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現地勇者に試練を与えてみよう

 精霊の試練とやらを自作しよう。

 要するに勇者が満足すりゃいいんだ。

 あと試練を超えたという事実。


「こいつらが休憩中にささっと……」


『さあ、急いで帰りましょう!』


「急ぐみたいよ」


「ええい時間止めてやるわ!!」


 世界の時間を止める。

 これで動けるのは俺とクシナダとリコのみ。


「はい時間止めました。リコ、試練の敵ってどんなのだ?」


「うわあぁ……本当に時間が止まってる…………こんな高度な魔法を詠唱もなしに……」


「何百番煎じだそのリアクション」


「先生なら何千いってないかな?」


 ありすぎてどれがどれだか思い出せん。

 全部ごっちゃになるよ。最終的にな。


「リコ、試練」


「あっ、そうでした! えーっと、あの……あれですねあの……大きいですきっと!!」


「雑だな!?」


「こう、がおーっていう感じですね。わたしの勘では」


 両手を上に上げてがおーっとか言っている。

 これは本気なのかふざけているのか判断に迷う。

 だって本人真顔だし。


「つまり! その……わかりません! でもめげません!」


「めげろ。反省し続けてくれ」


 絶望的な状況の中、クシナダから助け舟が出る。


「前の勇者はどんなだったの?」


「その人に適した強さの精霊っぽいファンタジーな物が出るという風の噂です」


「なるほど。オリジナルで作ってもバレねえなこれ」


 これは好都合だ。まさにケースバイケース。

 今回が特殊な魔物でも問題なし。


「よしじゃあ案はあるか?」


「そうねえ……精霊さんのように美しくしない?」


「大きくてかっこいいモンスターがいいです!」


 見事に合わない意見が出たな。


「勇者の試練ですから、かっこいいモンスターにしましょうよ」


「そこは剣に合わせて神聖さを出していきましょうよ」


「昆布入れようとした剣ですよ?」


「そこを突かれると痛いね」


 二人の話をまとめよう。

 ドラゴンとかはやめておくとして、あまりザコっぽい見た目も禁止。


「こういうのどうだ? 剣のガーディアンをイメージした」


 三メートルくらいの黄金の鎧だ。

 年季の入った木のような表面で、中身は空っぽ。

 胸に赤く大きな宝石を入れてある。それが核だ。


「ゴージャスですね!」


「それっぽくできていると思うわよ。流石先生。いいセンス」


 好評っぽいのでこれでいこう。

 出口に転移させて、時間の流れを戻す。


「よし、ファイトだ勇者」


 あとはテレビで見ていよう。剣の力を活かせば勝てるはず。


『あら? あんな鎧ありましたっけ?』


『どうやら試練というやつでヤンスな』


「あの金ピカはどうやって戦うの?」


「俺が操作する」


 テレビにゲームのコントローラーつないで操作します。

 これならほどほどに手加減もできる。


『う、動きましたよ!』


『敵でいいのよね?』


『まさか原生生物ってこともないでヤンスよ』


 戸惑っているが、戦闘態勢は取っているな。

 んじゃもっとわかりやすくしてあげよう。


「説明不足だな。よしクシナダ、アフレコしろ」


「んん? どういうことかしら?」


「赤い宝石から声が出るようにする。ほいマイク」


 マイクスタンドをクシナダの前に召喚。

 これであとは俺が操作する。


「先生がやればいいじゃない」


「俺は操作する側なの。はいよろしく」


「こんなアドリブでいいのでしょうか?」


「いいんじゃね。スイッチそこな。これ勇者のデータ。参考にしてくれ」


「えー、あ、あ、コホン。よし。聞こえるか勇者よ」


 クシナダはこういうの意外と乗ってくれるのだ。

 ちょっと太めの声で話している。


『喋った!?』


「勇者ミルフィ、忍者カラスマ、魔法使いミント。我は剣を抜くものへの試練。帰りたくば力を示せ」


『やるしかないでヤンスよ!』


 戦闘開始。

 勇者の攻撃を移動ボタン二回押しでダッシュ回避。


『速い!?』


「ぼーっとしてると怪我するぞー」


「動かねば怪我をするぞ! フハハハハ!!」


 攻撃ボタン1で左腕に取り付けられたビームガン発射。

 ギリギリ見切って回避できる速度のはずだ。


『きゃあ!?』


『変わり身の術!!』


 勇者をかばった忍者。直撃したビーム。

 だがそこにあるのは丸太のみ。


「へえ、やるね。咄嗟に庇う精神も気に入った」


『カラスマさん、ありがとうございます!』


『あんたらボケッとしてんじゃないわよ! フレイムシュート!』


 黄金ロボに大火球が迫っている。

 今度は攻撃ボタンその2。右腕からビームブレード登場。

 スパッと火球を一刀両断。


『うっそなにあれ!?』


「フハハハハ! その程度か勇者よ! いささかがっかりだぞ!」


 クシナダさんノリノリである。

 なんかストレス抱えてらっしゃるのかな。


「リコ、ついでにアドバイスとかしてやれ」


「はい! 勇者よ、危ない! 右です!」


『え、右? きゃあ!!』


 右に飛んでビームにぶつかる勇者。

