第1話 異世界転生、目を覚ましたら人類と異種族の戦争のど真ん中!?
もし、あなたが目を覚ました時。そこが今まで住んでいた世界と違っていたら、端的に言えば異世界だったとしたらどんな言葉を真っ先に口にするだろうか?
「ここどこだ?」とか「嘘だろ!」とか「夢だよな」とかではないだろうか。
しかし銅優の第一声は違った。
「Warhammer?」
だった。
知らない人には何のことかさっぱりだろう。とあるイギリスのゲーム制作会社が作ったミニチュアゲームで、海外ではかなりの人気を誇る一大ブランドである。残念ながら日本での知名度はあまり高くはない。
銅優にとっても馴染みのあるゲームではなかったがyoutubeで時たま関連動画を見たことがあり、Wikipediaも読んでいたことから最低限の知識はあった。
結論から言うと違うのだが、今の優にそんなことがわかるはずもない。
彼の認識では疲れた体を引きずりながら会社から帰ってきて風呂に入った後、コンビニ弁当と缶ビールを広げてささやなか夕食を取りながら録画していた番組を見て眠りにつく。
そんないつも通りの日々だったのだ。布団に入って眠りにつき、目を覚ましたら目の前で人とオルク(に似たすっ裸な生物)が銃撃戦を繰り広げている真っ最中など、いきなり受け入れられる現実ではなかった。
しかし、そんな優の事情など目の前の戦場は考慮などしてくれない。パジャマ姿で呆然と突っ立っている優に一匹のオルクが反応し、「グオゴゴゴー!」と奇怪な叫び声を上げながら、手に持っている光線銃をぶっ放した!
「うひぃ!」
間一髪で我に返って避けることができたが、今度はそのオルクが突っ込んでくる!
「グォゴゴゴゴ!!ぶっごろずぅぅぅぅうぅぅぅぅぅうう!!!――――」
「くぁwせdrftgyふじこlp;@:!!」
声にならない叫び声を上げながら、オルクと反対方向の人陣営(と思われる)の方に駆け出す! 数十メートル先に塹壕があり、そこで何名かの兵士がこちらを指さしながら何かを叫んでいた。
「た、た、助けてー!!」
自分でも情けなくなるような声、だが今は体面を気にしている場合ではない。このままでは何が起こったのか、何もわからないまま人生が終わってしまう。
{何のために生まれて~、何をして生きるのか~、わからないまま終わる~、そ~んなのは嫌だ!}
某超有名アニメのOPが頭の中でこだまする。
侍の生き様、精神の在り方に心躍らせ、特攻隊の遺書に涙するような感性の持ち主だったから、いざという時に命を惜しむような無様な最後はさらすまいとは思っていた。
が、いくら何でも前触れなくいきなり死地に、覚悟もないまま放り込まれては流石に無理。必死に手足をバタつかせながら塹壕に向かう。
あ、兵士らしい人達が手招きしてくれてる。何人かは後ろのオルクに対して牽制射撃を試みてくれているらしい。ありがたい! あともう少し・・・!
その時、優を衝撃が襲い、同時に右脇腹に鈍い痛みが走った。次の瞬間に体が地面から離れ、右脇腹前方に血と…恐らくは腸の一部が飛び散っていった。そのまま、優の体は何の受け身も取らないまま地面に叩きつけられた。
「撃たれた…!」
撃たれてから地面に叩きつけられるまでの時間は2秒もない。しかし、優には何分にも感じられる長い時間だった。
特別な人生だったわけではない。平々凡々な中流家庭の次男として生まれ、人並みの愛情を注がれて育ち。小中高大学と順調に進学し、数は少ないが良き友達にも恵まれて、中堅IT企業に就職してすでに3年。最近は新人の教育も任されるようになり人生これからという時だった。恋人はいなかったが…。
「ああ…。父ちゃん、母ちゃん、兄ちゃん、姉ちゃん。」
人生が走馬灯のように流れていく。死ぬ時に家族のことを思い浮かべるというのは本当だったんだ…。最初に感じた痛みはもうほとんどない。ただ、どんどん寒くなる。
これが死ぬということか…。…遠くのほうでメディーックとか聞こえるけど意味なんだったけ? ああ、思考がもうまとまらない……。姉ちゃ………結婚式…………出られ……………ごめ…………………………。
そこで優の意識は途切れた。
始まりました。青山初の連載作品です。コロナ化でどうしても家にいる時間が長くなる今、少しでも皆さんの暇つぶしになれば幸いです。