表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
凄腕Player Killerは、死亡遊戯の地にて罪を重ねる  作者: 不来 末才
「◾️◾️の◾️◾️」
3/14

1-2

こんばんはおはようございます。

1日1話投稿を一週間できればと思っております。

よろしくお願いいたします。

「仇討ち弾か。こりゃあめんどくさい」


 久々のアイテム全ドロップで浮かれていたつけが付いたのか。

 思わず頭を抱えてしまう。


 仇討ち弾とはPK対策用のアイテムであり、その名の通り所有者が死亡すると事前に指定していたプレイヤーの元に飛んでいき、誰によってPKされたか、またそのプレイヤーがどこにいるかを定期的に教えるアイテムだ。非常にPK対策で役に立つのだが、それは裏返すとPKを生業にしている人たちにとって迷惑でしかない。


「ギルマスだからって、普通持ってるかアレ。それなりにレアアイテムなのに。俺の時に使わなくても」


 思わず愚痴が口からあふれる。この後弾に誘導されてあのプレイヤーの友人、おそらくギルドメンバーが襲い掛かってくるのがわかりきっているから憂鬱でしかない。


「面倒だけど、しょうがない……はぁ」


 仇討ち弾に引っ掛かった時用の対策をするため、渋々メニューを開く。



 仇討ち弾が優れたアイテムであることには間違えないが、対策がないわけではない。まず一つ目は抵抗せずに殺されること。勿論、素直に倒されるわけではなく、PKで手に入れたものを始めとする全てのアイテム。ゴールドを町の銀行なり、なんなりに預けてしまうことで、自分が死亡した時のペナルティーを限りなくゼロにする方法だ。

 NOでPKを一度でも行うと二つ名が赤に変わる。そのため、他のプレイヤーに一発で判明する作りになっており、またこの状態のPKerを他の人が攻撃しても、二つ名が赤になることはない。つまり、PKK――プレイヤーキラーを殺し返す行為――をしたとしてもペナルティーはないのである。そしてPKの赤色認定は一度死亡さえすれば解除される。だから何度も報復行為をされる心配はない。そのおかげで、何ももっていないうえで殺されるというのは仇討ち弾に対する一つの手なのである。


 だが今回は、というよりそもそもとしてこの方法は却下だ。PKerが何もしないで死ぬなんて面白くない。それにもしやるとしても今いる場所から町への距離が遠すぎる。アイテムを預けようと移動しているうちに襲われてしまいそうだ。馬などの移動手段があればまた違うのだろうが、残念ながら俺は持っていない。


 ということで、二つ目を実行するしかないわけだ。

 方法はいたってシンプル、ログアウトして数時間ゲームをしないだけ。ログアウトした後でも、仇討ち弾は位置を送り続けはするが、その場についても誰もいない。当たり前だ。当の本人はゲームにいないのだから。勿論その後、対象がログインすればゲームで会えるが、それまでずっと待ち続けるプレイヤーはほとんどいない。彼らもゲームを楽しむためにやっているのであって、PKKをするために何時間も同じ場所で時間をつぶす気にはならないのが本心だろう。

 こうしてみると、仇討ち弾はそこまで大したものではないと感じるかもしれないが、どんな対策をしようと一回殺されなきゃいけなかったり、数時間ゲームを断念しなければならないなどPK側に負担を強いることになるため、やはりPK対策用のアイテムとしては役に立つのである。現に俺が今ゲームの中断を半ば強制されているわけだし。


「さてと、ちょうどいい区切りだし、ここまでにするか。明日も早いしな」


 メニューの時刻は21時半過ぎを指していた。それを横目に見ながらログアウトボタンを押そうとした俺は目を見張った。



 本来ログアウトボタンがある場所には何も存在していなかった。メニューの背景の色が淡々と移るだけだ。……つまるところそれはログアウトして敵の手から逃れることができないことを意味している。



