第十三話 それが罪となる理由
破棄の意味を聞いたロキは、知る事の大切さを痛感していた。一方でその内容はレンの存在を否定するようなものでもあった。
「これまでの話で、レンちゃんに以前の記憶がある事がおかしいのは理解してもらえたはずじゃ」
「初期化されてるはずって事ですもんね」
「ああ、そのとおりじゃ。だが、それだけじゃない。あの子……“ソアラ”は、ヒューマライズ法を犯しておった」
「それって!! じゃあ、当時その……ソアラさんだったレンが存在してる事自体がおかしいって事ですよね?」
「そうじゃ、ソアラの破棄はつまり、焼却処分を意味していた」
「で、でも一体何を……」
「……“人格を持った”のじゃ」
「人格!? それじゃあまるで人間と同じ……。そんな事が有り得るんですか?」
戸惑うロキ。それと同時に、人格を持つ事がなぜ罪になるのかという疑問も浮かぶ。
「いや、それになんで人格を持つ事が罪になるんですか?」
「ロキ君も知ってのとおり、ヒューマライズは人間よりも遥かに高い能力を持っておる。もしそんな存在が人間の支配に疑問を抱き、その支配から逃れ、逆に人間を支配しようとしたら……。恐らく世界政府は、それを恐れておる。そして、人格を持ったヒューマライズの徹底処分を始めた……」
「そんな……!! そんな勝手が許されるんですか!? 自分たちの生活を豊かにするために、使う時は好き放題に使って、都合が悪くなれば処分? そんな考え方……、そんな道具みたいな……っ!!」
途中まで言いかけ、レンと出会った時に言われた言葉を思い出した。
――私たちは、生命として扱われていません。言わば、道具としてお考えください――
「くっ……! ゴローじい、あなたが俺に伝えたかった事って、レンにまだソアラさんの人格が残ってるって事ですか?」
「あくまで可能性じゃが、ソアラの人格が戻る、もしくはレンちゃんという新しい人格が生まれる……いずれにせよ過去に人格があった事は事実。あの子には人格が芽生える可能性がある。キミにはそれを知っておいてほしい」
「……でも、仮に人格を持ったとして、政府はそれをどう確認するんですか?……こんな事をさせるのはレンに酷かもしれませんが、誰にも気づかれないように隠し通す事はできないんですか?」
「……それは不可能に等しい」
「何故ですか?」
「全てのヒューマライズは、政府の管理下にある。その為、ヒューマライズが人格を持った事が発覚すると、断罪人がやってくる。そして、破棄を強要される」
「……それを拒んだら?」
「殺される……」
「で、でもゴローじいの腕を持ってすればっ……いや、すいません……」
吾郎の話を思い出し、言い止まるロキ。
「……いいんじゃ。及ばなんだ。奴等はそれ程という事じゃ。ワシはその争いの中で絶命する程の傷を負い、恐らくそのまま死んだ……」
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