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凄腕Player Killerは、死亡遊戯の地にて罪を重ねる  作者: 不来 末才
「◾️◾️の◾️◾️」
11/14

1-10

こんばんはおはようございます。

PVが555を達成しました。

ありがとうございます。


 分け入っても分け入っても、一面緑。

 森林なのだから当たり前だ。

 だが、よく目を凝らしてみれば同じだと思っていた色にも違いがあることが分かる。明るい黄緑なのか、もはや黒といっていいほどの深緑なのか。

 今の俺にはそれを見分ける必要があった。


「これは薬草、これは麻痺草、これは猛毒草。これは……識別不可能だからパス、と」


 つまるところ俺はオンラインゲームの基本ともいえる採取に勤しんでいた。

 現実ならば、森の中に様々な薬効のある草が群生しているなんてことはないだろうし、もっと言えば薬学など一ミリも知らない俺が識別することなどできないはずないのだが、ここは閉じ込められてもあくまでゲーム。適当なところを探してみれば簡単に見つかった。改めて今俺がゲームにいることをしみじみと感じさせられた。

 注意深く一面の草からそれっぽいもの――アイテムになりそうなもの――を探し見つけては採取を行う。

 正直な話、このやり方は非効率的だ。何度も言うが、この世界はゲームなのだからアイテムの識別はシステムが行ってくれる。だから一般的かつ効率が良いとされる方法は、そこら辺の草を目いっぱいちぎり取って、全て自動で識別させるというものだ。こっちのほうが気を遣うこともなく、しかも一度に大量の素材が集まる。

 だが俺はそうではなく、一つ一つ丁寧に摘んでいく。理由は二つある。俺のキャラクターは戦闘職が主で、識別レベルが高くない。そのため、システムに任せても最低限のアイテムしかわからないのだ。識別不可能のアイテムばかり手に入れても意味がない。だったら多少効率が悪かろうが、確実に手に入るものを入手していったほうがいい。まぁそれでもハズレを何個か引いてしまっているが。ともかくこれが一つ目の理由だ。

 そして二つ目の理由は、痕跡を残したくないからだ。ちぎり取る方法は便利ではあるのだが、誰かがここを通ったのが分かる程度には跡が残ってしまう。それは俺らにとって好ましいことではない。


「敵を確認しました。後方からこちらに接近しています。距離三五〇前後。少し走ることを推奨します」


 ちまちまと採取を続けていると、上から声が降ってきた。声の主はもちろんノーシャだ。

 木に登っていた彼女は地面に音もなく降り立つ。それなりに高いところにいたはずなのに、全く音がしない辺り技量の高さが窺える。

 とりあえずここまでか。俺は採取を中断し、荷物を整える。


「分かった。んじゃあ行くか」

「合点承知の助です」

「…………」

「? 何をぼんやりしてるんですか? 早くいきましょう」


 そんな死語を使う人間、生まれて初めて見たかもしれない。絶句している俺をせかすノーシャ。

 おかしいだろ。どう考えても彼女の発言が悪いのに……。

 釈然としないが、走り始める。納得いかないままだが、そんな気持ちとは裏腹に俺の足取りは軽やかだった。それもそうだ、ここ二日戦闘が起きていないのだから。死ぬ恐れがないというのはこんなに気が楽だとは。

 左側を走るノーシャをチラっと見る。右顔を魔眼に侵食されているためいまいち分かりにくいが、澄ました顔でついてきている。だがその反面、魔眼はギョロギョロと動き回っていた。少し不気味さを感じなくもないが、そんなことを俺が言う資格はない。なぜなら今まで最悪だった状況が好転したのは、この魔眼のおかげなのだから。

 ノーシャの二つ名〈魔眼の射手〉の由来になっている魔眼は、一定の距離であれば望んでいるものを見通すことができるらしい。過去に一度組んだ時も、あらゆる敵を見つけていたので疑う余地はなかったが、改めて目の当たりにするとすさまじい能力だと感嘆せざるを得ない。彼女曰く例え何かに隠れていたとしても見つけることができるようだ。

 いくらなんでも便利過ぎない? というのが俺の率直な感想だ。一般の前衛職とかでも役に立ちそうなのに、ましてや彼女は超遠距離から攻撃を加える射手だ。まさしく鬼に金棒といっても過言ではない。

 もっともその感想を伝えたところ、返ってきたのが「ロストの新しい二つ名の能力も大概だと思いますけどね」だった。そういわれると困る。彼女の言う通り新しく取得した〈恩寵を棄てし者(ロストマン)〉の能力は確かに強力なのだが、喜ぶに喜べない。だってこれは……。

