18.カウントダウン ~3時間前~
18.カウントダウン ~3時間前~
かおりさんは子供のお迎えがあるからと言って帰って行った。けれど、齋藤さんと夏陽ちゃんは一緒について来た。
みきすけさんに言われた店の前で、ボクたち三人は立ちすくんでいた。そこはなんとキャバクラだったからだ。ボクたちが店に入って行くと奥の席でみきすけさんが手を振っていた。両側に二人ずつ、4人の女の子に囲まれていた。
「鉄人!こっち、こっち」
ボクたちが席に行くとみきすけさんは女の子たちに席を空けるよう促した。
「あれっ?齋藤さんもご一緒でしたか…。そちらはもしかして」
「結城夏陽です」
「やっぱり!夏陽さん、初めまして。噂通り、三人は仲いいっすね」
「っていうか、なんでこんなところに呼び出したわけ?」
「いやね、集合が7時でしょう?今日は最後の追い込みだからと思って。ここ、3時ころからやってるんですよ。今日はバレンタインデーだから、席に着いた子、全員からチョコもらえるんですよ。それで、日下部さんにもお裾分けをと思って…。あ、君たちもういいよ。全員チェンジね」
初めてキャバクラに来たと言う夏陽ちゃんがみきすけさんに絡み始めた。
「まさか、ずっとこんなことやってたわけ?」
「そうだけど」
「いったい、いくらお金使ってるの」
「そんなのどうでもいいっすよ!鉄人がせっかく声を掛けてくれたんですから、この勝負は絶対勝ちたいんですよ」
「ふーん…。ミッキーってどんだけ良ちゃんのことが好きなの?」
「そりゃ、もう、例えようがないくらいっす」
「じゃあさ、良ちゃんに勝たせてあげようとか思わないわけ?」
「あっ…」
ギリギリまで最後の追い込みをするんだと言うみきすけさんを置いて、ボクたちは先に会場へ向かった。
「ここが会場なの?大魔神はクリスチャンなの?」
その建物を見上げて夏陽ちゃんが呟く。昨夜、この建物の前でたたずんでいたりっきさんの姿が思い出される。
そこは、小さな教会だった。教会の庭では小さな子どもたちが遊んでいる。ボクたちの姿に気がついた神父さんが近づいて来た。
「ようこそ。りきてっくすさんから伺っていますよ」
神父さんはボクたちを教会の離れにあるリビングへ案内してくれた。
「狭いところですが、お時間までご自由におくつろぎください」
神父さんがそう言って去っていくと、齋藤さんが口を開いた。
「閉伊さんがここに集まるようにしたのは、ここでしかできない何かがあるのでしょうね」
確かにその通りだとボクも思った。会場が教会だということ、先ほど、庭で遊んでいた子供たち…。もしかして、りっきさんは…。