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第9話 生意気なメッセンジャー

「ふ〜…いい運動になったわ…」


約10分かけて部屋に戻った私は少し部屋で休憩してから外出することにした。お気に入りのソファに座り、部屋の壁掛け時計を見ると時刻は午前10時を過ぎている。


「もう10時過ぎていたのね…。この時間なら全ての商店が開いているわね」


…それにしても喉が渇いた。東塔と南塔を2往復…片道10分×4回で40分もウォーキングをしたことになる。…決めた。今度は例え呼び出されても絶対にこっちから行ってやるものかと心に決めた。大体呼び出した本人達が来るべきなのに、何故私一人が呼び出され、屋敷の端から端まで日に何往復もさせられなければならないのだろう?全く理不尽な話だ…。


そんな風に思っていると扉をノックする音が聞こえてきた。


コンコン


「奥様。お時間よろしいでしょうか?」


ノックの主はブランカだった。ナイスタイミング!彼女に何か飲み物を持ってきてもらおう。


「どうぞ〜」


ソファに座ったまま扉に向かって声を掛けると、「失礼します」と言ってブランカが部屋の中に入ってきた。


「丁度良かったわ。ねぇブランカ。何か飲み物を持ってきて貰える?」


「かしこまりました。どのようなお飲み物が宜しいでしょうか?」


「そうね〜本当ならスポーツドリンクかカロリーゼロのコーラが飲みたいところだけど…」


「え?スポーツドリンク?コーラ?一体何の事でしょう?」


首を傾げるブランカ。うん、そうなんだよ。この世界ではスポーツドリンクもコーラも無いのが辛いところだ。


「う〜ん…スポーツドリンクっていうのは運動や汗を掻いた時に飲む最適な飲み物で…コーラって言うのは…まぁいわゆる飲むと口の中でシュワシュワする味のついたジュース…みたいなものかなぁ…」


するとブランカが言った。


「え?口の中でシュワシュワする飲み物ですか?そう言えばこの間行商人の人が屋敷に来た時に言ってましたよ。最近町では子供でも飲めるシャンパンみたいなものが流行しているそうです。え…と、確か…あ、ソーダ水って言うそうです」


「え?!ソーダ水があるのっ?!」


知らなかった!この世界にあの炭酸水があるなんてっ!これは是非町に出掛けたら飲んでこないとっ!なら今は飲み物を諦めてすぐに出掛けよう。


「それじゃブランカ、私出掛けてくるわ!」


ソファから立ち上がるとブランカが慌てたように言った。


「あ!お待ち下さい!実は今メッセンジャーが奥様に伝言があると言ってこちらに来ているんです」


何だか果てしなく嫌な予感がする。


「伝言て…誰からなのかしら?まぁ、いいわ。それじゃそのメッセンジャーに入ってもらうように伝えて」


再びソファに座って腕組みするとブランカに言った。


「はい。少々お待ち下さい」


ブランカは部屋を出ていくとすぐに入れ替わるようにメッセンジャーの男性が部屋の中に入って来ると挨拶も無しに言った。


「奥様。ラファエル様が至急来るようにとお話しされております。すぐにいらして下さい。10分以内にね」


そして口元にニヤリと意地悪そうな笑みを浮かべて私を見た。


キツイ吊り目の若者…使用人のくせに態度がでかいこの男は足が早いだけが取り柄のラファエルのメッセンジャーだ。名前は…オータムだっただろうか?

この生意気男は今まで私の事を随分馬鹿にしてきた嫌な奴だ。彼はラファエルからの伝言を何時も私に伝えに来る役目を持っていて、私がそのメッセージに翻弄されて南塔と東塔を何度も行ったり来たりさせられたり、泣かされてきたのを傍で見ていた為か、何時もどこか私の事を見下していた。


だが…私は今までの私ではない。前世の記憶を思い出し、新しい自分に生まれ変わったのだ。だから言い放ってやった。


「いやよ。行かないわ」


「…は?」


オータムは一瞬何を言っているのだと言わんばかりに目をパチパチさせると私を見た。


「奥様…今なんと言ったのでしょう?声が小さくて聞き取れなかったのですけど?」


オータムはじろりと私を睨みつけてきた。…全く使用人の分際で私を睨みつけるとは…。以前までの私ならここで震え上がっていたかもしれないが、そうはいかない。


「聞こえなかったの?それなら何度でも言ってあげるわよ。私はラファエルのところへ行かない。用があるなら自分からこっちへ来るように言ってたと伝えてきなさい」


腕組みしながら私はオータムに強い口調で言った。


「…チッ!」


すると何ということか、オータムはこれみよがしに舌打ちをしてきたではないか。

若造のくせに何て生意気な…!


私はソファから立ち上がった―。





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