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スイカ割りがやりたくなった

 フォルテの家からホテルへ帰って、次の日に改めてスイカ割りの準備を終えた。

 誰も来ないように、少し離れた島へ行くという徹底ぶりだぜ。


「よっしゃ」


「説明して先生」


「全然よっしゃじゃないですよ」


 クシナダとリコも一緒だ。一人でやるのが寂しかったとは言わない。


「スイカ割りがやりたくなったからやるぞ!」


「アドリブが過ぎる」


「レジャー四天王に影響されましたね」


 そうだよ。なんかやりたくなったのさ。そういう思いつきでだらだらするのスローライフっぽいじゃん。


「ビーチといえばこれだからな」


「ならどうして離れた島に来たの? 自然を壊さないように、そっと結界も張っていたわね」


「そりゃ普通にはやらないからさ。普通にやったら普通のレジャー。だが俺はスローライファーだ」


「スローライファー気に入ったの?」


 スローライフマンとどっちがいいか検討中である。

 プロのスローライファーって肩書かっこよくない?


「でもスイカ割りで結界ってどういうことです?」


「色々と設置してみたんだ。スイカまでの道にトラップがある」


 20メートルくらいだが、そこには魔術と科学で色々と罠を仕掛けた。


「それで一般人を巻き込まないようにってことですか」


「そういうこと」


 民間人に被害が出るのはご法度である。元とはいえ勇者だからな。


「無駄に凝り性よねえ」


「割れたら食っていいぞ」


「やります!」


 リコが目隠しをして、スイカから離れる。さて女神の感覚はどんなもんかな。


「いきますよー!」


「で、なにを仕掛けたの?」


「まず地雷」


「にょわー!?」


 盛大に爆発する。さっそく踏み抜きやがったな。

 当然だが、周囲に被害が出ないように、俺が魔法をかけてある。


「ちょっと! 死んだらどうするんですか!?」


「女神はこんなもんじゃ怪我しないだろ」


 リコは無傷だ。女神って頑丈だなあ。

 だからこそできる悪ふざけである。


「スイカは高級品買ってやったから我慢しろ」


「ぐぬぬう、やるしかないですね」


「リコちゃんがいいなら、私は何も言わないわ」


「次、赤外線レーザー」


 左右から赤い光が伸びている。これをうまく抜けるのだ。


「目隠しでどうにかできないでしょう!?」


「スパイ映画とかでよく見るじゃん」


「金庫破りのシーンですよね!? スイカ割りでやってないでしょ!?」


 やってるかもしれないのでセーフ。

 敵の宇宙戦艦とかで、実際にやったことあるけど、アスレチックみたいで楽しいんだぞ。


「アキラ様、まさか勇者パーティー時代にこんなこと……」


「やるわけねえだろ。人間にこんなんやったら死ぬわ」


 こういうの女神のごく一部の上位陣としか経験がない。

 なのでかなり楽しい。もう少し女神と遊べるものを考えようかな。


「目隠しとってもいいぞ」


「えーい! スイカがわたしを待っている!」


 やはり女神だ。うまいこと動くセンサーの網を突破していく。

 身体能力が高いのは、こういう状況でも役立つよな。


「ひっかかるとどうなるの?」


「にょわー!?」


「あんな感じで爆発する」


 足元にセンサーに引っかかった時のみ発動する地雷を埋めてある。


「ファンタジー世界に機械はダメよ先生」


「じゃあ凍結魔法とか仕込んだ地雷を……」


「地雷から離れましょう」


「むむむむむ、負けません! 負けませんよ!」


 次のエリアは、足場となるブロックを乗り継いでいく。

 うまくジャンプして進もうね。


「もう砂浜関係ないですよね?」


「気にするな。気をつけて進めよ。上とか」


「上? おおっと!」


 上から四角い物体が落ちてくる。地面についたらまた上に戻る。


「なんですかこれ?」


「ブロック。柔らかい素材だから安心しろ。自機を感知して落ちてくる」


「古いアクションゲームから取ったでしょ?」


「まあな」


 右に進んでいくタイプの、古風なゲームから取りました。


「あのー、なんか道長くないですか?」


「空間をいじってある」


「ずるい!?」


