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篠宮 悠の平生オブリビオン  作者: 花炭 白
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2.再会

部活は文化研究部に入ることにした。


運動部に入るのはまずないとして、文化部の中で一番楽そうで、なおかつ落ち着いた空間を提供してくれそうだったからだ。この部の活動は基本的に読書をするだけ、たまに作文のようなものもあるそうだけど、一番楽であることに変わりはない。読書は好きだからちょうどいい。


放課後のクラスは賑やかだ。きっと皆、授業という抑圧から解放されていてテンションが上がっているんだろう。部活の準備をするもの、勉強かあるいは提出を忘れた課題に取り組んでいるもの、おしゃべりをするもの、皆やっていることは色々だ。


“The 青春”って感じだ。よく考えてみると、なぜ、その物事が色濃く表れているものに対して“The 〇〇”というのだろう。改めて考えてみるとただ定冠詞をつけているだけだというのに...。

そこで私は考えるのをやめた。あんまり長く考え込むと“答えが分かってしまう”から。


この後は用事があるのだ。早く教室を出よう。

私は教室をあとにした。


「失礼します」

職員室という場所はどうも苦手だ。どんな理由であっても教師がたくさんいるところは落ち着かないし、それに教師は嫌いだ。

そんなことを思いながら、私は檍先生のもとへ行った。檍先生は文化研究部の顧問をしている人だ。

「こんにちは」

「こんにちは...えっと鈴原さん、だったっけ。ごめんね、他クラスの子の名前はまだ完全には覚えていなくって。」

「はい、一年二組の鈴原です。今日はこれを届けようと思いまして...」

「入部届...四月はとっくにすぎているのだけど、まあうちはそんなにお堅い部でもないしいいでしょう」

先生はしばらく、私が提出した入部届を眺めてそう言った。

「すみません、ありがとうございます」

「活動は、今日からする?」

「はい、そうさせてもらいます」

すると先生は席から立ち上がり、職員室の扉の方へと歩き出した。私はそれについて行った。

職員室を出た辺りで私は先生に尋ねた。

「あの、部室の場所は分かっているので、わざわざ先生がご一緒なさらなくても...」

「ちょうど仕事もひと段落したし、部室に顔出しに行こうとしていたからいいのよ」

そういうことらしい。

先生と連れ立って歩く時、なにか喋るべきなのかいつも悩む。無言だと足音だけが響き気まずい。かと言ってなにか話そうと思っても色々自分のことを聞かれるのは面倒だと思ってしまう。それにこういう時、目的地がやや近いので話が途中で終わった場合、なんだか微妙な空気になってしまう。私の考えすぎなのだろうか。

結局私と先生は一言も喋らず部室に着いた。


どんな人達だろうか。部員のことである。あまりうるさくない人達ならいいのだけれど...。そもそも静かな、それでいて落ち着く空間を求めてこの部に入ろうと思ったのだ。部員が騒がしくては本末転倒である。

まあ文化研究部なんだし心配する必要もないか。


そんなことを思っていると、先生は部室の扉を開け中に入っていった。私はそれに続いた。



オレンジ色に染まった部屋に入ると、そこには3人の部員がいた。


――知っている顔が一人、座っていた。

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