 そりゃそんな指示出せばそうなるよ。

 ビームは人体が消し飛ぶほどじゃないので、勇者は生きている。


『今回復するわ!』


「あああぁぁぁ右ってそっちじゃなくて、わたしから見てですすみませんんんん!!」


『そっちってどっちでヤンスか!?』


「どっちですかアキラさん!」


「俺に聞くなや!! 弱点とか言ってやれ」


「弱点ってどこですか!」


「フハハハハハハ!! 滅べ滅べ! このまま何もできずに死んでゆくのだ!!」


「クシナダうっさい!!」


 現場大混乱である。

 鎧操縦の手を止めてしまうほどに。


「胸の赤いコアが弱点だ。勇者の力を開放して、剣で斬れ。それで勝てる」


「わかりました! 勇者よ、攻略情報ゲットです!」


 そして戦闘再開。

 適当に威嚇混ぜながらのビーム連打。

 近寄ってきたら回避しつつ剣で応戦でいい。


『くっ、こいつすばしっこい!』


『作戦通りに行けば勝てるでヤンスよ』


『カラスマさんの案を信じます!』


『忍法大爆煙!!』


 さて煙に包まれる勇者パーティ。

 ここからどう出るかな。


『フリージングドライブ!!』


 魔法使いにより鎧が膝まで凍りついている。

 まず足を止めたか。


「ぬうう! 小癪な人間どもめ!」


『今です!!』


 煙から勢いよく上空へとジャンプする影。

 勇者だ。上からコアを狙う作戦だろう。


「甘いわ! 足を止めた程度で我に勝とうとは!」


 クシナダの言う通り。

 まだ両腕がある。ビームと剣で対応できる。


『両腕が動くと思ったのが、運の尽きでヤンスよ』


 ボタンを押しているのに腕が動かない。

 よく見ると、鎧の影にクナイが刺さっていた。


『忍法影縛りの術』


「おおおぉぉ! やるな忍者!」


 ヤンスキャラじゃなきゃ心底かっこいいぞ忍者よ。

 作戦立案もこいつっぽいし、重要なポジションなのか。


『剣よ! どうか私に力を!! えええええぇぇぇぇい!!』


 そして深々とコアに突き刺さる勇者の剣。


「見事だ勇者よ……だが我を倒しても、第二第三の我が」


「いねえよ。完全に今回限りだよ」


「グアアアアアァァァ!!」


 鎧は光の粒子となって消えていった。

 これにてゲームクリアだ。


「おめでとうございます。剣の精霊が消え、帰りは安全な一本道になりました。あなたたちの勝ちです!」


 これは事前にそうなるようにしておいた。

 頑張った勇者パーティに、せめてものご褒美だよ。


『やりました!!』


『やったー!!』


『やれやれ、なんとかなったでヤンスね』


 勇者一行は疲れているが充実した顔だ。

 そのまま歩けば床の効果で回復もできるから、外に出る頃には完全回復している。


『勇者様だ!』


『勇者様が剣を!』


『伝説の剣を手に入れたんだ!!』


 外でカレー食っていた人々の大喝采。

 あんたら心配する素振りゼロだったよね。


「これで一件落着だな」


「うんうん、アフレコちょっと楽しかったし、いいことをしたわね」


「今回は本当にありがとうございました!!」


 元気いっぱいに頭を下げてくるリコ。

 これでお別れとなると、少し寂しい気もするが、まあそれは仕方がない。

 世界の平和のためにがんばれよ。


「気にするな。新鮮で楽しかったよ。じゃあここからはリコと勇者だけで……」


「これで残すは賢者の杖と究極の忍具ですね!」


「………………はい?」


「その後は四天王もいますし、魔王城に入るための宝玉探しや、移動手段の手配もありますし、まず四天王の城にある結界を破る方法がよくわかりませんけど、頑張っていきましょう!!」


「いやいやいやいや、やることそんなあんの!?」


 思った以上にお使いイベント山盛りの世界らしい。

 めんどくっせえ。絶対協力しないぞ。


「なので、これからもよろしくお願いします!!」


「いや帰れよ!!」


「まったく、先生はすーぐ女神に好かれるんだから」


「好かれてんのかこれ!?」


 リコが俺にすがりついてくる。泣きながら。

 やめろ服が汚れるだろ。


「一緒に勇者をお助けしましょうよ~!!」


「断る! お前もう帰れ!」


「いーやーでーすー! わたしもここに住みたいですー! 美味しいご飯とエアコンがいいです!」


「それが本音かてめえ!!」


「ふふっ、ここも賑やかになりそうね」


「俺の……俺の静かなスローライフがああぁぁ!!」


 俺の生活は始まったばかりだ。

 だというのに、俺はどこで間違えたのだろう。

 誰か俺に真のスローライフというものを教えてくれ。


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[良い点] 何もかもテキトー。だが、それがいい。 変に凝ったりしてないから、頭空っぽにしてサーッと読めるのがいいですね。 [気になる点] この勢いが続いてほしいですが……さて? [一言] 評価入れとき…
[一言] リコみたいに面倒くさい駄女神に好かれるのは運命だからもうしょうがないですねw
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