表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/201

第百六話  ドナー

 ……ドサっ!


「おーい、何か大きな音がしたぞー。なんっ……」


 台所から物音が聞こえ、様子を見に来た定吉が目にしたのは、床に倒れたニーナの姿だった。


「おいっ! ニーナ!!……ルカっ! ルカっ!! 母さんがっ!!」


 大声で叫ぶ定吉の声を聞いて、ルカが駆け付けた。


「……大丈夫、脈はある……。私は応急処置をするから、お父さんは救急に連絡をお願い。できれば、転送装置を使いたいって!」


 転送装置で病院に転送された三人。ニーナは緊急処置室に運ばれ治療を受けた。

 その後、何とか一命は取り留めたが、心臓に重大な疾患が見つかった。


「先生……、妻は……」


「今は別室で寝ていますが、今まで何も無く過ごしていたのが不思議な程だと申し上げておきます」


「そんな……。た、助かるんですよね?」


「ええ。幸い、今なら心臓移植がまだ間に合う段階です。しかし、猶予はありません。奥さんの様態が落ち着き次第、一週間後を目途に移植を行います」


「よ、よかったー……」


 ニーナが助かる術があると聞き安堵で定吉は腰を抜かしてしまった。


「お父さん、大丈夫?」


「あ、ああ。……ははは」


「でも、ホントよかったね!」


 冷静になった定吉は、心臓移植に使われる心臓の提供者が気になった。


「なあルカ。こういう時の心臓はヒューマライズから提供されるんじゃろうか?」


「それはそうだよ。脳死患者の心臓提供なんて昔の話だよ。ヒューマライズの心臓なら100%適合するものを移植できるし、倫理とか面倒な事も無いから心配いらないよ」


「……生きている者の心臓を貰うという事か……」


「だけど私たちはそういう役目も与えられた存在だから……。それに、基本的に稼働前のヒューマライズからの提供だから誰かの所有物をって訳ではないし」


「……」



 ――数日後、定吉は役所を訪れていた。移植をするには役所で申請が必要なのだ。


「あの……、妻が心臓の移植をする事になったのですが、手続きはこちらでよいですかの?」


「はい、それではこちらの契約書の内容をご確認下さい。ご承諾頂けましたら審査させて頂きます」


 契約書を確認した定吉は、その負担額に唖然とした。


「あの……、この内容ですと、移植後は心臓提供者であるヒューマライズの分の税金も毎月発生するという事ですか?」


「はい、勿論です。しかし、現在契約中のヒューマライズに倍の労働をさせか、新たにもう一体契約し、一体辺り1.5体分の労働をさせれば金額的に、無理は無いかと存じますが」


「なっ!!……は、はあ……そうは言っても……」


 困惑しながらも、まずはニーナを救ってからと自分に言い聞かせ、定吉は申請書を提出した。

 しかし、申請は下りなかった。


「残念ですが、この収入では審査は通りませんでした」


「ま、待って下さい。妻は直ぐにでも移植が必要な病状なんです! 今やらねば手遅れになる! 金は、わしが働いて何とでもします! お願いします!! なんとかなりませんか!!」


「審査の結果はお伝えしました。お引き取り下さい」


「人の命が掛かってるんだ!! あんた、それでも人か!! なんでそんな淡々と……。おい!! 目を見て話せ!!」


 どうにもならぬ状況に取り乱す定吉。その騒ぎを聞きつけ、町の統制を執る上層階級の代表者、セドリックがやってきた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


もし少しでも、面白い! 続きが読みたい! と思っていただけましたら、


ブックマーク、評価をお願できましたら幸いです。


とても励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