんだよね!!!」
トトニスに向けて光の槍を放つ新。
「トトニスぅぅぅーーー!!!」
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