「おかしいな……。仕様の変更か。いやそれはない……か?」


 ログアウトできないことに不満を感じつつも、思い至ったのは仇討ち弾に関するゲームシステムの変更という可能性。だがそれはなんだかおかしな気もする。

 今までもこの仇討ち弾に対するログアウトによる逃げの戦法については、苦情が多かった。ただし、どれほど卑怯だとしても運営はそれを禁止することはなかった。なぜなら仮に仇討ち弾が起動している間ログアウトを禁止などした場合、プレイヤーの実生活に多大な悪影響を及ぼすことぐらい容易に想像できるからである。ログアウトできなかったせいで、その後の予定に間に合わなかった、なんてことがあったら目も当てられない。そのため現在に至るまで卑怯とも言える対処法は、様々な事情を盾に生き残ってきたのである。

 だからこそ、今の状態は不可解でしかなかった。


「とりあえずこの場から離れるとして、一応お知らせも調べておく――」


 現状に対する対処として、PKの現場であるここからできるだけ距離を取ろうとしたが、その足はすぐに止まることになる。



 アップデートやイベント、バグの修正などの情報を確認するためのボタンもメニューからなくなっていた。



「どういうこと……これ」


 呆然としながらもメニューを事細かく確認する。するとログアウトボタン、お知らせボタン以外にも、GMへのコールボタン、チャットを開くボタンも消失していた。


「訳が分からない……」


 おかしい。

 明らかにおかしい。

 ゲーム内の何かの機能一つだけが――ログアウト機能は別格だとしても――動作しないのであれば、何らかの不具合が生じていると納得できる。

 だが、しかし、いくつもの機能が働いてないのは、明らかに異常である。

 最低でも俺のNO歴の中では決して起こりえないことであった。


「おかしい……なんだこれは」


 先ほどから心に抱いていた疑念。声にすると、それは不安を呼び起こす。

 訳もなく汗が背中を流れる。心なしか、先ほどまでは楽しめていた雨も空恐ろしく感じられた。

 俺は雨の中で一人、突っ立っていた。



 突然の通知音。


「っつ!!」


 驚きから、思わず身体を震わす。


「運営から、か?」


 この事態に対する運営からのメッセージを期待したが、色的に違う。青色のそれはプレイヤー情報に関する通知だ。


「今? この状況で?」


 胸は様々な気持ちが交錯していた。

 不安、落胆、期待、恐怖、好奇心――――。

 色々な思いを抱えながら、内容に目を通す。



 ――新しい二つ名、〈恩寵を棄てし者(ロストマン)〉を獲得しました。この二つ名は強制的に第一名称に登録されます――



 短い文面には、そっけなくそう書かれていた。別に運営の連絡が手違いで色違いだったなんて言うこともなく。極々普通の二つ名取得の知らせだった、終わりの一文を除けば。


「強制? そんなの聞いたことないぞ」


 通知さえおかしくなったのか。勘弁してくれ。

 だが、残念ながら今回の通知は間違えなく正常だった。なぜなら俺の二つ名が慣れ親しんだ〈雨天の訪問者(ティアコート)〉ではなく、見知らぬナニかになっていたのだから。 


「…………」


 俺は少しでも現状の理解につながることを願いながら、新しいソレを確認する。




 〈恩寵を棄てし者(ロストマン)

 この世界において初めて人を殺めた者への烙印。神にさえ見捨てられ、この者はただ彷徨うのみ。



 赤く爛々と輝く二つ名には、そうフレーバーテキストが添えられていた。


「は?」


 なんだこれ、これじゃあ、まるで――。

 悪寒が走る。それは本来起こりえない絵空事。実現してはならない悪夢。今思いついたことを、必死に否定する。だけど、それは中々消えてはくれなかった。

 雨で濡れすぎたからか、あるいは心理的な理由か、小刻みに震える指を使いながら、強制的に登録されている二つ名を外そうと試みる。試みた、が。


 ――この二つ名は第一名称から外すことはできません――


 無情な一文が表示されるだけだった。


「なんだよこれ!! なんなんだよ!!」


 思わず叫ぶ。

 なんども外そうとして、その度に失敗する。

 何が何だかわからなかった。全てが異常。頭が沸騰しそうだ。いや、本当に沸騰してしまったらどんなに楽か。実際にはそんなことは起こりえない。狂乱しかかっている頭の中で、わずかながらも残ってしまっている冷静な部分は、先ほどからある一つの仮定を導き出そうとしていた。

 しかし、それは最後まで続かなかった。



 視界が暗転する。

読んでいただきありがとうございます。

何かご意見があれば、このサイト・ツイッターからご連絡していただければと思います。

失礼いたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