第百十七話 人質
――夜
「カルマ、約束破ってごめん……。けど、私は二人を放って置けない。政府がレンちゃんを狙う理由は知らないけど、危険な事に変わりはない。……だがら、私、行くよ!」
高台の木の前で、ひとりカルマに謝罪の言葉をつぶやき、トトニスはガルーダに乗った。
「行くよ! ガルーダ! 目標は先に飛び立ったあなたの仲間の下!」
――翌日 ――ジュヴェルビーク
「こちら通信班。カルマ。トトニスの端末から通信が……。ただ、相手がトトニスじゃない」
「……回してくれ」
「……了解」
「……カルマ・アステロイド……。こうして直接話すのは初めてだな」
「……貴様……誰だ?」
「リュシオル・シルバーガーデン。政府の者だ」
「……トトニスはどうした?」
「今は眠ってもらっている。……要求に答えてもらいたい。この状況の意味は分かっているな?」
「ちっ……、話せ」
「先に言っておくが、偽りは許さん。こちらでも状況は把握している。偽りと判断した時点で通信を切る」
「不要な確認だ。早く要望を言え」
「……式神ソラ博士に似たヒューマライズを知っているな?」
「順を追っての質問などいらん。あいつがここを訪れて間もなく、貴様らからの襲撃が始まった。理由は明白だ」
「流石、世界最高ヒューマライズと名高いカルマ・アステロイド。話が早い。ならば、聞かせてもらおうか。……何故、ヤツがそこから離れたのか」
「……何故その事を知っている?」
「状況は把握していると言ったはずだ。別にカマを掛けた訳ではない。」
「……見つけ出して、引渡せというのか」
「いや、確実に済ませたい。……もう一人、オーナーの少年がいるだろう。彼と二人でデュワロウェスク、ドラグレスク研究所跡地まで寄越してもらおうか」
「っ貴様……!」
「……三日以内としよう。三日後の正午までに、彼らが現れなければ、こいつの機能を停止する。話は、以上だ――」
「ちっ……」
そこへクリオネが駆け付けた。
「トトニスの端末からの通信が入ったらしいな。無事か?」
「……ああ。だが、状況はあまりいいとは言えん。人質に取られた」
「レンの引き渡しと交換条件という訳か」
「いや、ロキと……二人だけを寄越せと要求された。期限は三日」
「……破棄……という訳か。どうするつもりだ?」
「……」
――その頃 ――ロザンヌ
「マルクス、徴税に来たわよ」
「おや、ソフィア。今月は少し早いね。何か他に用でも?」
「あんたがしっかり見てないから面倒な事になったよ」
ソフィアは、ロキとレンが部下二人と居る映像を見せた。
「……どういう事だい?」
「ジュヴェルビークを脱走して、ネクロネシアでリュシオルに捕まってたところを私が保護した」
「……どうやってそんな遠くまで」
「知らないわよ。そんな事。それより、今日中にここに連れてくるから、あんた責任もってジュヴェルビークに送り返しなさいよ」
「……すまん。助かった」
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