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第5話 人類存続機構

 優は自身に宛がわれた部屋に戻っていた。別に戻りたくて戻ってきたわけではない。地球が滅びて死の星になっていると聞いて心中穏やかではない。しかし、それを聞こうとしたが断られたのだ。




「地球が崩壊して死の星って…………………。一体何があったんですか!!?」

「声が大きいぞ! 個室とは言えこの部屋は防音になっていない。声のトーンを下げろ。」

「教えてください!」

「それは…。いやだめだ、断る。」

「何故ですか!?」

「話が長くなりすぎる。もうこんな時間だ。私は明日任務で朝が早い。今日はお開きだ。」


 そう言うとさっさと店を出てしまった。もちろん勘定はない。

 戦争中で任務に着く人間にさすがにこっちの事情を優先しろとは言えない。優は渋々部屋に戻った。

 部屋を改めて見渡すと小さな冷蔵庫がある。覗いてみると中は空っぽ。

 そう言えば、パブで料理をまともに食べてないな。売店でお握りと、短い間かもしれないがせめて水くらい常備しておこう。

 そう思い売店に行くと、パブに行く前のお姉さんがまだレジに立っていた。品物を入れたカゴを渡して何気なく顔を見る。

 ……………………………………………………………………………………マジか。

 そこにはこの世の物とは思えないほど美しい、絶世の美女が立っていた。さっきはこの世界のことがわからず相手を見る余裕もなかったが、改めて見るとアルビノを疑うような真っ白な肌。短く切り揃えた金色の髪。サファイアを埋め込んだのかと思うほど青い、吸い込まれそうな丸い大きな瞳。意識しなければ自然と目がいってしまうほど自己主張の激しい胸。その胸から腰の括れに至る体のラインは大人の女性を示しながら、顔はまだ幼さを残している。腰から下はカウンターに阻まれて流石に見えないが、その容姿は優の好み直球ど真ん中ストライクだった。


「ありがとうございました~!(*^-^*)」


 品物を渡すためその幼さを残した顔があどけない笑顔を作った時、心臓を撃ち抜かれた。


「あ、あ、あ、あり、あり、ありがとうござましゅ(;’’∀’’)。」

「(*^-^*)?」


 ただのお礼をカミカミになり、動きはロボットのようなギクシャクした動きをしながらレジを離れる。店の前の通路の壁に寄りかかって呼吸を整えようとするも、動機が激しすぎて中々整わない。何という衝撃! 撃たれた時と同じかそれ以上だ。

 チラッと目線だけを上げて再びレジに目をやると、優に向けたのと同じ笑顔で別の客を相手にしている彼女の姿。

 うぉぉぉぉぉ、見ただけでまた息が激しくなる! これが一目ぼれってやつか。。。


「ガブリエラ、交代だ。」

「あ、ミカエル。うん、わかった。よろしくね!」

「お疲れ。」


 優がそんなことを考えているうちに、勤務の交代が来たのかガブリエラと呼ばれた女の子はバックヤードに姿を消した。

 そうしてやっとこさ呼吸が整ってきた優だが、交代で現れた女の子にも目を奪われていた。

 なんじゃありゃあ。今度は褐色肌、ロングヘアの金髪で目はルビー色。胸も先の子と良い勝負。目がやや吊り上がり気味で勝気なイメージがする。こっちもとんでもない美少女だぞ!?

 交代で現れた女の子も先の子と変わらず、絶世と言っていい容姿の持ち主だった。

 しかし、それだけではなかった。部屋に帰る際にすれ違った女性もまた、モデルと見まがうような美しい容姿とプロポーションの持ち主だった。赤いモジャモジャ髪がとても目立つ。迷彩柄の洋服を着ていたため軍人だろう。

 ここ、女性のレベル高すぎだろ!? それともあの3人が特別なのだろうか?

 そんな優の予想をこの世界はさらに上回ることになる。



 

 次の日の午前中は自由時間だった。とは言っても宿舎から出られない以上、特に行くところもない。幸い昨日買った新聞、雑誌と部屋備え付けのTVがあるのでそれを見て暇を潰す。少しでもこの世界のことを知らなければ・・・。


『GMによるナイアース強襲!!軍の活躍により撃退!!!』

『一体どこから!? GMのナイアース強襲。防衛線は崩壊、復旧には数か月かかる見込み』

『GMのナイアース奇襲、総司令部は艦隊の配置を変更することを検討』


 新聞の見出しはやはり優が襲われたあの戦いを大きく報じている。その中で分かったことは、ここナイアースはエイアースと呼ばれる人類の本拠地を守る最終防衛ラインだということ。正確にはこのナイアースを中心に防衛ラインを引いているため、ここを落とされるとそれ以外の防衛線が孤立かつ無意味になり、エイアースと呼ばれる星は丸裸になってしまう、超重要拠点だということ。

 そして雑誌にはさらに驚愕の事実が載っていた。


『β-2276宙域で敗北! ダイナソーズに資源衛星β(べーた)AAB(エーエービー)奪取される!!』

『γ戦線で動きあり、メガラット共の動きが活発化! 大攻勢の予兆か?』

『アグリーフェイスの攻撃激化! Δ戦線へ早急に援軍を派遣せよ!』

『バグズがε戦線イーシタン基地を強襲!! 現在激戦中!!』

『驚愕!! ビーストアークによる新戦術によりΖ戦線壊乱中!!』


「………………………………………………………………………………。」


 思わず絶句してしまう。β-2276宙域、ダイナソーズ。γ戦線、メガラット。Δ方面、アグリーフェイス。バグズ、ε戦線。ビーストアーク、Ζ戦線。これらの単語と記事の中身からある事実が浮き上がってくる。

 人類が戦っているのはGMだけではない。少なくとも6つの種族と同時に戦争をしている。

 目を覆いたくなる。どうやら予想以上にとんでもない世界に来てしまったようだ。てかこれ人類滅ぶんじゃね?

