第百二話 ネクロネシアの牢獄
「ロキ! あの町!」
「ああ! かなり大きな町だ! あそこに降りてみよう! 急降下になるからしっかり掴まってな!」
「うん!」
ギューーーン――
口笛を吹き、怪鳥を急降下させたロキ、高度が最低まで下がるタイミングを見計らって、レンと共に飛び降りた。
「よっと!……ふー、なんとか降りれた……。レン、大丈夫か?」
「うん! 着地成功!」
町の近くに降りた二人は、早速町へ向かった。
――
「……まだ夜が明けたばかりだし、さすがに静かだな」
「繁華街の方に行ってみる?」
と歩き出して間もなく、二人は警備隊に囲まれた。
「魔獣から降りてきた二人に間違いないな」
「っく! なんなんだ、急に! 俺たちは怪しい者じゃない! 通してくれ!」
「そうはいかん。連行する」
「よせ! 放せ!」
手錠を掛けられる二人。そのまま、地下に連れていかれた。
――
バタンッ!
「ここで大人しくしていろ!」
「っぐ!……レン、大丈夫か?」
「うん、私はなんとも……」
「くそ! こんな檻ぶち破って……」
やけになったロキをレンが小声でなだめる。
「ロキ、あまり目立つのは得策じゃないと思う。ここは、一旦大人しく様子を見よっ」
「っう!……すまん、そうだな。……でもこんなとこにずっといたら、すぐに政府の奴らが来る。なんとか策を考えないと……」
二人が小声で話していると、後ろから声がした。
「おや? 新人さんかい? あんたら一体何をしでかした?」
振り合えると同じ牢に老人の先客がひとりいた。
「しでかしたって……何もしちゃいないよ! 俺たちはただこの町に来ただけで……」
「まあ、移動手段に問題があったと言えば、あったんだけどね……大胆だったかな?」
「ほう?」
「まあ、ちょっと理由あって、ジュヴェルビークから魔獣に乗ってここまで来たんだけど……」
「なんと! そりゃまた、面白い事をしでかしたのー!」
「面白いって……、こっちは全然面白くないよ……。それに、俺たち、こんなところにいたらまずいって言うか……」
「ロキ……、しゃべりすぎ。……それはそうと、おじいちゃんはなんでこんなところに?」
「まあ、色々とな。……そう簡単に馴染めん事もあるんじゃよ、年寄りは」
「もう、長いんですか?」
「そうじゃのう、こんなところにいると時間の経過も分からんくなるが……、ずいぶんと長くいるかのう……。まあ、ここを出たとて、一人じゃ。最後くらい意地の一つでも張って果てるつもりじゃよ」
「……じいさん。……何があったかは分からないけど、もし政府の勝手な都合を押し付けられてるなら、俺たちが力に……」
「ロキ! またそんな無責任な事を……」
「ふぁははっ! 面白い事を言う坊じゃな。お前さんだって捕まっておろうに」
「まあ、そうだけどさ……。はぁ……、あ、ところでまだじいさんの名前も聞いてなかった。この町の事とかも聞きたいし。……そっか。俺はロキ。で、こっちがレン」
「こんな老いぼれの名など聞きたいとは、ますます変わった坊じゃ。……よかろう。わしは、定吉と申す。そしてこの町の名は、ネクロネシアじゃ」
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