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篠宮 悠の平生オブリビオン  作者: 花炭 白
8/9

7.収穫0

彼女との再会から早二週間、僕達の日常は何事もなく過ぎ去っていった。


鈴原さんはすっかり部に馴染み、学校生活は徒然と流れていく。

学校から帰宅し、食事、入浴を済ませた僕はある人物と電話をしていた。


「もしもし、久しぶり」

『ほんと久しぶりだな』

彼は僕の中学時代の友人だ。高校は別のところに進学してしまったが、中学の三年間は彼が一番仲が良かった。別の高校になると連絡することもすっかりなくなったのだ、が僕はあることを尋ねたくて彼に電話をしたのだ。そのあることとは...

『で、そっちはどうなの?可愛い子でもいたか?』

「まあいるな」

『いいなあ、うちなんてぱっとしない奴らばかりなんだが...』

「そりゃ災難だな」

『で、二ヶ月ぶりにどうして電話なんてかけてきたんだ?俺の声が聞きたくなった、なんて絶対言わないキャラだもんな、お前』

「...お前、鈴原 庚って女子生徒覚えてるか?」

『もちろん』

「そうか」

『なんだ?急にそんなこと聞いて』

「いやー、正直記憶にないんだよ、中一の時の知り合いで、しかもあんな美人を忘れるわけないのに」

『え、お前おぼえてないの?』

「ああ」

『てか、なんで急にあの子のことを?』

「今同じ部に入ってるんだよ。文化研究部」

『はーん。それでお前、鈴原に対してあなた誰?って言っちゃったと?』

「...察しがいいな」

『まあな』

「それでだ、僕と彼女がどういう感じで接していたかを、知ってたら教えて欲しいんだが」

『そんな些細なことすら覚えてないってちょっとおかしくないか?なんかあった?』

「俺だってそう思ってるけど...。あんまり深く聞かないでくれ」

『んー。まあいいけど』

「で、どうだったんだよ」

『えーっと。まあ、結構親しかったんじゃないか?そんなベタベタしてたってわけじゃないけど、休み時間になったら他愛もない世間話とかよくしてたぞ?』

「そうか」

『でも...』

「?」

『二年になったら“急に”話さなくなったなあ。きっぱりと』

「そうなのか?」

『ああ。まあ、お前らクラスが別々になったから話す頻度が落ちたりするのは分かるけど』

「...」

『それにしては他人行儀過ぎっていうか、行事とかで顔合わせる機会あっても、お前全然あの子のこと見向きもしなかったし』

「そうか」

『そういえば、最初に違和感を感じたのは、二年に進級する“前”だったな』

「...どういうことだ?」

『いや、俺の思い違いかもしれないけど、お前らの間に壁があると感じ始めたのは...そうだな...だいたい一月くらいだった気がする。関係が完全に絶たれたのは確かに進級した時だけど...でもそういう兆候は何ヶ月か前からあったな』

「うーん」

どういうことだ?一月に僕と彼女との間に何かあり、そして二年になると絶縁状態。それ以来全く交流がなかった?何か喧嘩でもしたのか?

「その、僕と鈴原さん喧嘩でもしたのかな?」

『知るか!』

「ですよね」

いや、そもそも喧嘩して仲違いしたのなら、再会した時の彼女の言動で分かるはずだ。彼女自身僕の忘却に心当たりがないと言っている以上その説は考えられないだろう。

『それ、そんなに重要なことなのか?』

「いや?彼女とは今は普通にやっていけてるし、まあふと気になったからお前に聞いたってだけだよ」

『そうか』

そう。結局三年前に何があったかわからなかったが別に構わない。構わないのだ。


その後僕は久々に連絡を取った彼と最近のことについて話した。学校はどう?とか成績はどう?とか、そんな感じの話だ。


その後僕は寝ることにした。課題が出されていたが、正直やりたくない。明日の休み時間にやって授業までに間に合わせればいいさ。


そうして僕の意識は深い闇に落ちた。



――見覚えのある場所にいた。前にも訪れた気がするのだが...


その仄暗い空間には僕と一人の少女がいた。


――思い出した。前に夢で訪れたところだ。

確かあの時も女の人がいたな。ただ、今目の前にいる人は前にここであった人ではない。あの時の彼女の顔はよく見えなかったが、誰だか検討はつく。しかし今目の前にいる人は、誰なのか皆目検討がつかない。背が高いような低いような、痩せているようなふくよかなような、そもそも認識を阻害されている気がして、向こうの姿が全然分からない。


「君は結局、いつものように問題を保留するんだね」


少女は高いような低いような声で、そう僕に語りかけた。



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