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「もぉぉぉぉぉぉ!!何やってんスかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」






 なんだコレ






 いきなりドアを破壊して部屋に入ってきたかと思えば、へたり込んだ銀髪の彼。

 襲われるのかと覚悟して身構えていたけれども……


「心配したじゃないスかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!ダンチョー!!!」


 ダンチョー……団長よね。その団長様は銀髪青年の前に膝をついて頭ポンポン。

 100パーセント関係者。それにデューイのことを団長と呼ぶということはきっと騎士だろう。


 どうしようかと父に視線を送るとため息1つ。チャンスとばかりに引っ付いていた双子を引き剥がしてデューイ達に近付いた。


「落ち着いたか?少年」

「あ、申し訳ないっす!オレ……あ、いや、私は王国騎士団所属、レクトと申します!」


 レクトと名乗った青年は慌てて立ち上がり、拳を右胸に当てた。

 レザーアーマーに白のマント。腰にはレイピアが。

 後ろだけ伸ばして低いところで1つに結った銀髪、それに映える碧い瞳の顔立ちは、幼さを感じる。


「この度は突然の訪問、ドアの破壊、申し訳ありませんでした!」

「ドクター、部下の失態誠に申し訳ない」


 デューイとレクト、並んで深々と頭を下げた。


「あー、やっぱ部下か。頭上げろ。んで、レクトだっけか?楽に話せ。その喋り方は堅っ苦しくて喋りづらいだろ」

「いいっすか?」

「レクト」

「あ……すいません、ダンチョー」


 デューイの冷たい声にシュンとする様子はあれだ。子犬だ。父にゾッコンなサニアとセニアでさえキュンとしてしまったらしい。完全に母性本能というやつを刺激されてる。

 しかし、レクトは表情がよく変わる人だと思う。お堅い騎士らしくしようとしているみたいだけれど、騎士というよりは新卒兵士とか弟分な感じ。


「デューイ、俺が堅いの嫌いだからよ。普通の喋りの方が助かるんだ。いいだろ?」

「………………ドクターがそういうのなら」

「てことだ。ここに来るまでのこと、簡単でいいから話してくれ」

「了解っす」


 椅子に座るよう勧めると、背筋を伸ばして座り、ポツリポツリと話し始めた。


 * * * * * * *


 あれはひと月ほど前のこと。


「おはよーございまーす。……あれ、みんな集まってどうしたんすか?」

「レクト……お前」

「オレ?副団長!オレは何もやってないっす!身に覚えがないっす!」


 朝一、みんなは必ず広場に集まる。

 朝礼後、各自仕事や鍛錬の開始だ。

 普段なら皆整列しているはずが、副団長を中心に集まっていた。


「これを見てみろ」


 サッと道を開けた騎士達の中を通り抜け副団長は手に持っていたものを差し出した。


「あっ!!もしかして内緒で野良犬匿ってたのバレたっすか!?駄目なのはわかってたけど昨日の雨で震えてたから……手紙??」

「……犬の件はまた後で聞くとして、お前団長と仲良かったよな?」

「良かったっていうか、オレが一方的に懐いてたって感じっすけど……読んでいいすか?」


 頷いた副団長から受け取った手紙を開くと見慣れた文字。

 機械でプリントしたのではないかと思うほどの綺麗な字。しかし若干右上がりになるのが彼の特徴だった。


「人を……探す?」


 書かれた内容はこうだ。


 人を探しに行く為、一時隊を抜ける。

 勝手なこととわかっているので除名されても構わない。

 全ては副団長に一任する。


 とのことだった。


「どういうことっすか!?」

「我々にも詳細はわからない。だからお前が何か聞いてないかと」

「聞いてないっす!オレ、団長を探しに行く!!」

「「「「「待て」」」」


 全員の声が同じ言葉を発した。

 そこから駆け出す寸前だったレクトはピタリと止まって回れ右。その場にいた全騎士の視線を受けた。


「ダメだと言われてもオレは行く!!」

「誰もダメだなんて言ってないだろ……お前が抜けた穴は何とかなるが、団長が抜けた穴は埋められない。すぐに連れ戻して欲しいが、行き先に心当たりはあるのか?」


 そう問われたレクトの目には力強い光が宿っていた。


「ないっす!!勘で探してみるっす!!」


 副団長が頭を抱え大きなため息をつく。他の騎士もため息つくものもいれば、大笑いする者もいる。


「レクト、お前な……まぁ、我々にも手掛かりがないのが事実だ。まずは東西南北何処にでもいい。探して見つからなければ次に行く前に必ず戻ってきて報告をしろ。こちらも情報を手に入れていれば教える。……ここは王都故に人を割けない。お前に任せてしまって申し訳ないが…」

「大丈夫っす!」


 ビシッと敬礼を決めると、少年の顔は何処へやら。騎士の顔立ちになっていた。


「私は誇り高き王国騎士団員。例え一人だとしても必ずや団長を探して参ります」

「あぁ。頼んだ」

「では、準備出来次第すぐに出立致します!」


 踵を返し広場を出る直前、レクトは振り返り叫んだ。


「野良犬の名前!ベロって言うっす!カリカリより缶詰の方が好きみたいで、遊ぶのが大好きっす!ベロのことは頼みます!!」


 颯爽と駆けて行ったレクトを見送り、副団長はまた頭を抱えた。


「問いただすのを忘れてた……ここはペット禁止だぞ……第一ベロって……」


 周りを囲んでいた騎士の中から、一人声を上げた。


「レクトのことだから、ケルベロスから取ったんじゃないですかね?」

「……何故ベロとなる。ケル、というのもあるだろう」

「まぁ、レクトですから」


 頷く騎士達の背後で生垣が揺れた。

 視線は一点に注がれる。手はいつでも剣が抜けるように。


「……クゥン」


 潤んだ瞳でこちらを見つめるふわふわの子犬が1匹。


「副団長……特例でペット可になりませんか?」

「上に掛け合おう」


 その後、子犬を即抱え上げた副団長が緊急の会議を開いたとか開かなかったとか……

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