6ー7
翌日。
学校に行くと一条は欠席していた。あれだけの傷を負ったんだ、当然だろう。暫くは傷を癒し疲れを取る事に集中するのが妥当だ、と長谷川は思う。
アンドウは事情を知っているのだろう特に気遣う様子は無かったが、ミキモトは明らかに不安そうにちらちらと一条の席を見ている。
そして長谷川だが、腹に一発強烈な蹴りをくらったとは言えそれだけでは学校を休む理由にならなかった。だから今もこうして席に付いてクラスメイトの噂話を適当に聞き流している。
「ウメノハラさん、交通事故だって!」
「なんか右足ダメになっちゃったらしいじゃん?もう走れないかも、って噂よ!?」
「え、俺、ウメノハラこそこの高校始めてのインターハイ選手になるって信じてたのに。」
夜は死闘、昼は授業。二重生活は長谷川の感性を少しずつ蝕んでいく。夜の緊張感の後では昼の皆のやりとりは子供のままごとのようにしか写らない。
「へぇ、ウメノハラさん、大変だねぇ。」
サオトメが他人事みたいに感想を言う。まぁ他人事なのは事実なのだが、その我関せずの態度が少し長谷川の神経を逆撫でする。
(なんだよ、俺には見捨てるなんてらしくないなんて説教しときながら、よ。)
シュリーズの女社長、そしてレディ・ピエロ。困難な敵を二人も倒した長谷川は戦果の無い皆をいつのまにか下に見ていた。まぁ彼らの境遇を考えれば当然な事なのだが、それは長谷川の気持ちを抑える理由としては薄かった。
「自業自得だ。どうせよそ見でもしていたんだろう、交通事故なんて陸上選手が聞いて呆れる。」
カガミの軽口も軽快だ。
「じゃぁ自分なら突っ込んできた車避けられるんかよ。」
「・・・いや、それはわからんが。」
「いい身分だな、自分はわかんないのにウメノハラは悪いのかよ。」
「おい、ハセ、言い過ぎじゃないか?」
「どっちが。」
割って入るサオトメにも刺のある言葉を返す長谷川。
シャドーボクシングをしていたユージも動きを止めて心配そうに長谷川を見る。
「お前、最近変だぞ。」
「べーつに。」
カガミの言葉に適当な返事で答えると、長谷川は机に肘を付きその先の手の上に顎を載せて彼らとは反対の方、窓の外を見る。
そんな長谷川の様子にカガミ、ユージ、サオトメの三人は顔を見合わせた。そして、サオトメは肩をすぼめて首を傾げて見せる。
長谷川の目には校庭で準備体操をする生徒達が写っていた。そして、頭の中には本来ならそこに居るはずの少女の姿が浮かんでいた。
全体的によく書けてるな、と思ってます。「ままごとのようにしか聞こえない」って書くべきでしたがw。端的な表現が長谷川の皆を見下してる・距離を感じてる感を出してますよね。でも、こういう結果的な部分は誰が書いてもうまくかけるのかもしれませんねw




