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立風堂奇譚  作者: 篠崎砂美
7/12

景之漆 風の響き

 涼しげな風にのって、胡弓(こきゅう)の調べが流れてくる。

 町中を飾る雪洞(ぼんぼり)の灯りの中に、町流しの踊り手たちの姿が浮かんでいた。法被はつぴを着た男衆と、楚々(そそ)とした浴衣に黒い帯を締めた女衆が、優雅な仕草で踊りながら進んでいく。その(かんばせ)は、半月の形をした編み笠に隠れてはっきりとは分からない。

 それがまた、胡弓のどこかもの悲しい旋律とともに、踊りに不可思議な深みを与えていると思う。

 町流しは、夏を惜しむかのように、静かに町の中を流れていった。

 浴衣のたもとに手を突っ込んで腕を組みながら、町のあちこちで踊られている町流しを堪能していく。これで、うまい地酒があればさらにいいのだが。

 道の両脇を飾る雪洞を辿るようにしてそぞろ歩いていくと、観客もまばらな場所で、ゆっくりと進んでいる新たな踊りの列に出会った。

 もうずいぶんと町外れだろうに、雪洞の列はさらに続いており、それを辿るようにして踊りの列も進んでいく。誘われるように踊りについて行くと、雪洞の列と踊りの列はいつしか町を飛び出して、静かな竹林の中へと進んでいった。

 さわさわと、風が竹の葉をゆらす。どこまできてしまったのだろうと周囲を見回すと、ささやかな酒宴の席が目に飛び込んできた。町流しの踊りの列は、そのそばに行って輪踊りへと変わっていた。

「おや、これはお客かな。まあいい、今日は無礼講だ。どうですかな、一献(いっこん)

 演奏をする地方(じかた)のそばで、酒を飲んでいた男が誘う。もちろん、ここで断るいわれはない。

「これはこれは」

 注がれた酒を飲み干して、思わず感嘆の言葉をもらした。華やかな香りが、ふわりと広がる。

「ささ、もう一杯いかがかな」

 勧められるままに、喜んで酒のお代わりをいただいた。

 町中の祭りもいいものだが、自然の中での小宴も悪くはない。こうしていると、時間の経つのも忘れてしまいそうだ。

 胡弓の調べにあわせて、風が吹く。しなった竹同士がぶつかって、こーんと澄んだ音を響かせた。

 その音に、踊りの者たちが編み笠の陰から微笑んだ。

「今日は、無礼講」

 酒を掲げた男が、周りの者たちに言った。

「今日は、無礼講」

 軽く杯を持ち上げて、周囲の者たちが応える。

「これもまた一興」

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