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9/28

女神とゲームして遊ぶだけ

 今日は家でずっとゲームをすることに決めた。

 そう、こういうだらだらした空間こそがスローライフなのだ。


「というわけで長時間使うRPGとかやるぞ!」


 自室に大型液晶テレビとゲーム機をセット。

 どっちも近未来っぽい世界のやつ。前のシリーズ買ってたので気になっていた。


「先生こういうの好きね」


「うむ、暇つぶしには最適だぞ」


 適当にベッドに座り、うだうだとゲームをしてやるぜ。

 お菓子と飲み物も用意した。適当に空中に超能力で固定して、こぼれないように時間停止の魔法をピンポイントでかけておく。


「おぉー、別世界のゲームですね」


「女神界にもゲームあるよな」


「いっぱいありますよー。今度持ってきましょうか?」


「頼む」


 そしてスイッチオン。今回は王道ファンタジーである。

 その世界では最新機種だけあって、ムービーの作り込みが凄い。


「今いるこの世界がもうファンタジーよね」


「照らし合わせたりして遊ぶのだ」


「無駄に高度な遊び方しますね」


 実際のファンタジー世界とどう違うのか、どっちが面白そうとか考えて遊ぶのだ。

 我ながらよくわからんことをしているが、無駄に面白いしおすすめ。


「いいね、ターン制はシンプルでいい」


「アクションはだめなんですか?」


 せんべい食いながら画面を見ているリコ。お前絶対にベッドくんなよ。食いかすが散らばるだろ。


「アクションはちゃんと本格的なやつを、アクションゲームでやりたい」


「ムービーで突然ボタン押さなきゃいけないのもあるわね」


「最悪だろあれ」


 あれを根絶するのは勇者活動にあたらないことを祈る。やらないけど。


「お姫様を助け出すやつですね」


「王道だな」


「先生も助けたりしたの?」


「したぞ。アホほどした」


 なんでさらうの姫なんだろうな。王子だと強い主人公にイメージある。

 人質としては、身分があって弱い方が都合がいいのか。


「なんかこう、褒美に姫と結婚させてやるーとかなかったんですか?」


「一切ないぞ。なんか恋愛とかの経験が一回もないんだよ俺」


「意外ね。先生を好きな子は多いと思ったのに」


「本当にまったくない。姫を助けるのも勇者っぽいからで、女に興味があったわけじゃないし」


 ゲームはムービーが終わり、とりあえず城の周辺で雑魚を狩っているところ。

 俺にもこんな時期があった気がする。どんだけ前かすら想像つかんけど。


「えー、じゃあ印象に残っているお姫様とかいないんですか?」


「それは私も聞きたいかな。先生の記憶に残るのはどんな子なのか」


 言われて記憶の海を探る。同時に次の街での買い物とセーブを忘れない。


「世界各地にいる十二人の姫を集めろとか、意味わからんのがあってな」


「うわあ、めんどいですね」


「そいつらがまた結界があって出られないだの、大切な王冠を奪われたから取ってこいだの……」


「災難ね」


 普通の世界の何倍もおつかいクエストあったなあ。

 ああいうの省略する魔法とか覚えたもんだ。テレポートとか位置情報とか。


「おっ、仲間出てきたぞ」


 仲間は魔法使いの男らしい。主人公が戦士タイプだから、バランスが良くなったぞ。


「アキラ様はパーティー組まないんですか?」


「超昔には、異世界ごとにいた。そのあと固定でずっと異世界めぐりしてたな」


「おおっ、どんなでした?」


 今日は懐かしいことをよく思い出す日だな。かなり好き放題勇者やっていたから、毎日が楽しく早く過ぎていった。ゆっくり思い出に浸るって機会は意外と少ない。


「戦士と遊び人だよ。そこに現地の女神を入れて四人が多かった」


「私その時代知らないわ。出会った頃には、もう仲間とかいなかったわね」


 組んでくれるやつがいなくなるからな。最終的にはずっと女神との二人旅ばかりになる。


「先生についていける人がいないのね」


「鍛えりゃ世界くらいは救えるんだが、俺に勝つ必要もないからな」


 勇者は戦闘狂じゃない。無関係な人を殴ったりはしないのだ。

 組手や稽古ならまだわかるが、仲間でどっちが強いとか、そこまで考えない。


「見てるだけじゃ暇ですよー」


「そうか、なら別のゲームするか」


