第2話 夢だけど、夢じゃなかった!
「うわぁぁぁぁぁっ!!」
叫びながら布団から上体を起こす。全身が汗でビッショリ濡れて服が体に張り付いている。ゼェゼェ荒い息をしながら優は自身の体を確認した。
「良かった…。夢か。」
体は何の怪我もしていなかった。夢で撃たれた右脇腹は昨日と同じ状態でそこにあった。傷跡らしきものもない。
不思議な夢だったな。。。! 優が夢と納得しかけた時、知らない天井が目に入った。慌てて周りを見渡すと、病室のようで優が寝ているベッド以外にいくつも並んでいる。よく見れば着ている寝間着も病院で使う物のようだ。窓の外には見慣れた東京のビル群はなく、どこまでも荒野が広がっていた。
夢だけど夢じゃなかった・・・。そんなことを考えているとプシューという音と共にドアが開き。
「お! 起きているな。どうだ気分は。どこか痛い所とかはあるか? 念のため確認して来いと先生から言われてな。」
筋骨隆々でガタイの良い、顔に幾つか傷を負った、いかにも軍人ですと言った風貌の男が現れた。
「気分は悪くないです。痛い所もないです。確かに撃たれたと思ったんですけど。あの、助けてくれたんですよね。ありがとうございました。」
変に取り繕っても仕方がない。優は今の正直な感想を述べ、頭を下げた。
「ふむ、それなら良かった。結構大きな傷だったから跡が残るかと思ったがそれもなさそうだ。それと礼なんかいい、人が人を助けるのは当たり前のことだ。」
そうかな? いや、助けられたのに文句なんかあるはずがない。きっとこの人はいい人なのだろう。
「それよりも汗がひどいな。シャワーが使えるからザッと流してこい。話はそれからだな。」
言われるままシャワー室に案内され、そこで汗を流す。上がると新しい服と、この世界に来た時に来ていたパジャマが置かれていた。撃たれた場所に大穴と焦げた跡がある。やはり夢でもなんでもない、間違いなく自分は撃たれたのだ。あのWarhammerに出てくるオルクによく似た化け物にブラスター?らしきもので。
にも関わらず今生きており傷跡も残っていない。ということはここは未来の世界なんだろうか? 先の病室の窓から見えた荒野、あれが未来の地球、それも日本だったらイヤだなぁ。そんなことを考えながら新しい服に着替え、元の病室に戻ると先ほどの軍人と御飯が用意されていた。
「ぐぎゅるるるるるーーー!」
ご飯を見た瞬間、優の腹は盛大に自己主張した。今の今まで自覚してなかったが、確かに相当に腹が空いている。そんな優の腹の虫を聞いて軍人はカラカラ笑いながら。
「はっはっはっ! かなり腹が減っているみたいだな。まぁ3日間も点滴だけだったらから無理もない。遠慮せずに食ってくれ。」
3日間? そんなに経っていたのか。いや、違う。僅か3日であれほどの重傷がきれいに消えているのだ。やはり未来の地球なのか…。
「さて…、食べながらでいいので少しお話がしたい。かまわないね。」
軍人の目つきが鋭くなり、口調もややきつくなる。当然だろう、これまでの状況を整理するに少なくとも今の自分は不審人物に違いない。望むところだ、こっちも聞きたいことは山ほどある。姿勢を正し、軍人に正対する。
「単刀直入に聞こう。君は何なのだ?」