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第百五話  ネクロネシアのある一家

 ――新暦200年  ――ネクロネシア 定吉宅


「さあ、今日からここがあなたの家よ。もう怖い事は何も無いわ」


「見ての通り、小さな小屋みたいな家だが、笑ってたらいい事もある! 笑って行こう! ふぁははっ!」


「…………」


「ほら、あなたが無意味に大きな声で笑うから困ってるじゃない」


「そ、そうか、すまん」


「謝る事はありません。……話しぶりから察するに、私は一度破棄され、新たな(あるじ)の下に来たという訳ですね。そして以前の境遇は人間であれば恐怖を感じるような境遇だった。記憶がリセットされているので、推測での対応になり、すいません。……しかし概ね推測どおりであれば、感謝をすべきですね。ありがとうございました。新しいご主人様、宜しくお願いします」


「そうかしこまらなくてもいいぞ。わしの事は、お父さんと呼べばいい。そして、こっちがお母さん。まあ、ちょっと年は取っているがな! ふぁははっ!」


「はい、お父さん、お母さん」


「そうだわ! あなたの名前、お父さんと考えたのよ」


「名前……ですか?」


「ん? どうした?」


「……いえ、番号や型番ではないのだな……と」


「ルカ」


「え?」


「今日から、あなたは“ルカ”よ」


「ルカ……。ふふっ……、あっ、すいません」


「ふぁははっ! ようやく子供らしく笑ってくれたなー! いいんだよ、それで」


 ルカは、少し照れた様子で、下を向いたまま頷いた。


「ふふふ! じゃあ、食事の支度でもしようかしらね!」



 ――それから数年の時が経った。


 ルカは町の学校で講師として働くようになっていた。


「ふぁははっ! 教え子にそんな優秀な子がな。きっとルカの教え方が良かったんじゃな!」


「ううん、私はサポート役だもん。優秀なのはその子の努力の賜物だよ」


「そうは言っても、わしや母さんには出きん仕事じゃ。すごい事じゃよ!」


「ははは……、ありがとう。……でも私がこの家に来てもう6年……、こんな一般職の低収入だけじゃ、厳しいでしょ?……ほら、私に掛かる税金……」


「そんな事は、子供が気にする事じゃないわい! ふぁははっ!」


「私、夜も働きに出るよ。働き口はいくらでもあるみたいだし。じゃなきゃ……」


「バカを言うんじゃないよ!!」


 止めたのはニーナだった。


「うっ!」


「そんな14、15の女の子が体を売るような真似、お母さんが絶対に許さないからね!!」


「お母さん、私は人間じゃないんだよ。ヒューマライズなんだから本当なら、そういう過酷職をする為の存在でもある。税金だって過酷職で得る収入があって初めて成立する額な訳だし……。何より、二人の負担になりたくないよ」


「……ありがとう、ルカ。その気持ちだけで嬉しいわ。でも私たちはあなたの事を負担になんて思っていない。それよりも、もっと自分を大切にしてほしい。貧しくたって、こうして食卓を囲んでご飯は食べられる。そこにあなたが居て、お父さんが居る。それだけで十分」


「お母さん……」


「そうじゃそうじゃ。母さんの言う通り。笑っていこう笑って。ふぁっははっ!」


「あなた、食べながら大笑いはよして下さい! 口からご飯飛んだわよ!」


「ふぁっははっ! すまんすまん」


「ふふっ!……うん、分かった。お母さんが言うならそうする」



 ――そんな日常が続いたある日、それは突然起きた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


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