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第六話 ギルド

いつも応援ありがとうございます。ステータス関連の設定はもしかしたら変更するかもしれません。

 先程の少女のように奇異な目で見られないように取りあえず装備を整えることから始めた。


 とは言っても、王宮から貰った金では購入できる物はたかが知れたが、それでもないよりは、ましだ。


 武具屋で最も安い防具と魔法の威力が向上する杖を買う。貰った金の半分以上が消えた上、どれも初心者用の装備で、パッシブスキルもなくステータスも碌に上がらなかったが、一応装備扱いになった事と、少なくとも学ランというこの世界では珍しい服を脱げたのは良かった。


 それから街の外で、軽く実戦をしようかなと移動している最中、偶然にもゲーム時代と同じ場所に、変わりない姿で冒険者ギルドの建物の前を通り掛かり、折角なので、中の様子を覗いて見ることにした。





 冒険者ギルドとは、プレイヤーがNPCが依頼するクエストを受注したり、パーティを組んだりする、ゲームで最も訪れる頻度の高い施設だ。というか、この場所に来ないでゲームを進めることはできない。


 だが、ゲームでプレイしていた時代から百年が経過している。色々と変化があるのだろうと思っていたが、受付嬢のお姉さんの話を聞く限り、そこまでの変化はなかった。


 強いて言うと、プレイヤーの代わりにこの世界の人間が冒険者をやっていたことだ。ゲームの時は、NPCの冒険者は一人もおらず、プレイヤーのみが冒険者としてギルドを仲介にして貴族や村人等のNPCからの依頼を受けていた。


 他に変わったことは、いつも隅の方で占い屋兼下位職業を変更してくれたNPCの老婆がいなかったことと、コスプレや着ぐるみのようなネタ装備をしている人がおらず、普通の鎧やローブを着ている冒険者しかいなかった点だろう。



 ゲーム時代にも聞いたことのある説明を一通り聞き終わると、僕は自分は王都から遠く離れた田舎の村からやって来て、世間の常識に疎いと前置きをして、冒険者になるための登録をお願いする。



「分かりました。では、これより、あなた様の腕前の方見させて頂きます。それでギルドの方であなたのレベル計測させてもらいます」



 そう言うと、若い受付嬢のお姉さんは書類をまとめて立ち上がるが、今の会話の中に思うところがあった僕は呼び止めた。



「すみません。ステータスプレートの方は確認しないのですか?」



 ゲームの時は、戦闘のチュートリアルも兼ねていたので、会話の流れのままに進んだが、今手元にはステータスプレートが存在する。


 実際に戦闘しなくても、ステータスプレートを見ればいいのではと思い立ったのだ。


 まあ、レベル30で王宮の騎士になれる世界で、レベル100という情報を余り知られたくはないが、それでも、聞かれなかった事に対する疑問の方が大きかったので一応聞いてみた。


 すると、受付嬢は何も知らない田舎から来た人間らしいですねという顔で、少しめんどくさそうに説明してくれた。



「ご存じないのですか? ステータスプレートは確かに自分のレベルを相手に見せるのには、有効的なアイテムで、ギルドの方も十年近く前までは参考にしていましたが、近年、書かれている情報を偽造できるようになったため、ギルドの方では使わなくなりました。全く、一時期は、レベルを偽造して低レベルでは受けれない高難度のクエストに挑む冒険者がたくさん出てきて困りましたよ」



 もう少し詳しく聞くと、三十年前に、ステータスプレートを開発したのは王国の技術者達で貴族も絡んでいる。そして、彼らはステータスプレートは完璧なアイテムなので偽造など不可能だと叫んでいるため、今も偽造できる事を認めていないそうだ。なので、愛想を尽かした冒険者ギルドの方では、ステータスプレートを使用するのは止めたらしい。


 それにステータスプレートの生産は王国側が独占しており、偽造できる不良品を買い、貴族に貢ぐのが馬鹿らしいのも禁止した理由の一つのようだ。


 また、受付嬢との会話で判明したが、自分のステータスを確認する方法として最も主流なのは、先程僕が使ったステータスオープンという魔法のようだ。


 ただ、この魔法、ゲーム時代もそうだったが、自分以外の者の目には文字が見えないという欠点がある。なので、他人に虚偽のステータスを言うのは簡単であった。


 それと、ゲーム時代は魔法やスキル、アイテム等で他人のステータスを盗み見るのは当たり前の事だったが、この世界では、そう言う事ができる者は非常に限られているらしい。


 また、仮に出来てもステータスオープンの魔法のように、紙などに結果を出せずに、術者の目にしか結果が出ないので、結局、他人のステータスを正しく把握できない。



 このように、この世界では常識的な会話を続けるものだから、いくら田舎から来たからと言って余りにも物を知らな過ぎると、より一層、こいつは本当に大丈夫かという目をされたが、こっちは何も知らないのだから仕方がない。


 王宮にいれば、こうした一般常識を知れたのに。どうせ追放されるのであれば、ある程度の知識を得るまでは、追放されないように懇願するべきだったかもしれないと少しだけ後悔するのであった。




 その後、受付嬢と一緒に奥にある訓練所に案内された。


 ゲームの時代から百年近く経っているのに、一切変化のない懐かしの訓練所で待っていたのは、筋骨隆々でどこかで見た事のあるような気がする赤い鎧を纏い、背中に同色の巨大な大剣を背負っているおじさんだった。