 外からは20メートル。だがいったんコースに乗っちまえば、そこからはいくらでも延長が聞くコースだ。


「昔いた世界にな、こういう自由に創作できるゲームがあったんだよ」


「それを現実でやっちゃうのね」


「よっ、ほっ、ほっほーい!」


 コツを理解したのか、軽快に飛んでいくリコ。楽しんでいるようでなにより。

 そして水と食料の置いてある場所へ到達した。


「なんですここ?」


「休憩ゾーンだよ。マラソンにも給水所とかあるだろ」


「スイカ割りの途中よね?」


「おかわり!」


「ねえよ」


 食い尽くしやがった。最早驚くほどではない。リコの行動に慣れてきた。


「よーし、がんばるぞー!」


 こいつ表情がわかりやすいし、ころころ変わるので面白い。


「元気出てきました!」


「体力回復効果もつけたぞ」


「先生がゲーム脳に」


 その後も着々とスイカに近づいていく。


「このアイテムはなんですか?」


「取ると無敵になる」


 リアクションがいちいち楽しくていいな。新発見だよ。


「鍵がないんですけどー!?」


「そこのブロックをスイッチで消せ」


 そんなこんなでついに到着である。


「ちょいさー!!」


 ぱかーんとスイカが割れて、見事クリアである。


「おめでとう」


「やったわね」


「やりましたー! おいしいです!!」


「食うのがはええよ」


 これでリコがどのくらい動けて、なにをどう認識するのかテスト完了。

 今後の参考にさせてもらうぞ。


「こっちにアイスとかあまりのスイカもあるぞー」


「わーい!」


「じゃあ次は私かしら?」


「やるんかい」


 クシナダがやるとは予想外だ。結構エンジョイするタイプなのか?

 この世界に来てから、少し自由なやつになった気がする。


「難しいモードでいいわよ」


「面白い。やってみろ」


 特別モードだ。トラップの数を増やし、距離そのものを長くする。


「がんばってくださいクシナダさーん!」


「はいよーいスタート」


「いくわよ」


 赤外線センサーを避け、地雷を見切り、障害物をすり抜けていく。

 動きに一切の躊躇がない。


「おおぉおぉぉ!! やっぱりすごいです!!」


「腕は鈍っちゃいないようだな」


 敵を出してみるが、ささっと処理して進み続ける。

 華麗な動きと躍動感あふれる立ち回り……わざと派手に動いてんなこりゃ。


「はいおしまい」


 飛んでくるミサイル郡を足場にして、スイカ前に到着。ぱかっと割ってクリアだ。


「おめでとう」


「軽いものよ」


 横に瞬間移動してきた。手にはスイカがある。


「はい、先生の分。あーん」


「俺が食ってどうする」


「私が得をするわ」


「意味がわからん」


 とりあえず差し出されたので食う。うむ、みずみずしい新鮮な甘さだ。


「はいじゃあ次は私に」


 スイカを渡される。食わせろってことか。妙なはしゃぎ方だな。


「はいはい、これでいいか」


「ん、おいしいわ。ありがと先生」


 満足げなのでよし。子供のように遊ぶクシナダは、珍しさと少しの懐かしさを感じさせる。


「じゃあ次はアキラ様の番ですね!」


「いいぞ。世界が崩壊しないように設定してあるから、好きに作れ」


 コントロールパネルを立体映像で出し、二人に渡す。

 ああでもないこうでもないと相談している二人は、まるで姉妹のようだ。


「ここにトゲの敵を置くでしょう」


「じゃあここにブラックホールキャノンを設置してですね」


「隕石は入れるべきかしら?」


「直接よりは、ここに隠し装備を……」


 そして完成していくコース。意外だな。結構面白そうだ。

 クシナダのサポートありとはいえ、やるなリコ。今度ゲームもやらせてみよう。


「ちゃんとスイカが汚れたりしないように作るんだぞ」


「はーい!」


 当初の目的からはズレたが、休日を満喫できたのでよしとするか。


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― 新着の感想 ―
[一言] 今回一番得したのはクシナダっぽいですねw
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