第百二十八話 ジュヴェルビーク攻防戦 その2
バジリスクの気配が変化していく。
「マルクスさん、左右から一気に行こう!」
「ああ、分かった!」
一人ずつ確実に落とそうと二人同時にバジリスクに仕掛ける。
しかし、
「くっ!!」
バジリスクを囲う強力なフィールドが邪魔をする。
「おっと! バジは、力溜めるのに時間掛かるんだよ。ちょっと待ってあげなよ。その間、僕が相手してあげるからさ」
バジリスクをフォローするアルージャ。そのアルージャ自身も先ほどまでと気配が違っている。
「額の目が、開眼した?」
「ここは僕が相手をする。クリオネ、キミはバジリスクが力を溜め切る前に何とかあのフィールドを解くんだ!」
「ああ、承知した」
「いくよ、隊長さん! トールズ・レイ!!」
太い一本の光の柱がアルージャを襲う。
……しかし、それは躱させてしまう。
「っな!! この近距離からの光の速度が躱された!?」
「あっっぶ! ギリギリだよ~。あんな高出力、当たったら死ぬかも」
ルクスカリフの速度さえも躱すアルージャに対して、攻撃から守りに転じる事にしたマルクス。巨大な光の壁を展開する。
一方、バジリスクを取り巻くフィールドの破壊を試みたクリオネだったが力及ばず、バジリスクの覚醒が完遂しようとしていた。
しかし、一喜一憂はしない。すぐさまマルクスの援護に対応を切り替える。光の壁に合わせて水の壁を展開し、防御壁に厚みを持たせた。
「いや~、とんでもない壁だ。流石に僕もこれは壊す自信ないな。……まあ、ここは鬼の出番かな」
すると後方からとてつもない衝撃波が向かってきた。
ピキッ……
その衝突で壁にヒビが入る。
「たっは!! 一発でブチ破るつもりがヒビかよ。鈍っちまったかな、ちょっと」
姿を現したのは、バジリスク。一回り程大きくなった体格と赤く染まった体。そして、大きく発達した角と牙はまるで鬼そのものだ。見た目だけではなく、パワー、スピードといった戦闘能力も大幅に向上している。
「クリオネ! この力はひとりで抑えるのは難しい。ここは二人で抑えよう。アルージャは壁がある限り侵入はできないはず。部隊のみんなも何とか持ち堪えてくれている。バジリスクさえ抑えれば何とかなる」
「ああ、承知だ」
「やれるもんなら……やってみな!!!」
バジリスクがマルクスに突進する。
それに合わせルクスカリフを放つマルクスだが、アルージャがすかさずそれを弾く。アルージャの援護でバジリスクの攻撃がマルクスに届く。
「ぐふっ!!」
激しく吹き飛ぶマルクス。攻撃後の隙を突いてクリオネがバジリスクに攻撃。そこから激しい打ち合いが始まった。その打ち合いの援護に入ろうとするアルージャだったが、マルクスが死角から気配を消して光の球体でアルージャを囲んだ。
「うわっ! 何これ?」
脱出に苦戦するアルージャ。うまく二対一の状況を作る形となった。
そのままマルクスも肉弾戦に加わる。
「はははっ! いいぜ、二対一! そのくらいじゃないとおもしろくねぇ!」
その余裕に違わぬ力で二人を弾き飛ばすバジリスク。
「くっ! バジリスクの奴、あんな力があったとは……。どうする? マルクスさん」
「大丈夫。恐らく彼らのあの覚醒のような変化には制限時間があるはずだ。無限にあんな力が使えるなら今までだって見せていたはず」
「なるほど……。なら、時間切れまで粘るのみだ」
「ああ、そういう事だ」
やがてアルージャが光の玉から脱出する。しかし、その僅か数分の間に光と水の包囲網が形成されていた。水の膜がマルクスの放つ光の攻撃を複雑に屈折させ、相手を惑わせる。この罠に嵌ったバジリスクは次第に劣勢に転じていた。
「バジッ!! 何やってんだよ!!」
慌てて屈折する光の計算を始めるアルージャだが、次々と変わる屈折率に計算が追い付かない。
「くっそ!! 反射神経だけでこの数を対処するのは……。バジのバカ!」
完全に優勢と思われたその時だった。
突如後方で防御壁が崩壊した。
「なっ!」
振り返るクリオネ。同時に斬撃が襲う。
「っ!!!」
「クリオネっ!!」
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