page 1『コウモリ』
『おはようございます。転生者様。』
…何者だ。無機質な…冷たい声が頭で響く。頭が痛い…僕は…どうなったんだ…。
『先に事実だけ申し上げます。貴方様は死にました。』
…は?
待て待て、要件だけ率直すぎる。なんだ?いきなり貴方は死にました…って。
『ご自身で思い出される方が宜しいですが、申し上げますと貴方様は交通事故で死んだ…極普通の高校生でした。顔も普通、背丈も普通、性格も普通、勉学も極めて普通、運動も…。』
…やめてください。
そこまで普通普通って言われたら、悲しくて泣けてきちゃう。
『失礼しました。失言をお許しください。』
…しかし、君は何者だ?
僕はその後、どうなった。
『私は〈鑑定者〉。この世界におけるガイドのようなもの。そして、貴方様は『とあるプログラムにおけるデバッガー』として、この世界に転生されました。それ以上の発言は私には許されておりません。』
…許されておりません?
て、ことはお前の上に誰かいるってことなのか?しかも、僕がデバッガーって…。この世界はなんなんだ?
『…それはご自身でお確かめください。転生者、改め我が主。』
…おい。おい。おい!!
…声が聞こえなくなった。
しかし、手足の感覚がない。視界はあるが…まるで藻が浮いている水面の中のようで…気持ち悪い。上下も逆さまだし…。それに、なんだこれ?
どうすりゃ良いのさ、ブレインさん。
『発言致します。貴方様は今、姿を変えられております。レベルを上げればスキル『人化』を獲得でき、現在の姿より変えることができると思われます。』
…スキル?レベル?
ここはゲームの世界か何かか?
『はい。現世ではゲームと呼ばれるような世界ですが、それ以上の発言は許されておりません。現在、貴方様のスキル、レベル、ステータスを表示いたします。』
???
種族名:スモールバット
HP1050
MP3600
スキル『鑑定者レベル1』『吸血レベル1』『捕食レベル1』
…低いのか、高いのかわからん。
しかし、スモールバットだと?僕はコウモリなのか?
『その通りでございます。』
…コウモリの視界ってこんなんなのか、初めてみた。全くあってもなくても同じだな。で?他のところはっと…。
『鑑定者レベル1』ってのはアンタだろ?それが僕のスキルってことは…並行意識みたいなもんか。で、他の二つは…。吸血?…まぁ、ゲームでコウモリといえば…って感じか。
で、捕食。ただ食べるだけ…かな?
とりあえず当分の目標はレベル上げか。視界が開けるようになるまではブレインさんの指示に従うから、なんか言ってねぇー。
『承知しました。それでは…。』