 RPGやってるの見てもつまらんらしい。なんか適当に格ゲーでもするかね。


「いいこと思いつきました!」


「却下で」


「聞いてもいないのに!?」


「どうせろくでもないんだろ?」


「ふっふっふ、メンコで勝負です!」


 メンコ持ちながらポーズ決めてる女神を始めて見たかもしれない。


「ちょいさー!」


 ぱしーんとリコのメンコが床に叩きつけられる。

 どうも紙じゃねえなあれ。だが無駄だ。


「甘いな」


 俺も即席でメンコを錬成。この程度は無から錬金術で作り出せる。


「ちょいさー!」


 ぺしーんと床に叩きつけ、リコのメンコをひっくり返す。

 ちなみに風は部屋が荒れないように結界を張った。


「ぬあああぁ!? どうして!?」


「お前はどうせ硬い金属ってことで、オリハルコンあたりをイメージしたんだろ?」


「なぜそれを!?」


 すげえ驚いている。バレないわけねえだろ。


「あれは硬くて値段が張るが、一番重い物質じゃない。メンコに必要なのは、重さとパワーとテクニックだ」


「くっ、盲点でした」


「なにやってるのよ二人とも」


 クシナダが呆れ気味である。RPG勝手に進めてやがるぞ。暇になったんだな。


「次はベーゴマです!」


「よかろう。ベーゴマのすごいやつで世界を救った俺をなめるなよ」


「なにやってるの先生」


 そして二人のベーゴマがぶつかる。


「ちょいさー!」


「ちょいさー!」


「それ言わないとだめなの?」


 激しく火花を散らすベーゴマだが、リコが魔力を込め始めたことで変わる。


「ふっふっふ、女神パワーを受けてみるのです!」


「だから甘いんだよ」


 数回ぶつけ合い、リコが調子こいてきた。狙い通りだな。


「ほいっと」


 後先考えずに猛スピードで突っ込んでくるので、寸前でかわして壁に激突させる。


「あああぁぁぁぁぁ!?」


 壁は結界で強化されている。あえなく粉々になったベーゴマ。つまり俺の勝ち。


「うぐぐぐぐ……これが勇者のパワー」


「勇者関係ないわよこれ」


「勇者はベーゴマでも本気を出すぜ」


「勇者どうというか、大人としてどうなの先生」


 そんなこんなで遊び倒し、もう夕方だ。いいぞ、今の俺は間違いなく堕落できている。


「遊ぶとお腹が空きますね。カロリーを使ったので、カツ丼お願いします」


「女神が食うもんじゃねえだろ。もっと威厳とか神々しさとかだな……」


「キャビアのせカツ丼で」


「威厳イコール高いという発想が貧困だわ」


 結局クシナダがキャビアカツ丼を作った。

 こいつクラスになると、アレンジきかせても料理のレベルが落ちない。


「おいしいです!!」


「いい味だ。よく両立できるな」


「この程度の苦境は乗り切れるのよ」


 リコは五杯もおかわりしていた。むしろそれだけで済んだと言うべきか。


「さて、では今回のお告げはどうしましょうか」


「まず口のまわりの米粒をどうにかしろ」


「たまには休息とレクリエーションが必要。でどうかしら?」


「最高ですクシナダさん!」


 こんな雑でもいいのかね。あの勇者パーティーは親睦を深めることも、休息も必要だってのはわかる。真面目そうだからなミルフィ。


「勇者よ、たまにはリラックスして遊ぶのです。戦いのストレスは休息で解消するのが一番ですよ」


 こいつは常にリラックス全開だけどな。ある意味俺のスローライフとは、そういうものかもしれない。研究の余地が……あるのだろうか。

 駄目になるのとスローライフは違う気もするぞ。


「よっし、お告げ終わりました!」


「じゃあゲーム再開だな」


「えー、じゃあみんなでやれるやつにしましょう。ミニゲーム集みたいなやつ!」


「いいわね。それやりましょうか」


 こうして女神と遊んでいるだけで一日が過ぎていった。

 騒がしいが、こういう空気は嫌いじゃない。

 明日もこうであることを願うよ。


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― 新着の感想 ―
[一言] TRPGサークルームでのコンシュマーゲームでの暇つぶしと言うとスマブラみたいな多人数対戦かレースゲームみたいなゲームが定番でしたね
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