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6 入学式

入学式は、サラにとっては新鮮なものであった。


見知らぬ人間が代わる代わる登壇し、役に立つのか立たないのかわからない話をする。人の話を長時間聞くという経験がなかったサラにとってはその全てが興味深い。


「保定されているわけでもないのに、みんなじっと話を聞いていてすごい…」


『感動のポイントが謎だ…』


話に飽きたサラがうとうとし始めた頃、この学園の生徒会長が壇上に上がった。色黒でまじめそうな風貌だ。だが、筋肉はしっかりついている。


「神様!あの方…あの方の馬体…じゃなくて身体も素晴らしいですね?!」


『よく分かったな。彼も攻略対象だ。名前はカールデアグローセ』


カールデアグローセ!3歳児にマイルのG1とダービーをそれぞれレコードで勝利した名馬だ。やはり彼も多くのG1馬を輩出しており、リーディングサイアーにも輝いた。


リーディングサイアーというのはその年の種牡馬ランキングの第1位のことである。


ちなみに、プロフォーンドは10年近くもリーディングサイアーを連続で獲得していた。


『カールとの出会いイベントはまた明日だな。今日はとりあえず王子と悪役令嬢に会えたので良しとしよう。王子とは同じクラスだから存分に交流を深めるといい。アフィたんも同じクラスだからしばかれるだろうけど』


「…そういえば、アフィ様気絶してたけど大丈夫でしょうか」


『さあ…』


神様は、この世界の神である割に、意外と分からないことがたくさんあるようだ。



教室に入ると、王子の机の前に上級生がいた。この学園では学年ごとにネクタイの色が違う。サラはそんなこと知らなかったが、そのネクタイの色を見た瞬間情報が流れ込んできた。神様パワーはすごい。


「殿下ちゃん、最近お兄さんに会いに来てくれなくて寂しいよ~」


「ははは。ボクもそんなに暇じゃないんですみませんね」


その上級生はやたら慣れ慣れしく王子に話しかけている。王子は笑顔を作っているが、明らかに迷惑そうだ。


「神様…もしかしてあの方も攻略対象では?」


『おお!気が付いたか。まあ彼は、この世界でも一番の正統派イケメンだし…』


神様の言葉を遮って、サラは熱く語る。


「あの芸術的なまでに長い両脚…じゃなかった、手足!すらりと伸びる足を覆う筋肉には王子ほどのしなやかさはないものの上質な肉質を感じます。少しだけガニ股気味なのが気になりますね。ですがその短所を打ち消すほどの魅力があります。きっと彼の産駒…いえ、子供も強くなるでしょう!」


『せっかくものすごいイケメンを生み出したので、顔も見てほしい…彼はイケメンホースとしても有名な名種牡馬・ルクールプルーフだ』


ルクールプルーフ…!彼は現役時代、唯一プロフォーンドに土をつけた馬だ。イケメンホースとして有名なことは全く知らなかったけれど。


国内のG1レースはプロフォーンドを負かしたレースしか勝っていない。しかしあのプロフォーンドに唯一先着した馬である上に、海外のG1レースも勝っていることから評価は高い。


彼の子供たちもやはりG1を勝っており、種付け料は800万円にもなる。


「ん?なんか可愛い子ちゃんが俺のこと見てる…やっぱ俺がカッコよすぎるから?」


「何言ってるんですか。あなたのこと見てる人なんて…」


そう言いながら王子はルクールの視線の先を見る。そしてサラの姿を認め、少しだけ目を細めた。


「ああ、君か」


「殿下、知り合いなの?」


「いいえ。でも…」


ルクールの言葉に、王子はいたずらっぽい笑みを浮かべて言う。


「興味があるんです。彼女に」


『キャーーーーっ!王子!これはトキメキポイントが高いっっ!』


サラより先に反応したのは、神様だった。


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