とりあえず、TVをつけてみる。


『GMによる被害は、確認されているだけでも275の防衛陣地と168の対空陣地が潰されており、現在軍が復旧に全力を挙げている模様です。ここ、ナイアースが強襲されたという事実、さらに各戦線における敵対勢力の活発化に銃後の人々の不安は高まっています。ここでナイアース復興広場にミーモ記者が行っています。ミーモ記者より現地の人々の声を聞いてみたいと思います。ミーモさん?』


 場面がスタジオから広場らしきところに代わり、画面にうさ耳をつけた女性が映し出された。


『はいはーい、ミーモです! 私は今ナイアース復興広場に来ています。あのような襲撃があったにもかかわらずここ復興広場は多くの人で賑わっています。幸い、町に被害がなかったからですかね。私達人類のしぶとさと力強さを感じますね~。それでは町の人々に今回の事件の事を聞いてみたいと思います。へい!彼女!』

『ふぇ!? は、はい。なんでしょう?』

『今回のナイアース襲撃に関して一言お願いします。』

『え、えっとあのそうですね・・・。艦隊による防衛線が機能しなかったのは問題だと思います。早急な配置転換を行うか、警戒を厳重にして対応してほしいです。』

『軍の想定が甘かった。その責任があると思いますか?』

『それはもちろん・・・。ですが、防衛隊の皆さんが頑張ってくれたからこそ町に被害は出ていません。艦隊司令部の皆さんにはその犠牲を忘れずにいてほしい、この犠牲を無駄にしないためにも責任をとって新たな防衛線を構築してほしいです。』

『なるほど…。いきなり罷免は妥当ではないということですね。ありがとうございました!それでは次!へい、そこのあなた!』

『ん、私か?』

『Yes!』

『そうだな・・・。確かに艦隊は長くナイアースに敵を近づけなかった功績がある。しかし、今回の失態は総司令部の人員を総入れ替えしてもおかしくないくらいだと私は考えている。敵を近づけなかった、がいつの間にか敵は近づけない、という認識にかわってしまっていたのではないか? 慣れはやがて慢心に繋がる。思い切った人員の配置転換も必要だと愚考する次第だ。』

『おおう!厳しい意見ですね。ありがとうございました!最後に・・・そこのおねーさん!』

『む?うちか?そうやなー、やっぱりこんなことがあると不安で仕方ないわ。他の戦線も苦戦しとるようやし、軍だけじゃなくて政府の方針にも問題あるんちゃうかー。はっきり言てこのままじゃ、じり貧やわ。』

『おおっとぉ!軍だけではなく政府の方針にも言及しましたか!これは次の選挙でどんな影響が出るかわかりません!以上、復興広場より町の人々の声をお届けしましたー。カメラをスタジオに戻しまーす!』


 画面がスタジオに戻るもアナウンサーはしばし沈黙。


『………相変わらずね彼女。以上のようにエンダーブルクの町民たちの間には少なからず動揺が広がっており、政府は早急な対応を迫られる模様です。続いてのニュースは戦艦の生産に遅延が発生している模様です。理由に今回の襲撃により航路の安全の確保が確かなものではないという不安から資源の輸送に遅れが・・・・・。』


 ………………………なんだ…このインタビューは? これで苦情が来ないのか? 

 その後もニュースは戦争関連ものばかりだった。軍人はパブで一進一退とかいっていたけど内容から戦況があまり芳しくないのは明らかだ。

 もう一つ気になるのはニュースで映る人々だ。アナウンサーも記者も、さっきの復興広場?とかで映っていたのは皆女性だった。それも皆美人。一人として普通以下の容姿の人がいなかった。男性どこいった?

 最後に、この世界には選挙があるということがわかった。これはつまり、この国が民主制を採用しているということ。すなわち、戦争中ではあるがある程度の言論と思想の自由が認められているということだ。現に広場でインタビューに応じた人たちは何の躊躇もなく、軍や政府の対応を批判していた。これには少しだけ安心。

 軍人が帰ってきたら更なる疑問をぶつけてみよう。




「おう、いい子で待っていたか?」


 日が傾きかけたところで軍人が宿舎に戻ってきた。昨日、病院のカーテン裏で隠れていた3人も一緒だ。どうやら同じ部隊らしい。


「おかげさまで。この後、お時間あるならまた色々聞きたいのですが。」

「そうか、こちらも話があるから丁度いい。ブリーフィングが終わる30分後ぐらいにまた君の部屋で会おう。」

「了解。」


 30分後、ブリーフィングを終えた軍人が優の部屋に来た。


「それで、聞きたいこととは?」

「雑誌や新聞、ニュースでわかったことがあります。人類はあのGMだけじゃなく、それ以外に6つもの種族と戦争を繰り広げていること。政治形態が民主主義であること。」

「確かにその通りだが、まさかそんなことも知らなかったのか!?。」


 しゃあないでしょ。こちとらこの世界にいきなり投げ出されたんだよ!


「単刀直入に聞きます。この世界の人類は一つの政体でまとまっていると見てよろしいのですか? もしそうなら国の名前は? 出来れば歴史についても知りたいのですが。」

「ふむ、そうだな。世間知らずの仙人、もしくは野生児に教えてしんぜよう。」


………落ち着け優、現状頼れる人はこの人しかいない。


「人類存続機構、Human(ヒューマン) survive(サバイヴ) Organization(オーガナイゼーション) 通称HSO(エイチエスオー)。それがこの国の名前だ。その名の通り、人類の存続を第一に考えて1600年近く前に創設された。全人類統一政体だ。」


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