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第百話  決断

 カルマが自宅に戻ると、家の前にロキとレンの姿があった。


「ノイさん……?」


 カルマ以外にノイの姿がある事、そのノイがカルマの肩を借りながら歩く様子に疑問を感じるロキ。

 そんなロキを他所目に無言で過ぎ去ろうとするカルマ。


「な、なあカルマ……」


「……帰れ。話す事など無い」


 瞬間、布で覆われたノイの体から僅かに見えた血痕にレンが気づいた。


「ノイさん……血が……」


「はははっ! なーに、大した事は無い! こんなのは、唾でもつけとけば治るさ!」


「で、でも顔色が……」


 立ち上がり、強がって見せたノイだったが、血を流しすぎた。一瞬ふらつき、咄嗟に効き手である左手をつこうとしてしまった。


「ノイさん!!……手が!!」


「だ、大丈夫だ、このくらい……」


「で、でも!!」


「いいから帰れ!! お前ら!!」


 見かねたカルマが声を荒げる。


「うっ!」


「行くぞ! ノイ!」


「カ、カルマ! 待ってくれ!」


 呼び止めるロキを突き放すかのように部屋に入っていくカルマ。

 立ち尽くすロキ。


「……ねぇ、ロキ……今日は帰ろ?」


「……あ、ああ」



 ――帰り道、どちらかと言えば冷静を保っていたレンの手が震えている事にロキが気づく。


「レン……」


「な、なに?」


 無意識にレンの手を握ってしまった。


「ちょっ!! なな、なに!? いきなり!」


「え? あ!……い、いや……すまん。手、震えてたから……」


「……な、なんだろう。……止まんなくて……」


 感じた事の無い感覚を言葉で言い表せずにいるレン。しかし、それは紛れもなく恐怖であった。


「ねえロキ……。私がいなかったら、ノイさんはあんな目に遇う事は無かったよね……」


「レン……、お前……」


「私……なんだよね?」


 レンは気づいていた。皮肉にも、感情が芽生えた事で、主以外の他者への犠牲の念を辛いほど感じてしまうようになってしまったのだ。……いや、それ自体はあるべき姿なのかもしれない。問題は、レンが理不尽にも政府に狙われている事。


 確信を突いたレンの質問に対し、ロキは頭の中でジュヴェルビークを出る決断をしていた。

 質問の答えに時間が掛かるロキの顔から、レンは察していた。


「ロキ、大丈夫。私も同じ事考えてる」


「……なら、今夜が最良の機だ。政府の連中も今夜の襲撃で疲弊しているはず。直ぐにここへ来る事は考えにくい。それに、カルマにこんな事が知れたら、絶対に連れ戻される。ノイさんの治療に当たっている今なら、カルマも気づかない。時間が経てば、感のいいカルマの事だ。早い段階で気づかれる」


「そうだね、じゃあ、荷物まとめたら、直ぐに行こ」


 こうして二人は、ジュヴェルビークを出る事にした。


 お世話になったジュヴェルビークの人たちへの挨拶、そして、明日また会おうと交わしたトトニスとの約束、そんな事が頭に残るロキの苦渋の決断であった。



 グローサ一番隊――


斑鳩(いかるが)さん! お見事でした! やっぱり斑鳩さんと紫夜雨(しゆう)さんが組んだら最強ですね! ノイも戦線から離脱。これで奴らの戦力もガタ落ちですって」


「……」


「どうしたんですか?」


「下らん事を話す暇があったら、敵の戦力くらい読めるように鍛錬しろ。それ以上私を侮辱するなら隊から外すぞ」


「そそ、そんな! 僕が、斑鳩さんを侮辱はずなっ……」


「奴は、私の首を跳ねていた。……だが、しなかった。方や私と時朗は二人掛かりで左腕を奪う事のみ。……それだけの差がある。いや、そんな事はどうでもいい。問題は奴はあの程度では確実に復帰する事。奴らの戦力は僅か程も削られていない。……貴様は私にそんな無様な話をさせたかったのか」


「そ、そんな……」


「分かったら今日はもうその顔を見せるな。今の私は機嫌が悪い」


 ――



ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


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