第百一話 真夜中の脱走
ジュヴェルビークから離れる事を決意したロキとレンだったが、東西双方の門の監視を掻い潜る事は不可能でしかなかった。そこでロキが考えたのが、高台の上空を回遊している怪鳥の背中に乗ってそのまま外に出る作戦だった。
上手くいく保証など無かったが、他に方法を考える時間も惜しまれた。
二人は、高台に向かう事にした。
「ねえ、ロキ。私、トトニスちゃんには、この事をちゃんと伝えておきたい」
「ああ、同感だ。手紙を書いてトトニスのとこまで持っていこう。トトニスのところなら高台の通り道だし」
「うん!」
ロキはレンと共に、トトニスに手紙を書いた。お礼、謝罪、そして自分たちの気持ちを込めて。
――牧場門前
ロキは二人で書いた手紙を門の扉に挟んだ。
「トトニス……すまん。また、どこかで会おう」
「……トトニスちゃん。私、ホントは直接会ってお礼が言いたい。手紙でごめんね。あなたに会えて心から良かった」
二人は思いを込めて、牧場を去った……。
――数分後、高台に到着した二人は遥か上空を舞う怪鳥を見上げていた。
「……ロキ、私、あの高さまで飛ぶ自信ないよ」
「ああ、分かってる。とりあえず、頑張って30メートルくらいは飛べそうか?」
「まあ、そのくらいならなんとか……」
「よし! なら、なんとかしてみせる!」
そう言うとロキは、トトニスがラムーたちを呼び寄せた時に見せた指笛の要領で怪鳥に向かって指笛を吹いた。
……しかし、全く音が出ない。
「……ロキ、音……してないけど」
「まあまあ。見てなって」
特にしくじっている様子ではないロキ。
しばらく続けた次の瞬間だった。
怪鳥がロキたちに向かって急降下してきた。
「よし! レン、突進をかわしたら、あいつが上昇するタイミングで背中めがけてジャンプだ!」
「え? う、うん! おっけ!」
ブワッ!!
「今だ! 乗るぞ!!」
二人はタイミングを合わせて怪鳥の背中めがけてジャンプした。怪鳥の上昇速度は物凄いものだったが、二人ともなんとか背中に掴まる事ができた。
「よし!! うまくいった!」
「ふう……、なんとかね。でも音してなかったのになんで降下してきたの?」
「俺たちには聞こえてないけど、こいつには聞こえてたって事だ! トトニスに教えてもらったんだ。特定の一匹だけを呼ぶ時には、人には聞こえない周波数だけど、こんな方法があるって。まさか、一発でこんなにうまくいくとは思わなかったけど」
「にしても、これからどうする?」
「とりあえず、三人目の育成師に会いたい。その人が俺を知っているかは置いといて、育成師くらいの強さを持った人に稽古をつけてもらって、今よりもっと力を付けないと……。もうマルクスさんのところに行ってもたぶん連れ戻されるだろうし」
「そうだね。元々マルクスさんの提案であそこに残ったんだし。……ねえロキ、私のせいで、ごめんね……」
「何言ってんだ。それより、レン、三人目の育成師の居場所とか分かったりしないか?」
「居場所までは、分からないけど、名前くらいなら分かる。名前は、“レイチェル・フィルエーテル”だよ」
「なんだか難しい名前だな。まあでも名前だけでも分かれば、何も情報が無いよりは、動きやすい。一旦、このまま空から大きな町を探そう。そこで情報集めだ」
こうしてロキとレンは、そのまま怪鳥に乗ったまま、大陸を渡った。
そして夜が明けようとした頃、大きな町が見えてきた。
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