第百三話 牢獄の老人
ガルーダに乗りジュヴェルビークを抜け出したロキとレン。海を越え、大きな町に降り立った。町の名はネクロネシア。しかし、魔獣にから降りてきた二人はそのまま警備隊に連行され、監禁されるのであった。
そしてそこで、定吉と名乗る一人の老人に出会った。
「定吉さん……、そうだ! サダじいって呼んでいい? なんだか、リトルリヴェールの人たちの名前の雰囲気あって懐かしくって」
「ロキ! そんな会って間もないのに、仇名でなんて失礼だよ! それに、面識の無い目上の人にタメ口なのもロキにしては珍しいし」
「え?……あ、ホントだ! おじいさん、すいません。なんだか雰囲気がお世話になった人に似ててつい……」
「ふぁははっ! ホントに面白い坊じゃな。なんとでも呼べばよい。それに、リトルリヴェールとは……わしこそ懐かしいわい」
「え? サダじいは、リトルリヴェールを知ってるの?」
「知っとるも何も、わしの生まれ故郷じゃよ」
「わっ! ホントに偶然だ! 俺たちもリトルリヴェールから来たんだ! サダじい、式神吾郎って知ってる? 俺たち、ゴローじいにお世話になったんだ!」
「おお、吾郎さんかい。子供の頃に、よく遊んでもらったわい! そうか、“ゴローじい”か。そりゃ、わしが“じい”ならそうなるのう!」
「ねえ、サダじい! 俺たちいつか必ずあの町に戻るって決めてるんだ! その時、サダじいも一緒に行こうよ!」
「ってロキ、この状況分かってる? 私たち、捕まってるんだけど……」
「ふぁははっ! 嬢ちゃんの言う通りじゃな。いや、しかし、楽しい坊……いや、ロキ君にレンちゃんじゃったな。ところで二人は、そもそもなぜこの町に?」
「育成師を探してて。名前は、“レイチェル・フィルエーテル”。大きな町なら情報が得られるかもしれないと思って」
「育成師のう……。そうか、すまんが、わしでは力になれんわい」
「いいよいいよ。それより、まずはこの状況をどうするかだ。どうする、レン?」
「まずは、大人しく待ってみよ。見回りさんたちの動きを観察して、チャンスを待つのがいいかも」
「ほう、レンちゃんは冷静で的確じゃのう。気持ちで行動しようとするロキ君の手綱持ちと言ったところかの。いい奥さんになりそうじゃわい」
「おお、おお……お、奥さんって、そそ、そんな!」
「ロキ、テンパり過ぎ……」
そんな話をしていると、階段を下りてくる足音が聞こえてきた。塞閉された空間に足音は良く響く。どうやら近づいてくるのは、一人ではないようだ。
やがて、見回りの男と、手錠を掛けられた一人の女性が牢の前で立ち止まった。
「さあ、じいさん……、破棄の時間だ」
「お父さん……」
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
もし少しでも、面白い! 続きが読みたい! と思っていただけましたら、
ブックマーク、評価をお願できましたら幸いです。
とても励みになります。
 




