【これから配信系小説を書きたいと思ってる人必見】配信系小説とは、きららアニメをコメントつきでそっくりそのまま小説化することかもしれない説を検証する
一、配信系小説って?
そもそも配信系小説ってそんなに量的に多くはないので、そういう遺伝子が多いってだけなんだけど、まあ今後ファンタジーに飽きてきたときに、配信系はそれなりの鉱脈ではあるのかなと思うので、わたしの所見を記しておきます。
まず、配信系って何って話なんですけど、配信系はその名のとおり、小説内で動画配信するような小説のことを指します。
配信系の前身としては、匿名掲示板などを小説内に差し込む掲示要素がありましたが、これは2ちゃんねる(現5ちゃんねる)などの現実の要素を小説内に取り入れたのが始まりでしょう。
わたしはTSスキーなので、『おんらいん こみゅにけーしょん』という、とりまる先生のお話の中で掲示板要素を読んだのが初めてだと思います。この作品はいわゆるVRMMOの先駆けでもありました。
言うまでもないですが、ファンタジー的な世界の中になんの脈絡もなくいきなり匿名掲示板という属性を持ちだすのは難しいので(ギルド内にリアルの掲示板があるというレベルならともかく)、いまでも掲示板要素が多いのは、やはりVRMMO系列ということになるでしょう。
現実での技術の発達は、小説内にも取り入れられるというのは自然な成り行きで、配信系も2017年のキズナアイやバーチャル四天王が出現した時代から徐々に小説という媒体にも取り入られるようになってきました。
この点、リアルのユーチューバーは前からいたよって話はあるかもしれませんけど、もともとなろう小説を含むライトノベル系の小説を読むときは、脳内での人間はアニメキャラクターとほぼ同義なので、バーチャルユーチューバーの出現こそが配信系小説と直接つながる道筋だったのだと思います。
もっと言えば、バーチャルユーチューバーの配信行為とは生放送で刻一刻と『アニメ』を作ってるようなものだともいえるのです。
バーチャルユーチューバーは、週に何回も、しかも何時間も配信していることも珍しくなく、その爆発的に増えた『アニメ』をもとに、視聴者は二次創作をしたいという欲求が湧いた。
ここに、配信系小説が生まれたきっかけがあるのではないでしょうか。
二、配信系小説の効用
配信系のおもしろさはどこにあるのかと言えば、まずは元々現実にある配信やその前身となった匿名掲示板を眺める面白さを分析するところから始めるのがよいでしょう。
匿名掲示板の面白さというのは視点的なもので、他者の意見を幅広く取得できるという点と、その板内での文化のようなものが醸成されて、同一の趣味を持つものどうしが、同一のプロトコルでコミュニケーションをとれるというところに価値があるように感じます。
要するに、ぬるま湯的な安心感です。
例えばアニメ板であれば、同じアニメが好きな者どうし語らうことができるわけです。
これを小説という構造物に当てはめると、基本的には小説は主人公にスポットを当てたものですから、匿名掲示板の話題は主人公ということになるでしょう。
したがって、主人公に対する外部的評価を効率よく描写できるというのが旨味になるといえます。
同様に、配信系もコメントによって外部的評価を担保します。配信系のコメントは掲示板でのコメントをリアルタイムにしたものと理解することができます。
ようするに、『すごい』とか『かわいい』などの主人公アゲする言葉で、外部的評価、客観的評価もそうであるというお墨付きを与えるわけです。
読者の視点としては、主人公に投影しても、コメンターに投影しても旨味があります。主人公に投影すれば、褒められているのは自分だし、コメンターに投影すれば、同志がたくさんいるのだから。
ということです。これが配信系の効用です。
三、配信系がきららアニメ風+コメントつきになるって?
そもそも、バーチャルユーチューバーの創り出す『アニメ』を二次創作するという話だとすると、もともとのアニメの属性を色濃く受け継いでいるのは当然だと言えます。
そこで、現実の配信を振り返ってみますと、バーチャルユーチューバーの視聴者は7割程度が男性ということもあってか、スパチャ(配信で視聴者がお金を贈る機能のことです)のトップ10は女の子アバターのバーチャルユーチューバーが席捲しています。
したがって、男性アバターのバーチャルユーチューバーも存在するものの、大方のターゲット層は男性向けであると言えるでしょう。
ここで、あえて断言しますけど……。
百合が嫌いな男子はいない!
いや、人それぞれだとは思いますけどね。しかし、コラボ配信などのときに、女の子どうしがいちゃいちゃして『てぇてぇ(尊い)』というコメントを見た人も多いのではないでしょうか。
なぜてぇてぇなのか。なぜ百合的なホモソーシャルが好きなのかという問いは深淵すぎて幼女作家のわたしの手にはあまります。
しかし、個人的な感性で申し上げますと、きらら的だなと。
きららは百合というほどには百合をしていないんですけれども、女の子どうしが日常的な会話を楽しんだりすることがメインの作品が多いです。
このきららタイムの対象読者層は男の人です。
きらら的な時空に癒されるという人が多いからでしょう。
男性的な『弱肉強食』『出世』『働くことが男の価値』といった男性的なホモソーシャルの攻撃性を排除した空間が、きらら時空と言えるわけでして。
攻撃性が排除されていることの証明として、きららのキャラクターは、しばしばポンコツさが強調されたりします。
ポンコツな……、歯に物を着せない言い方をすれば、アスペルガー的な素養を持つキャラクターに対して、カワイイという評価を付与する。つまり、周りはポンコツなその子を受け入れ、認め、愛するのです。もちろん、視聴者も。
それが、きららの本質です。
おおざっぱなイメージになりますが、なろう小説が『できる男がカッコいい』であるとすれば、配信系小説は『ポンコツな女の子がカワイイ』になるというわけです。
四、おしまい
そんなわけで、配信系小説の基本形はポンコツかわいい主人公がきらら時空的な優しい空間を生きる話になるんだろうけど、問題はきらら時空って終わりを書くのが難しいってことなんだよね。
配信系で綺麗に終わらせるということは、ある程度のドラマが必要になるんだろうけど、ドラマとは要するに喜怒哀楽の高低差ですから、ひたすら優しい空間である配信とは相性が悪いということだと思います。
この点に関しては、配信とは別のストーリーラインをあらかじめ設けておくか、オレたちの戦いはこれからだ方式で、終わらない終わり方をするかだと思います。
現実のバーチャルユーチューバーは、スピーチ1分間300文字の法則からすれば、2時間で36000文字くらいしゃべってることになるんで、むしろコミュ力お化けかもしれない。
その配信の間、あまり偏った思想とか、誰かを貶める発言とかしちゃいけないわけですしね……。
まあ事件になるくらいは、少ないわけです。
すさまじい能力だと思います。
たった数千文字程度でも書いちゃいけないこと書いちゃったりするしなー、わたし。