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第百十話  秩序とそれを乱す者

 夜になっても帰宅しないルカ。異変に気付いた定吉はルカを探したが、手掛かりも無いまま一人での捜索では見つかるはずもなかった。

 捜索対象が人間であれば、捜索願いを出し、公に捜索するであろう。しかし、ヒューマライズの場合は違う。行方をくらますという事、それはすなわち、任務放棄を意味する。欠陥品として扱われ、ヒューマライズ法を犯す重罪となる。その末路は、焼却処分。定吉は、それを分かっていたからこそ、一人でルカを探し続けた。


 ……しかし、政府機関に管理されているヒューマライズ。法を犯した時点で彼女の運命は決まっていた――



 ルカが政府に確保された翌日、その知らせは定吉にも伝えられ、同時に定吉は、政府管理下の施設に収容される事となった。


「ルカは何処じゃ! 頼む! ルカと話をさせてくれ!」


「ダメだ、じーさん。あんたのヒューマライズは法を犯した。今からあんたには施設に入ってもらう。奴に会うのは三日後、破棄をする時だけだ」


「破棄じゃと……! わしは、あの子を破棄などせん!!」


「はーー……、全く……、威勢のいいじーさんだ。分かってんのか。法を犯したヒューマライズの破棄を拒めば、あんたも罪に問われる。場合によってはあんたの死を持って破棄なんて事にもなるんだぞ」


「わしは構わん。だが、あの子は若い。まだ人生を何も楽しんでおらん。助けてやってくれ!」


「人生って……。訳の分からん事を言うじーさんだな。奴は人形だ。道具に人生なんか無いだろ。それに、あんたが死ねば奴も破棄だ」


「……何故じゃ! 何故こんな事をする! わしらはただ普通に生活をしていただけ。なんでこんな理不尽な事が起こる? わしらが一体何をしたって言うんじゃ!」


「普通?……普通って何だよ。普通にしてたらこんな事にはなってない。あんたの普通が世界の普通とは違ったからこんな事になってるのが分からないのか? 乱したんだよ、あんた。秩序をな」

「……秩序じゃと」


「ヒューマライズは共通に与えられた万能な道具。普通に使って欲を満たし、普通に働かせて稼いだ金で税金を納めてさえいれば、それなりに裕福な暮らしもできる。普通にしてれば、こんな事にはなっていない。それから外れた行動をとる事が秩序を乱すという事だ」


「あの子は、わしらの子供じゃ。道具などではない。未来のある若者に変わりはない。自由に思うがままに生きてほしいだけじゃ」


「……あんた重傷だな。いいか、俺はまだいい。ただの輸送班だ。そんな事をこの先で待ってるお方たちの前で一言でも漏らしてみろ。一瞬で地獄行きだぞ。……あんたがする事は、三日後、おとなしく奴を破棄する事。それだけだ。それ以外は考えるな。……くそっ! なんでこんなじーさんなんか……!」


「(何なんじゃ……この狂った世界は……)」


 ――三日後、定吉はルカと再会する。しかし、定吉がルカを破棄する事はなく、この日から長い牢獄での生活が始まった。

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