第百二十四話 ソフィアの正義
会合は続く。
「……では、話を戻す。リュシオルよ。カルマの現状をどう見る?」
「は。先ほど申し上げた地形の利ですが、具体的には、奴にとっての因縁の場所であるドラグレスクでのホリックスペリオが効力を発揮した形です。一時的とは思われますが、完全に戦闘能力を失うほど、身動きが取れない状態でした。マルクスに救出された時には意識は無く、抱えられる形での離脱でしたが、カルマの事です。時間が経てば力も戻りましょう。しかし、全快には少々時間を要すると見込んでおります。仕掛けるのでしたら、今が最良かと」
「……みな、聞いての通りじゃ。ここが一つのポイントとなる。ここで、確実に捜索対象の奪還をする。総員戦闘配備」
念導通信で繋がれたグローサ全隊員に戦闘配備の命が伝わる。
「作戦を申し付ける。リュシオル。捜索対象を寄越すよう再度要求せよ。場所は、ここでよい。その後先陣を切り、ジュヴェルビークへ向かい、マルクスを牽制し足止めせよ」
「は! お任せください」
「次に第二陣、バジリスク、アルージャ。お主らは、配下を引き連れノイ、クリオネを始めとする奴らの中核の足止めを任せる。ノイは先日の戦闘で腕を失っているとはいえ、油断はするな」
「ああ、分かってる。盛大に暴れてくるぜ!」
「バジがドジっても僕がちゃんとフォローするから、安心していいよ。ジャネじい」
「そして第三陣、リゼルグ、時朗。お主らは、捜索対象が要求を無視しジュヴェルビークに留まった場合を想定し、内部に侵入。熱源を探れ。万が一、カルマが出てくる事も無いとは言えん。そのつもりで対応を頼む」
「ああ。任せな」
「了解した」
「最後に、斑鳩。ここに残り、要求通り行動してきた場合の捜索対象を捕らえよ」
「は! 承知しました」
「それでは、各位作戦を決行せよ。総員の健闘を祈る」
こうして、政府によるレン奪還作戦が始まった。
――
会合を終え、ジャネクサスは待機を命じたソフィアの元に向かった。
「ソフィア。入るぞ」
「パパ。……もう終わったの?」
「ああ」
「……で、何の用? 私はやる事無いんでしょ?」
「そう、ふてくされるな。わしが監視役を務める」
「パパが?」
「ああ。……最近はこうして二人で話すのも無かったと思うてな」
「説教でしょ……。その、……私がした事がパパの悲願の邪魔をしたのなら……ごめんなさい」
「……理由を聞こう」
「……きっと子供だって思われる……」
「それでも思うところがあるのであろう? 話してみなさい」
「……フェアじゃないのが気にいらない。カルマが物理的な強さを誇るなら、それを上回る物理的な力で打ち勝たなきゃ納得できない。私がそれをする。」
「それでリュシオルのやり方が気に入らなかったと……」
「……そうよ」
「……ソフィアよ。それがお前の正義ならわしの考えを押し付けはせん。……だが、それを実現できないのであれば、“任務”としては失敗という事になる。別の手段を考えるべきだ。それが出来ないのであれば、この任務から外れてもらう事になる」
「……」
「示して見せよ」
「え?」
「さあ、掛かって来なさい」
「(パパと戦う?)」
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