ティアラの戦い1
勢いで書きました
とうとうこの日が来た。
私が通うフェルグラント王立学院はこの日、第五十二代目の卒業生を輩出しようという記念日を迎えていた。
そう、今日は卒業式。でも私からすれば、他人とは違う視点から見た別種の卒業式と言える。
私は、この時のために死に物狂いで努力を重ねて来た。何度も、そう何度も。
今日、今ここで私の大願は成就されるだろう。
そうら、これから王子が演説を始めるぞ。極悪非道の下衆野郎め。
「みんな集まってくれてありがとう。これより、ある重大な発表をしたいと思う」
こいつは我が国の第一王子、ローラス・フェルグラント。王家に連なる者の証である金髪に、スラリとした体形。そして、その人当たりの良さそうな柔和な表情に、貴族という身分にある女性に受けがいい柔らかい物腰。隣国との戦でも、この若さにして獅子奮迅の活躍をして、既に数多の支持者、いや信奉者がいる男だ。
でも私は知っている。知っているぞ。貴様の裏の顔をな。
「僕は、ローゼンブルグ家の公爵令嬢、ティアラとの婚約を破棄する!」
ほう、大胆な発言だな。こんなことを突然言われようものなら、通常であれば血の気が引いてしまうのだろう。
だが、私は違うぞ。
このティアラ・ローゼンブルグはな。
「ご存じの通り、僕と彼女は婚約関係にある。しかし、僕は見つけてしまったんだ。ローゼンブルグ家は、我が国を脅かすほどの悪事を働いて――」
何やらローラスが喋っていようだが、全て嘘だ。むしろ、その悪事とやらは貴様がやっていることだろうに。
私の周囲から人が離れてゆき、その視線は全て私に注がれている。
ふん、今に見るがいい。このいけしゃあしゃあと御託を抜かしている男は、これから真実を暴かれるのだ。
「先日ローゼンブルグ家の領地にて、その証拠が発見されたんだ。それは……」
ふむふむ。しかし、まるで根拠も何もない適当な嘘だな。我々ローゼンブルグ家は、むしろ貴族にしては裏が無さすぎる節があるというのに。
だからこそ、ターゲットに選んだのだろうな。かりそめの愛情まで見せて。
「ティアラ、君は――」
「異議あり!」
私が突然声を荒げてローラスの演説を遮ったことに、誰しもが驚いている。
これからもっと驚くことになることを、貴様らは知るまい。
「何のつもりかな? 今は僕が演説をしているのだから――」
「黙れ。……皆聞いてくれ! ローラスが一体何をしたのかを!」
おっと、先ほどまで隣にいたヒューストン家のご令嬢が何やら言いたげな様子だな。ふふふ……
知ったことか。
「ローラスの個人用邸宅には、巨大な地下施設が埋蔵されている!」
「な、なぜそれを知っている!」慌てたようにローラスが言う。しかし私は止まらない。
「さらに驚くことなかれ。なんとそこでは、非人道的な人体実験が繰り返さているのだ! 証拠もあるぞ!」
「え、なんで……誰か、ティアラを黙らせろ!」