 …………それはともかくとして今はこの強力な魔眼の力を戦闘にではなく、索敵に使ってもらっているわけだ。

 走り続けるだけなのもつまらないので、話を振る。三日目になるとそれぐらいの余裕は生まれてくる。


「二日も追い付けていないのに、まだ諦めないのか」

「運よく逃げ続けていると思い込んでいるんじゃないでしょうか。まぁあんな低品質アイテムごときで、私の眼を出し抜けるわけないので全くもって無駄ですが」


 PKKどもは相も変わらず仇討ち弾を使って追い続けている。あのアイテムの効果は絶大で、強力だ。それは間違いない。

 だが完全無欠というわけではない。欠点も少なからず存在する。そのうちの一つとしてこのアイテムは一時間おきにしかPKプレイヤーの位置を表示しないことがあげられる。その為、PKKプレイヤーはある程度は勘でPKプレイヤーを探し見つける必要が出てくるのだ。といっても普通のPKプレイヤーであれば捕捉するのは簡単だろう。たとえ限られたときにしか相手の居場所が分からないとしても一方的に情報を得ることができるのは大きなアドバンテージなのだから。

 しかし、今こちらにいるのは普通のPKプレイヤーではない。簡単な条件さえ達成できれば常に敵を見つけられるノーシャだ。恐らくNO内最高峰の精度で魔眼は敵を捉える。その情報を元にすれば敵の手を逃れることは容易だった。

 それにしても散々俺を苦しめた仇討ち弾を低品質呼ばわりか。そりゃあ魔眼と比べれば見劣りするアイテムなのかもしれないが。彼女の基準で高品質といえるようなアイテムって、そうそうないだろ。


「それにしても残念です」

「何が?」

「弾丸がないことです。あれば蹴散らせることもできるのですが」

「……そりゃ好戦的なことで」


 二日間ともに行動してとりあえず分かったことだが、ノーシャは非常に攻撃的な性格だ。それこそPKすることを躊躇わないぐらいには。本人によればPKの証(レッドネーム)はデスゲームになる前からついてたもので、なってからは一人もPKしていないといっていたが本当かどうか怪しく思えてしまう。


「俺の二つ名譲ってやりたいぐらいだよ」

「えぇ、譲られたいですね。ロストのことを殺せば襲名できるとかないですかね?」

「冗談だよな?」

「えぇ冗談ですよ。悔しいですがそれ、私の眼の天敵ですからね。殺すに殺せないです」

「それも冗談だよなっ!?」

「それは勿論」


 味方でも怖いわ。ノーシャさん。

 というよりノーシャはずっと無表情だからか、冗談が冗談に聞こえなくて怖いところがある。そのうえセンスが皆無だから、さらに拍車がかかる。


「ほどほどにしてくれよ」

「任せてください。あ、敵がこちらではないほうに移動し始めました。弾の効果が切れたようですね」

「だんだん慣れてきたな」

「油断は禁物ですよ」

「分かってるわかってる」


 息を整えながらも周囲を警戒することは怠らない。魔眼から逃れることなどできるわけないと思うから必要ないと思うが。


「それじゃあまたゆるゆると逃げますか」

「了解しました」

「さてとお相手さん、いつになったら音を上げるかな」


 よほどのことがない限りは今後もうまくやり過ごすことができるはずだ。そうして何度も逃げ切って、あとは根気較べだ。それが俺たちのやろうとしていることだ

 彼らの気持ちが風化するのを待つ。おおかた敵は俺を倒すという義憤に駆られているのだろうが、そんな感情がずっと続くわけがない。どんなに強く持ち続けていたとしても、時間がたつにつれ薄れていくのが常だ。そうさえなれば後は仲間割れなり、あるいはPKKのリスクの大きさに気が付くなりで追跡をやめざるをえなくなるはず。勿論、今後も何かのきっかけで危害を加えてこようとするかもしれないから気を張り続ける必要はあるが、当面の安全は得られるはずだ。


「そううまくいきますかね」

「どうだろうな。ま、うまくいかなかったらそん時に考えればいいさ。とりあえずはこの森で逃げ回って距離をとることに専念するぞ」

「そして気づけばおじいさん、おばあさんに」

「…………いいから行くぞ」


 流石に専念と千年で掛けるのは無理がないですかね。


「ロストはもう少し私の話に合わせるべきです」


 そのままその言葉を突き返してやりたい。

 まぁこうした冗談をかませるのも余裕があると証拠なのだろうか。

 そんな軽口をききながらも、俺たちは三日目を無事逃げ切ったのだった。



読んでいただきありがとうございます。

もしよければブックマークしていただければと思います。

どうかよろしくお願いいたします。

失礼いたします。

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