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第百二十二話  王の器

 家に到着し、奥の部屋のベッドにカルマを寝かせ、マルクスの治療をするクリオネ。


「クリオネ、すまない。……カルマは、大丈夫そうかい?」


「ああ、今は意識を失っているが、脳波の数値に異常は無い。意識を取り戻したら通常に戻れる」


「よかった……」


「あの……、マルクスさん、傷の具合は……」


「レンさん、ありがとう。僕は大丈夫。……それより、すまない。トトニスさんを助ける事ができず……」


「トトニスちゃんは、無事なんでしょうか……?」


「分からない。……ただ、脱出の際、一瞬意識が戻った彼女は、操られているように見えた」


「え……!?」


「あのリュシオルって奴にですか?」


「あるいはあの場所に理由があるとも考えられる。戦力では圧倒するカルマがやられたのもあの場所特有の負の念が原因だった。特に因縁の無い僕でさえ長く居たたどうにかなりそうな空気だったよ」


「負の念……ですか?」


「ああ……」


「おい、ロキ! あまりマルクスさんに話をさせるな。負傷の身だ」


「す、すいません」


「いや、いいんだロキ君。続きを話そう……」


「ならば私が話す。……私たちレヴェイは、式神ソラ博士によって作られたが、実際には彼女だけでなく、その研究に賛同した多くの研究員達の存在もあった。そして、式神博士を含む全ての研究所員はある日、政府によって消された。ヒューマライズに人格を与えたという事実が発覚した為に……。その場所が、ドラグレスク研究所だ」


「……」


「カルマ以外のレヴェイは、のちに目覚めている。だから実際に式神博士たちと時間を共にしたのはカルマだけだ。カルマは、共に過ごした親ともいえる存在達の結末に、罪悪感を抱いている。自分さえ生まれて来なければ彼らは、あんな死に方はしなかったと。カルマが倒れる程の負の念とはそういう事だ。……マルクスさんさえ、空気の淀みを感じる程ならばレヴェイであるトトニスが、何も影響を受けない方が不自然だ」


「トトニスちゃん……」


「カルマ……」


 自分の存在に罪悪感を抱きながらも、同じ運命を背負った仲間には最大限の愛で答えようとしていたカルマの思いを改めて実感するロキ。

 それは、ただ最初に生まれたから……、ただ長の役割としての責任……という訳では無い。それを一人で何年も、弱音の一つも吐く事無くここまで守り続けてきたんだと……、自分へのカルマの態度を思い出し想像する。そして、この時ロキは初めてマルクスの言っていた“王に相応しい”の意味が分かった。


 ガタッ……


「え?」


「……マルクス、トトニスを救出に行く……。同行を頼めるか」


 一同が振り返ると、カルマが立ってた。……しかし足取りはおぼつかず、今にも倒れそうな様子だ。


「カルマ!?」


「気づいたのかい、カルマ……」


「トトニスが危険だ。いつまでも寝ていられん。行くぞ」


「ダメだカルマ! 私が許さん!」


 カルマを制止したのはクリオネだった。


「……お前に止める権利など無い。……行くと……言ったら行く!」


 しかし、その制止を跳ね除けマルクスの方に歩み寄るカルマ。


 その時だった……


「いい加減にしないさい!! 自分が自分がって……、偉そうな事言う割に、フラフラじゃない。私はね、あなたに一人でそんな責任を背負ってほしいなんて微塵も思ってない。あなたもみんなと同じ、たった一人に過ぎないの。もっと周りを頼りなさい。……あなたは、失う事を怯えすぎてる。今回は、その弱点を突かれたんだから、それを補ってくれる仲間を信じて託しなさい。私だって、一人じゃあなたを作れなかったのよ!」


 声を荒げたのは、レンだった。突然の出来事に周りは固まった。


「か、母さん……?」


「レン!?」


 カルマに歩み寄るレン。そして更に続ける。


「ここまでよく頑張ったわね、カルマ。あとは、母さんに任せなさい」


 その言葉を聞いたカルマは、安堵の表情を浮かべ一筋の涙を流し、レンに倒れ掛かった。そしてそのまま眠ってしまった。



ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


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