第十一話 吾郎の過去
レンの父親だという吾郎の突然の告白に驚きを隠せないロキであった。
「……どういう事ですか? あいつは、俺を主だと言ってますが、あいつも俺と同じで記憶喪失か何かで、本当の主はゴローじいという事ですか? それともやっぱり、あいつ本当は人間って事ですか?」
混乱し、思いつく限りの憶測を立てるロキだったが、事実は違っていた。
「いや、すまん。勘違いをさせるような事を言ったようじゃ。レンちゃんは、ヒューマライズじゃ。そして、“かつて”ワシの娘だったと言うのが正しい。ワシはレンちゃんの主じゃった当時、彼女を娘として育てておった。もう、30年も前の事じゃ」
「え? 30年……前?」
「そうじゃ、レンちゃんはキミと新たに契約を結び、たまたまワシの前に現れたに過ぎん。今の主人は、キミじゃ」
「……」
「……それにワシは、あの子に許してもらえるような存在ではないのじゃ。もう会えるはずもない。会わせる顔もない。そう思っておった。しかし、何の巡り合わせか……。病院であの子を見かけた時、目を疑った。そして、困っているかつての娘そっくりのあの子に、思わず声を掛けてしまったんじゃ」
30年も前という事にも驚いたが、レンに対して大きな罪悪感を抱いている吾郎に対して、過去の事をまるで覚えていないレンの態度が気になるロキ。
「……ゴローじい、レンはあなたの事を覚えていない様子でしたけど、やっぱりあいつ記憶が無いんですか?」
「恐らく記憶は無いはずじゃ。無くて当然のはず。じゃが……」
記憶がなくて当然と言いつつも、確証の持てない様子の吾郎。
「……戦い方を知っているって事ですよね?」
「その通りじゃ。戦ってみて確信したが、あの子の動きは間違いなくワシの教えたものじゃ。……それに、ワシの料理の味を懐かしいと言っておった」
「……30年前、レンとの間に一体何があったんですか?」
「結論から言うと、あの子はワシの命と引き換えに命を落とした……」
「!!」
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