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オワリノの勇者   作者: ヤマタツヨシ
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愚鈍な王国を救え1


グワァーーー!


ゴブリンのひときわ大きな咆哮が森中に響き渡った。


傷だからけで既に瀕死の五匹のゴブリンの中のボスであろう一匹が野太い声で言った。


「オマエハナニモノダ。タダノニンゲンガ、ワレワレニナニヲシダ、ユルサナイ、ユルサナイ…」


「オワリダ。オワリニスル。オマエモミチヅレダ」


ゴブリンの体が、どんどんと黒くなり、肥大化していった。

目は赤くなり皮膚がドロドロと溶けてきた。

残りのゴブリンも同じように黒く大きくなっていった。


「オワリダ。スベテヲオワリニシテヤル。コロス。コロス。」



グワッーーーーー!


先ほどよりさらに大きな咆哮を五匹のゴブリンが同時にした。


「これか。メノヤのオヤジが言ってたゴブリンの断末魔ってのは。死ぬときにしか使えず、近くにいる生あるものに呪いをかけるという魔法。非常に興味深い。小説に使わせてもらうよ」


「オワリダ。スベテヲオワリダ。オマエモ、オマエノマワリモ、スベテヲクルシマセル」


ゴブリンの体から黒いモヤモヤが広がりサトルに向かってきた。


「あいにくだがすべてを終わらせるのがこの世界での俺の仕事だ」


サトルは右の手のひらをゴブリンにむけた。


「我コトワリを受け取る者ナリ。精霊の加護をモトニコトワリを紡ぐものなり」


サトルが詠唱を始めると、青白い光とともに右手が包まれ、サトルの手を囲むように錬成陣が浮かび上がった。


「オマエナニモノダ。ナゼ、カタテデ、ソレヲツカエル。コノセカイノモノジャナイ」


「オワリノの勇者だからだよ」


サトルはニヤッとした。


「アクスペクト」


するとサトルの手から強烈な光が出た。


物凄い熱気と爆風が光とともに五匹のゴブリンを包み込んだ。


「オマエハ…」


ゴブリンの本当の断末魔はとても静かだった。



―――――――――――――――――――――



サトルがギルドに入ると、注目が注がれた。


サトルの着ている薄暗い紅のマントはよく目立つ。


ゴブリンを引きつけるために、腰につけている大きな銀の鈴が、歩くたびにシャリン、シャリンと鳴った。


一瞬シーンとなったが、そのあとヒソヒソ話が始まった。


「おい。あいつがサトルだぞ」


「なんだ思ったより弱そうじゃねえか」


「本当にあれで西のゴーレムをやったのか?」


「いやいや。それも嘘らしい」


「たまたまゴーレムが死んでるところに、通りかかっただけらしい」


ギルド内の殆どのものがニヤニヤしながらサトルを見ている。


「俺が聞いたのは評判を上げるために、有名なパーティーを銀貨で雇ったってきいたぞ」


「そこまでして名声が欲しいものかねぇ。そんなやつは冒険者の風上にもおけねえよ。」


「冒険者の前にアイツはなんていったてアレだからなあ!」


その言葉でギルドに笑いがおこった。



サトルはまわりの声を一切無視して受付に向かった。


「サトルさまですね。おかえりなさいませ。お怪我はございませんか?」


「ああ大丈夫だ。これが今回の依頼の品だ」


サトルはゴブリンの心臓が結晶化された、

魔鉱石を小袋から5つ取り出して、受付のシーヤに見せた。


「わあすごい。確認しますね。少々お待ちください」


シーヤは小袋を受け取ると、奥に引っ込んで行った。


まわりの奴らが、その様子を盗みみていて、またヒソヒソ話しを始めた。


「どうせどこかに落ちてたんだろう」


「どっかから盗んだに違いねえ」


「イヤイヤ偽物なんだよ。どうせすぐにボロが出るぜ」



しばらくするとシーヤが銀貨袋を持って帰ってきた。


「おまたせいたしました。サトルさま。すべて本物だということを確認しました」


それが聞こえて噂話をしていた連中が、すこし気まずそうにした。


「こちらが本件の報酬になりますね。ご苦労さまでした。受け取りの名前のご封印をおねがいします」


サトルはギルド受付のシーヤの差し出す用紙に軽く手を触れた。


すると触れた箇所が青白く光、小さな魔法陣が浮かび上がった。そして、サトルの名前がこちらの世界の文字で用紙に刻まれた。


「はい。こちらで手続きは終了です。」


「半分は返済で」


「かしこまりました。今回で返済は完了です。私もこれぐらい稼いでみたいものです。いかがでしょう?王国の国債を買われては」


「それは国民がやるもんだ。俺みたいなもんが買うもんじゃない」


「さようですか。それでは次のご依頼が来てますが、いかがなさいますか?」


サトルはシーヤが開げた依頼書をすべて奪うと、マントに押し込んだ。


「また来る」


サトルはそう言ってギルドを出たが、すぐ後ろから笑い声が聞こえた。


この後、ギルドでは自分の噂話で盛り上がっていると思うと、ギルドを爆破してしまいたいと思った。


サトルが一言、デスバルトと呟くとギルドが吹っ飛ぶ。


それを想像すると幾分か気分が晴れた。


そんな事をいろいろ妄想しながら、サトルはねじろにしている教会の隅の小屋に帰っていった。


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