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17.カウントダウン ~5時間前~

17.カウントダウン ~5時間前~


「急に呼び出してごめん。これはいつもお世話になっているお礼…」

 かおりさんはそう言ってボクに手提げ袋を渡してくれた。

「開けてみて」

 化粧品だった。

「彼女に使ってもらえると嬉しいんだけど」

「彼女って…」

「みぃこさん。遠慮しないでください。頂くものは頂くから」

 手提げ袋の底に請求書が入っていた。

「バレンタインのチョコだと思った?期待していたならごめんなさい。チョコは愛しい息子にだけしかあげられないの」

 そう言って微笑むかおりさん。そういうところがかおりさんらしい。


「良ちゃん!」

 声の方を振り向くと、夏陽ちゃんと齋藤さんだった。齋藤さんも、夏陽ちゃんも大きな手提げ袋をぶら下げている。勝負に参加すると言った夏陽ちゃんの言葉は本気だったみたいだ。

「日下部さん、どうも。それにかおりさんも」

「あっ!この人が噂のかおりさん?」

「噂って…」

 初対面の夏陽ちゃんに戸惑うかおりさん。

「あっ、取り敢えず、ここ、座ってもいい?」

「ど、どうぞ」

 ボクはかおりさんをチラッと見やってから、二人にボクたちの席に同席してもらった。夏陽ちゃんはボクの手元の手提げ袋を見てニヤついた。

「良ちゃんは私のチョコなんか要らないみたいだね」

「あの、違いますよ。それは…」

 かおりさんはボクをかばうように口を開いた。

「解かってますよ。良ちゃんは大人な女性が好きなんだもん。みぃこさんみたいな…。ねっ!そうでしょう?」

「夏陽さん、大人をからかっちゃだめですよ。日下部さんが困った顔をしています。それに、かおりさんだって…」

「いや、私は別に。何もやましいことはありませんから」

「そっか!そうだよね。ところで、良ちゃん、チョコいくつもらったの?」

 ボクは手提げ袋を広げて見せた。

「1…。2…。えっ!たったの3つ?」

「みんな、ボクのことを買いかぶり過ぎですよ。せいぜいこんなもんです」

「えーっ!それじゃあ、ビリになっちゃうよ。罰ゲームじゃん」

「えっ?ビリ?罰ゲーム?何のこと?」

「もしかして、かおりさんは今日の勝負のこと知らないんですか?」

「勝負って?」

 ボクはかおりさんにりっきさんの号令でバレンタインのチョコで勝負をすることになった経緯を説明した。

「そういうことだったの?教えてくれればチョコ持ってきたのに」

「そうだよ。かおりさん、今からでも間に合うから、そこのお店で買ってきたら?」

「そうね…」

「かおりさん、大丈夫ですから。気にしないでください。どうせ、罰ゲームと言っても大したものじゃありませんから。それにボクがビリだと決まったわけでもないし」

「良ちゃん、だめだよ!チョコ3個で勝負になるはずないじゃん。齋藤っちだって20個以上あるんだよ」

「ええ、年甲斐もなくハリキッちゃいました」

 かおりさんが申し訳なさそうな顔をしたので、ボクは明るく笑って見せた。その時、またスマホに着信が入った。今度はみきすけさんからだった。




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