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ネガイシステム  作者: ぼんべい
七章 事実と真実の境界線
57/62

7ー9

 ○ ○ ○


 眼鏡で頭の切れる奴に、両手でナイフぶん回す奴、それからナルシストの情報屋。

 「ミキモトが教えてくれたよ。もし本当の親友だったら、そいつを無視して自分の願いだけ叶えようとはしない、って、な。」

 にやり。

 さっきまでの優雅な貴族風の振る舞いをぶち壊すような下卑た笑みを一条は見せる。

 「あの小娘。慕ってくるもんだから優しくしてやっていたけれど。やっぱりああいう奴はダメだわ、いつも余計な事をしてくれる。」

 すっくと立ち上がる。いつの間にか右手には刺突剣が握られている。

 (ヤベ、俺今丸腰じゃねーか!)

 今更自分の装備に気付いた長谷川だが、まさかここで尻尾を巻いて逃げるわけにもいかず虚勢を張る。

 「ミキモトは正しい奴だ。それに勇気もある。おまえみたいに逃げ回って楽して勝とうなんて根性のねじ曲がった奴とは百八十度違う。」

 「ハセガワ・・・どうやら、あなたにはここで私に刺されて死ぬ事になりそうね。」

 「願いのシステムはもう関係ねー、って、か。」

 「カガミ達に似てる人探すのにどれだけ手間取ったか。」

 「無駄な努力だったな。そんな事してるお前の負けだ。」

 「いいえ、最後は強い者が勝つのよ。」

 ちらり、と、視界の端の影を確認した長谷川は言い切る。

 「なら、勝つのは俺達だな!」

 ぱりぃぃん!

 その瞬間、ステンドグラスの一つが大きな音を立てて割れ、咄嗟に一条はドレスを翻し身を守る。

 「いぇぇーい、俺様華麗に参上!!」

 (窓ぶち抜いて侵入かよ、相変わらず無茶苦茶な奴だ!)

 続けて大声を上げるユージ、両手にはナイフが握られていて一条の前に立ちふさがる。

 「下賎の分際で私に楯突いてるんじゃないわ!」

 「無能なクセにわめいてんじゃねぇ!」

 襲いかかる一条にユージが応戦する。

 突き、突き、切り払い、回転蹴り。それらをナイフで器用に弾いて同じく蹴りを繰り出すユージ。

 がつん

 腕で蹴りを受け止めた一条と相対するユージ。一条は悪魔のような笑みを見せるが、ユージは至って楽しそうに笑っている。

 「レディ・ピエロに負けたんだってな。」

 「負けてやったのよ。あんただって勝てなかったじゃない。」

 「戦う理由が、無かっただけさ!」

 言い終わりで足を引き逆の足で蹴りを繰り出すユージ。それを飛びのいて交わした一条はすかさず反撃に転じる。

 かんかんかん

 かきん

 どん

 かきん

 「うぉぉぉぉ!!」

 「てやぁぁぁ!」

 「お、やってるな。」

 ユージと一条の激しい打ち合いを助ける隙を伺って見守る長谷川の所に、残りの二人が後ろから近寄ってきた。

 「あはは、さすがユージ。強いや。」

 「カガミ、サオトメ!」

 「待たせたな、ハセ。」

 近寄るカガミの瞳は、もう学校での理論だけをこねくり回す若者のそれでは無かった。しっかりとした意志と深い理性を持ち、長谷川を戦友であり親友と認める男の瞳に変わっている。

 「ゴメンね、まわりくどい事して。僕達、制約が『ハセに仲間だと知られてはいけない』なんだ。だから今まで言えなくて。」

 「はぁぁぁ!!」

 「うぉりゃぁ!」

 かきんかきん

 どん

 ばす

 きんきん

 目にも止まらぬ斬り合いを背後にサオトメが語る。

 「いや、俺こそすまなかった。・・・今まで気付かなくて。」

 「あはは、ハセ、そこは『遅いじゃないか、またこれで計画が少し狂った』って言ってくれなきゃ。」

 「ハセ、おまえ、記憶が戻ったのか?」

 長谷川は首を振る。

 「いいや、記憶は戻ってない。でも、確信はある。」

 誰が長谷川の事を心配してくれたか。誰が長谷川の為に頑張ってくれたか。そういう単純な事を思い出した時、何を信じるべきか、今の長谷川には明らかだった。

 「ふん。記憶が戻れば制約破棄だからな。しかし、どうする?おまえに知られてしまった俺達三人は記憶を無くすぞ。」

 「メダルは持ってるか?」

 長谷川の問いかけに二人共頷く。

 「ユージも持ってきてる。」

 その言葉に今度は長谷川が頷いた。

 「奇跡を、起こそう。」

 言いながら長谷川は自分のメダルを掌に乗せ、二人の方へ差しだした。

 まずカガミがそのメダルに自分のメダルを重ねる。そしてサオトメがそれにならう。

 かつん、かつん。

 長谷川の掌の上で三枚のメダルが重なる。

 「ユージ、メダルだ!」

 「おうよ!って、俺だけこんな役回り!?」

 長谷川の言葉にユージは答えながら斬撃の合間にひゅんとメダルを放り投げる。

 くるくるくる

 回転しながらそれは長谷川達の方へ。

 「させない!」

 しかし一条が最後の悪あがきを見せた。持っていた刺突剣を弧を描き飛んでいくメダル目掛けて放り投げる。

 「あ!」

 ユージが声を上げた時だった。

 ぱん!

 弾かれたのは、一条の刺突剣だった。

 「邪魔はさせん。」

 いつの間にか手にしていた銃をそっと下ろすカガミ。

 「・・・カガミ。」

 (おいしいトコ、もってきやがって。)

 「ちっ!」

 そしてはっきりとわかる程の舌打ちを一条がした時。

 ぽとん。

 緩やかな放物線は長谷川の掌に狙いを定めて。

 くるくると回るメダルはすとんとそこに収まって。

 そして、四枚のメダルは、そこに重なった。


 光の渦が、そこを中心に縦横無尽に迸しり出た。制御の効かなくなった龍のように三人と、側の二人の間を縫うようにうねうねと動き続けた。それは光だけで無く風圧も引き起こしていて、長谷川達の服が、一条のドレスが、ぱたぱたぱたとはためいた。何が起こるんだ?と動けずにいる五人が見守る中で、今度は空間を占める光がメダルに産まれ、それが膨らんできた。

 そして五人は光に飲まれた。

 演劇等で演出として行われる、暗転のようだった。さっと幕が引かれ真っ暗になり全てがそこで一旦途切れる。


 さて、エピローグの幕開け、だ。

詳しく書きすぎるとくどくなって、簡略にすますとわからなくなる。読者に合わせた分量の中で膨らませたり絞ったりするのが理想なんですよね。これを書いた時ってラノベって二冊ぐらいしか読んでなかった記憶があります。終盤の表現はかなり気に入ってますが、前半はもう少し詳しく書くべきだったかな、と思ってます。

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