第百三十話 潜入! ソートリオール その1
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一方、ソートリオールでは
ロキが抜け道があると言う方へ進んだ二人。行きついた先は行き止まりだった。
……壁に歩み寄り手をかざすロキ。その様子をレンは不思議そうに見ている。
すると……、
ヴゥゥ……ン
壁は光の幕のように姿を変えた。驚く様子のレンに対し、さも当然の様子で光の中へ進むロキ。慌ててレンも後を追った。
通り抜けた先には、長い廊下が続いていた。
「ここは何処?……それに遠くで大きな気配が……。これって……戦ってる?」
「ああ、……とんでもなくでかい……。特に片方は……、圧倒的だ」
「……ちょっと待って。これって……、小さい方、ソフィアちゃんだと思う」
「え……? ソフィアが戦ってるのか?……だとしたらこの力の差、まずいぞ」
「でも、大きい方の力に殺気が感じられない……。相手は誰だろう」
「……言われてみれば本当だ。……でもどうする? このままソフィアのところに行くのは賭けだ」
「……でも、トトニスちゃんの居場所が分からない以上、ソフィアちゃんに賭けるしか方法ないと思う。まずは、向かってみようよ」
「ああ、分かった。慎重に行こう」
二人は、周りの監視や気配に注意しながらソフィアの下を目指した。
しかし、暫く進んだ先で背後から声がした。
「やあ、見かけない顔だね? もしかして、ターゲットの二人かい?」
「くっ! 誰だ!?(こいつ! 気配もなく……)」
「まあ、名乗る程の者ではないけど、聞かれたのだから、答えようか。……僕は、漣蛍。特殊公安部隊グローサ一番隊に所属する一隊員だよ。な~んかこそこそ潜入みたいな事してるところをみると、自分たちでこのまま人質を助けようって事かい?……残念だけど、君たちは、ここでおしまい。大人しく捕まってくれるなら手荒な事はしないよ」
「ロキ! 分散して逃げるよ!」
「ああ! 分かった!」
「へ~、女の子の方はヒューマライズだよね? 指示を出すなんて驚いた。こいつは危険だね。ゆー事も聞かないみたいだし。……じゃあ、覚悟してね」
分散して逃げる二人。しかし、先にレンが捕まってしまう。
「っう!!」
「……っと。接触しといて逃げられたら、斑鳩さんに怒られちゃうからな~。新の奴にも笑われたくないし」
「レン!!!」
「ロキ! 行って!! この人達の目的は、恐らく私の破棄! ロキがいなければそれもできない! だから!」
「ダメだ!! 置いてはいけない!!」
「ロキ!! 今はそれが最善!!」
「くっ!……レン!! トトニスを助けたら必ず戻ってくる。それまでなんとか持ち堪えてくれ!!」
そう言って、その場を離れるロキ。
「バカを言わないでよ。二人とも捕まえるさ」
その時、レンが護符の力を開放した。
「……ぐっ1! お前、何を……!?」
護符の力が蛍の動きを封じた。
「へへっ! 私だってちょっとは戦えるんだから! (ゴローじい、お願い! もう暫く力を貸して!)」
――
一方、トトニスの救出を急ぐロキは、レンが残った事で対応を焦っていた
「くそっ! ソフィアのところに辿り着いてもトトニスの居場所を教えてくれる保証は無い。それに戦ってる相手が敵ならむしろ状況は今より悪くなる。それを乗り切るなんて時間が掛かり過ぎる。かと言って、トトニスの居場所は全く分からない……。捜索に時間を掛ければそれだけ敵に見つかる可能性も高くなる……。レンの奴、ゴローじいの護符の力で対抗してたみたいだけど、それもいつまで持つか分からない。どうすれば……」
焦りを募らせたまま一旦はソフィアの気配を辿って進むロキだったが、暫く進んだところで立ち止まった。
「なんだ? この部屋。いやに暗いな」
目の前に立ちふさがる不自然に暗い部屋。不思議に思いながらも、入る事にした。
「あれ? 中は明るい?……それに……、中庭? にしては広いな」
さっきまでとはまるで別世界のような景色に困惑しながらも進もうとしたその時、ふと違和感を感じた。
「あれ? ソフィアの気配が変わった?……いや、違うこれは……、トトニスだ! 近くにトトニスがいる!」
気配を辿り、しばらく進んだ先で誰かが倒れているのを見つけた。
「トトニスだ!」
倒れていたのはトトニスだった。ロキは慌てて駆け寄った。
「……大丈夫。息はある」
意識がある事を確認したロキは、トトニスに呼びかける。
「トトニス! トトニス!」
しかし、呼びかけても起きる様子がないトトニス。
「仕方ない。負ぶって行こう」
トトニスを負ぶって元来た方へ走りだすロキだったが、直ぐに足が止まった。
トトニスが首を絞めたのだ。
「……ト、トトニス(操られてるって本当だったんだ……)」
なんとか振り払ったロキだったが、トトニスが攻撃を仕掛けてきた。
やむを得ず、ロキは応戦する事になった――




