EPー3
かちゃん。かちゃん。・・・かちゃん。
「くっそ、やっぱ百円玉とおんねーなぁ。」
朝、少し寝不足気味の長谷川は自動販売機で缶コーヒーを買おうとしていたが、百円玉が何度入れても戻ってくる事に苛立っていた。
「いい加減、販売機かえろよなぁ。」
(しゃぁねぇ、コンビニまで行くかぁ。)
寝起きの頭でしかも寝不足気味、うまく長谷川の頭は回らない。ゼンマイ仕掛けの人形のように百円玉を入れては戻ってきたのを拾い上げて、また入れる。
(この百円、ニセモノなんじゃねぇ?)
手に取ってしげしげとそれを眺めていると、突然声を掛けられた。
「おはよう、長谷川君。どうしたの?」
「あ、ミキモト。おはよう。丁度良かった。」
長谷川は自販機から離れミキモトに向かって歩き出す。そして横を通り過ぎる時に手に持っていた百円玉をぐいと差し出す。
「これ、やるよ。」
「え、え!?」
反射的にそれを受け取るミキモト。何かと不思議がり手に取って眺めてみると。
それは百円玉じゃ無かった。
女性の横顔が掘られているメダルだった。
「何、これ?・・・あれ、ちょ、まってよ長谷川君、何処行くの?」
顔を向けたミキモトは長谷川がもう大分遠くを歩いてるのを見て大声で尋ねる。
長谷川はミキモトへは背中を向けたまま片手を上げてこう答えた、
「俺達の戦場。」
「え!?な、何言ってるの?」
その時、突風が吹いて砂埃が舞った。思わず顔を逸らし手で被ってその砂埃をやり過ごすミキモト。
「・・・あれ?」
風が止み顔を被っていた手を降ろすと、そこに長谷川の姿は無かった。
「・・何処いっちゃったんだろ。」
ぽつんと取り残されたような感覚に寂しさを覚えながら、ミキモトは残されたメダルを裏返してみる。するとそこにはこう文字が掘られていた。
『願いは叶った』
と。
願いは叶った。