「アンちゃん。その小僧が、新人冒険者か?」


「そうです。パリスさん。いつものように少しだけ戦って、戦闘力を測ってください」



 今知ったが、受付嬢の女性の名前はアンさんと言うらしい。そして、試験官と思われる男の名前は、パリスさんというそうだ。



「流石に田舎出身のあなたでも、パリスさんの事は知っているでしょう? 全冒険者の中でも数人しかいないレベル30後半の金級冒険者の一人ですよ」



 ゲーム時代は全てのプレイヤーが冒険者だったため、階級という物がなかったが、今は違う。実績に応じて、青銅、銅、銀、金、金剛の五つの階級がある。


 ステータスプレートの偽造の件と、他人のレベルを知る術がほとんどない事で、ギルドでは、実力ではなく実績で冒険者の力量を測っているようだが、それでも強い者ほど成果を上げると予想できるので、上の階級の者ほど戦闘力が高い傾向にあるだろう。


 と言うことで、アンさんが自慢げに説明する上から二番目の金級冒険者であるパリスさんのステータスをこっそり覗き見る事にした。



 鑑定眼(B)。



 僕は心の中で、そっとスキルを発動する。使用するスキルは鑑定眼(B)。レベルが近い相手に対しては、少ししか情報を知る事ができないが、レベル差が50近くあるので、ほとんどの情報を知ることができるだろう。



名前 パリス

レベル37

下位職業 戦士

属性 火


ステータス

HP 5600

MP 520

物理攻撃力 2270

魔法攻撃力 250

物理防御力 1900

魔法防御力 430

俊敏性 320


保有スキル

アクティブスキル

剛力(C)


パッシブスキル

物理攻撃力上昇

物理防御力上昇

火属性耐性

自動回復


装備品

武器 サラマンダーバスターソード 星4


頭 サラマンダーヘルム 星4

胴 サラマンダーメイル 星4

腕 サラマンダーアーム 星4

腰 サラマンダーアンダー 星4

靴 サラマンダーブーツ 星4

装飾品 エメラルドストーン 星5


使用可能魔法

フィジカルブースト

ハイ・フィジカルブースト

フレイム・エンチャント



 そうか! どこかで見覚えがあると思ったら、形状は異なるが、サラマンダー装備を身に着けていたのか。それにしても、全身サラマンダー装備は懐かしいな!


 レベル100の廃人プレイヤーになれば、より高い性能を出そうと別々の魔物の素材から作られた防具を着ていた。なので、全身一式同じ魔物の素材から作られた防具の人を見て懐かしさを覚えたのだ。


 最も、ゲームの時とは異なり、防具や武器の外見がかなり異なっている。同じ素材でも職人によって形状が違うという事だろう。もしかしたら、性能も違うかもしれない。


 この辺がゲームと現実の違いなのだと僕は推測した。


 ちなみに、武具の隣についている星というのはその装備のランクである。星1から星10まで存在し、当然ながら、消えてしまった僕のフル装備は全て星10に該当する。今身に着けている装備品は全て星1の安物だけど……。


 それにしても、サラマンダーは結構強い魔物でこいつを一人で倒せれば脱初心者と言われていた。僕もサラマンダーを初めて一人で倒したのは、レベル40後半の頃。もしパリスさんが一人でサラマンダーを倒したのであれば、かなりの腕前の持ち主だ。


 単純なスペックも、戦士職、レベル37、サラマンダー装備込みのステータスと考えれば、レベル30が一つの目安となっているこの世界においては間違いなく強者であり、更に、この人と戦うのであれば、こちらもかなり本気を出さないとならないと覚悟する必要がある。


 基本的に、魔法職は戦士職よりも身体能力の面で遥かに劣る。火力では負けないが、接近戦になればかなり厳しいのはゲーム時代も今も共通の認識だろう。


 おまけに、実質無装備状態のこちらは紙装甲同然で、しかもパッシブスキルもないのだから、接近されたらほぼ終わりだ。


 ゲーム時代のフル装備があれば、無防備な状態を晒しても普通に耐えられるが、手元にない以上、生憎それはできない。というか、最悪死ぬかもしれない。


 なので、色々な戦術を考えて、レベル100の能力を全開で使用して、接近される前に遠距離魔法で速攻で決めるのが、最も効果的かな等とゲーマ魂に火をつけて考えていたが、パリスさんは悪いねと首を横に振る。



「少年、すまんが、今日は朝からずっと新人冒険者のテストをしていてな。正直体中が痛い。なので、悪いが、もう一人テストを受ける奴がいるからそいつと戦ってくれ。俺は審判をしながら採点するわ」



 え? アンタが戦わないの?


 こういう場面って、実力者と認知されている試験官を、凄まじい実力を秘めた受験者が圧倒して、周囲からスゲーと呼ばれる展開じゃないの?


 アンさんしか観客いないけど、同じ初心者が相手じゃ少しテンション下がるな。


 不満はあるが、まあ、この世界で初の実戦だし、初心者相手なら楽勝で勝てるだろうと楽観していると、何者かが訓練場内に駆けこんできた。



「すみません。準備に手間取ってしまって、あれ、あなたは……」



 それは、先程会ったオレンジ髪の少女だった。


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