ブラック・マジック・ブラザーズ 毒蠍編・中
激しい魔術バトル開幕、毒蠍編!!
その街ではある兄弟の魔術師が探偵をしている。ブラック・マジック・ブラザーズ探偵事務所。この日、事務所の扉を開いた依頼人は、青白い肌、痩せこけた中年の男だった。着ているスーツも上着のコートもヨレヨレにくたびれていた。
男は激しく動揺し、何かを怖れているように背後ばかり気にしていた。
「こちらへどうぞ」
ヒューイが応接用のインテリアチェアに座るように促す。中年の男は軽く会釈して席に座った。ロイドとヒューイがその向かいの席に座っていた。ヒューイは優しい声色で接客的に対応しながら、何かを感じ取ってロイドは疑り深く、それぞれ依頼人をよく観察し、そして警戒していた。
実は二人には彼が来ることは事前にわかっていた。一般人に魔術的トラブルがあった場合、それに対処する窓口となるこの街の魔術師協会から斡旋された仕事だった。この街で魔術師が魔術専門の探偵稼業をするならば、魔術師協会の依頼を断わることは原則できない。
「犯人が誰なのかはわかりません。ですが今魔術を使う何者かに命を狙われているんです」
単刀直入だった。怯えながら落ち着きのない様子で依頼人の男が話す。ヒューイは温かいコーヒーをすすめた。男は少しだけそのコーヒーを口にすると、焦って飲んだのかむせて咳き込んだ。
「大丈夫ですか?」
ヒューイが心配して近付いた。
「ヒューイ、ソイツに触るな!」
突然怒鳴るロイド。しかし一瞬ヒューイは判断が遅れた。依頼人の男の口から咳きとともに飛び出した小さな蠍は、尻尾の毒針でヒューイの手を深々と刺した。
「え?」
何が起きたのか、何でこんな場所に蠍がいるのかわからず疑問の表情のままヒューイは床に倒れた。
「おい、ヒューイ、大丈夫か?」
ヒューイを抱き起こすロイド。
依頼人の青白い肌の男がテーブルに突っ伏していた。
息はない。ただ操れていた死体だったようだ。
「ロイドくん、ゲームをしよう」
依頼人の青白い肌の男の死体が焦点の定まらない目で話しをしはじめる。
この続きをお楽しみに!