10.河美子さんの思い込み
10.河美子さんの思い込み
夏陽ちゃんが勘違いするくらいだから、齋藤さんは美子さんからどんな風に吹きこまれたんだろう…。そんなことを考えていると、ちょうど美子さんから連絡があった。
「ねえ、日下部さん。齋藤さんはどんなチョコがいいかしら?」
「あの…」
「やっぱり、ご年輩だから渋めの抹茶チョコなんかがいいかしらね」
「いや…」
「そうね!抹茶の生チョコなんかがいいわよね」
「だから…」
「りっきさんはそれこそいっぱい貰えるみたいだから…」
ボクが口をはさむ余地がないほど美子さんは浮かれているようだ。
「美子さん!今回の趣旨をりっきさんからどういう風に聞きました?」
「あら、バレンタインのチョコで皆さんがが齋藤さんと勝負するんでしょう?」
ちょっと違う気がするけれど…。でも、それだとりっきさんと齋藤さんがタイマンを張る話にはならないはずだけど…。すると、原因は…。
「りっきさんは齋藤さんと一騎打ちになると予想しているみたいだけど、私は日下部さんもイイセンいくと思うのよ。だから頑張ってくださいね」
「一騎打ち?なるほど」
夏陽ちゃんは“一騎打ち”という言葉に過剰反応したのかもしれないな。